ReoNa 久々の全国ツアーで響く「絶望
と希望の狭間にある”何者でもないお
歌”」 初ホールツアー初日最速レポ

『ReoNa ONE-MAN Concert Tour “unknown”』2021.4.10@神戸国際会館こくさいホール
「絶望系アニソンシンガー」ReoNaが自身初となるホールツアー『ReoNa ONE-MAN Concert Tour “unknown”』を開催した。
2018年のデビューから早三年目を迎えた彼女はこれまで精力的にライブを実施、数々のアニソンフェスなどでアリーナクラスへの出演は経験してきたが、ReoNa個人としては初のホールコンサートツアーということで期待も高く、チケットは即完売となった。
今回SPICEは関西・九州・東海・関東の4箇所を回る本ツアーの初日に帯同。神戸から生まれた何者でもないお歌を即レポートする。
2020年春に開催予定だった全国ツアー『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2020”A Thousand Miles”』が新型コロナウイルス感染症の影響で中止になったReoNaの一年ぶりのツアー、初日の舞台となった神戸国際会館こくさいホールは期待の渦が深く静かに蓄積されているようだ。
雨だれのようにピアノの音が響く中、バンドメンバーに続いて静かに登場したReoNa。エレキギターを構えて一曲めで奏でられたのは「untitled world」。小さな体にはステージに立てる喜びと音楽に対する渇望が詰まりきっている。それを解放するようにかき鳴らされるギター。
「アルバム“unknown”に込めたお歌を顔を見てお届けできる、初めてのアルバムツアー」そう最初のMCで語るReoNa、「思い切り一対一、楽しんでいってね」そういう彼女の顔はどこか嬉しそうだ。
助走は終わった、叩きつけるように自身の代表曲となった『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』OPテーマ「ANIMA」を披露、そこから間髪入れずヒット曲を繰り広げる。出し惜しみは無し、それが出来るのも彼女がこの三年間で作り上げてきた楽曲の豊富さがあるからだ。そしてReoNaの声量もすごくアップしているのを感じた。
「いっそ何か別の生き物にでもなってしまえたら、想像するだけ」ReoNaのMCは曲世界への案内板だ。自分以外の何かになりたい、そんな誰にでもある妄想を切り取った「ミミック」は彼女自身の成長を感じさせる歌だ。ステージングも決して派手ではないが表現が大きくなったような気がする。体幹もこのコロナ期間に強くなったような気がする。
ここからの流れは今回のツアー特有のものだった。ReoNaという存在を詰め込んだようなアルバム『“unknown”』には彼女の過去の苦しみも、現在の渇望も、未来への願いも全てが詰まった珠玉の一枚だ。そこに詰められたReoNaという存在自体が初めてファンの前で開示されるような音楽の羅列、まるでパンドラの箱を開けるような感覚。「トウシンダイ」のアコースティックバージョンで彼女の声だけが響くホール、全ての存在が一気に息を呑む瞬間。
現在は常に過去に、冷めたコーヒーは外から力を与えなければ温まることはない。熱力学第二法則は怒涛のように僕らの今を思い出に変換し続ける。人は常に死に向かい、最新はノスタルジーへと変貌していく。
今ReoNaが過去の苦しみを“お歌”として変換してアウトプット出来ているのも、現在が過去に流れているからなのかもしれない。それでも、汲んでも汲みきれない絶望が人の心には生まれていく。それが些細なものであったとしても絶望が人生につきまとうのであれば、ReoNaは歌い続けるのであろう。無限に湧き上がる誰かの絶望に寄り添い、いつかの過去に変換し続けるために、悲しみの熱力学第二法則を加速させるために。それはReoNaがReoNaであり続けるために必要な作業なのかもしれない。
その所信表明のように歌われたReoNaのライフ・バイオグラフィーである一曲「絶望年表」。18歳の夏に初めて買ったアコースティック・ギターを奏でながら、バンドメンバーと横一列でフォーキーに歌い上げる歌は今の悲しみの物語ではなかった。暖かく優しい歌声は3階席まである高い天井に響き渡り、観客に降り注ぐ。
「いろんな自分がある中で、どれが本当の自分なのでしょうか、それって誰が一体決めるのでしょうか」
アルバム表題曲「unknown」の前に語られたMC。「誰でもない」という意味の言葉を持つこの曲は優しく、強く、広く会場の隅々まで行き渡っていく。ReoNaはたしかに「unknown」な存在かもしれない。それくらい自由で、消えてしまいそうで、掴みどころがないのも彼女の魅力の一つだ。だがReoNaは此処にいて、自分を救うために、誰かに寄り添うために歌い続けている。
いつもどおり、ReoNaのライブにアンコールはない。終わりと言ったらそこが本当に終わりだ。彼女にとっての始まりの音楽で締めくくられたツアー初日。見ている全ての人間にほんの少しだけ火を灯すようにReoNaは歌う。もっと見ていたい、そう思わせる音楽。「じゃあな!」いつもの別れの言葉を告げ、しっかりと深く礼をしてReoNaは去っていった。
終演後にはファンクラブ会員限定アコースティックツアー『ReoNa Acoustic Live Tour “ふあんぷらぐど2021”』の情報も解禁したReoNa。まだ世界を包む悲しみの雲は晴れきっていないかもしれないが、それでも絶望の歌姫は歌いながら一歩ずつ進んでいく。
絶望と希望は背中合わせ。望むど望まれどそれは誰もに降り注ぐ。ならば僕らはほんの少しだけ光る明日へ向かっていこう。推進力はReoNaがくれた熱のある“お歌”だ。
今回SPICEでは終演後のReoNaにミニインタビューを実施、ステージを終えた彼女のコメントをお届けする。

――いまステージが終わったばかりですが、率直な感想を聞かせてください。
すごく安心感がありました。まず無事に一年越しにワンマンライブツアーの初日を終えられたということもあるし、実際に会場に来てくれた皆さんを目の前にして、これだけお歌を受け取りに来てくれる人がいるんだな……ということも無事に初日を終えて思います。
――久々のワンマンツアー初日というのもありますが、アルバム『unknown』から初披露の楽曲もありました。実際お客さんの前で生で歌われていかがでしたか?
「絶望年表」もライブで演奏するのが初めてだったので、実際に届ける人が目の前にいる状況で演奏できるというのはすごく大事なんだな、というのを感じました。当たり前なのかもしれないけど、目の前にあなたがいてくれることで、自分が発している言葉の重みとか、何を今私は伝えたいんだろうという所とか……改めて身に沁みさせてもらえました。
――このあとまだツアーは続きます、改めて意気込みもお伺いできれば。
本当に今日、すごくすごく温かい拍手と目線でエネルギーを頂いたので、ここから残り3公演、各地にお歌をお届けに行けるのが一年以上ぶりになるので、この勢いを持って目いっぱいをお届けできればいいなって思います。
――本当にいいライブでした。
今、出し切ったって感じが凄いです。ありがとうございました。
レポート・文=加東岳史 撮影=日吉”JP”純平

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