渕上舞「そっと隣に寄り添いながら、
のんびりと自分のペースで歌届けてい
きたい」3rd LIVE『星空』への想いと

2021年1月にアーティストデビュー3周年を迎え、1月27日(水)にはなるシングル「操り人形クーデター」と2ndアルバム『星空』を同時リリース。そのアルバムをひっさげての3rd LIVE『星空』が4月24日(土)に中野サンプラザホールにて開催される。インタビューでは、話題となった「操り人形クーデター」のMV制作裏話や、アルバム『星空』に込めた想い、さらに3rd LIVEの見どころについてたっぷりと語ってもらった。

――アーティストデビュー3周年を迎え、心境の変化などはありましたか?
もう、3年も経ってしまった、あっという間だったなというのが正直な感想です。ここ1年半は、コロナの影響もあり、身近な環境も時の流れも普段と変わってしまい、何もなかった空白の時間でもありましたが、例えば、最近のアーティスト活動では、オンラインという新しい形でファンのみなさんと交流できたことは、こういう状況でなかったらやらなかったであろう形なので、よかったことといい意味に捉えています。あっという間にすぎた3年ですが、いろいろな種類の経験ができたので、充実感はあります。
――オンラインでのファンのみなさんとの交流は、新鮮だったようですね。
ファンの方と1対1でおしゃべり会をやりました。いつも応援してくださっているみなさんのお顔を拝見しておしゃべりをするというのは、本当に久しぶりだったのでよろこんでいただけているといいなと願いつつ、何より私自身が、みなさんの顔を見て安心できたというのもとても大きかったです。
――今までと同じような活動はできないデメリットもありつつ、創作にじっくり時間をかけることもできたというメリットもあったかと思います。TVアニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』のED主題歌、6枚目のシングル「操り人形クーデター」の歌詞作りはいかがでしたか?
まさか2作連続で担当させてもらえるとは思っていませんでした。タイアップなので、オーフェンという作品に自分なりに寄り添いつつ、作詞していきました。キャストとしても出演している愛着のある作品なので、世界観の再現を強く意識していました。タイアップとか自分が出演しているとか関係なく、個人的に好きな世界観なので、作っていてすごく楽しかったという印象です。TV放送が終わってもこの曲を聴いたら「オーフェンのED主題歌だったよね」と思い出してもらえるような言葉選びやストーリー感は、一番意識したところでもあります。
――楽曲を聴いたときの印象を教えてください。
何曲か候補がある中で、メロディーラインがとても好きな楽曲だと思いました。ラインナップの中で、一番覚えやすい、耳に残るメロディーで、ストレートな音という印象で、アニメの主題歌にピッタリだと感じ、とても気に入りました。
――ダンスのクオリティがすごいとMVもとても話題になりました。制作裏話を伺いたいです。
この楽曲に限らず、私自身はビジュアルにこだわるのが大好きなので、今回もとことんやらせていただきました(笑)。マリオネットバージョンでは特にメイクにこだわり抜きました。衣装の印象もあって、普通にメイクしてしまうと、甘さのあるかわいらしいお人形になってしまいます。私のオーダーは、かわいいけれど、かわいくしないでというとても難しいものでした。人間らしさを消したいと思っていました。チークを入れたふんわりとしたかわいいお人形の雰囲気、そんなものはいらない。血色なんて不要です。もっと具合悪くしてくださいとお願いして出来上がった形です。最終的に決め手となったのは、ブルーのラメが入ったフェイスパウダーでした。本来の使い方は、ふわっとのせて透明感を出す夏向けのアイテム。でも、それを思いっきりのせて青白い顔にして、目元は地雷メイクのやりすぎたバージョンにして、口元はくすんだ赤のリップを雑に塗って仕上げるというもので、王道のかわいさをなくしてみました。人間らしさのない、不気味なかわいさというイメージ通りの形ができて大満足です。自分で鏡を見てもギョッとするほどやりすぎな感じもありましたが、制作意欲が掻き立てられる、充実した時間が過ごせました。
「操り人形クーデター」ショートMV
――人形を操る役には、どんなこだわりが散りばめられているのでしょうか?
こちらのメイクはナチュラルな仕上がりにしました。こだわったのはベネチアンマスクです。自分にぴったり合うのを探すのが大変でした。顔の形、鼻の高さ、目の大きさなどで似合うマスクが違ってきます。さらに、マスクをつけて動くので、ヘアメイクさん、スタイリストさんに細かな調整で大変お世話になりました。
――チームで作り上げた感がありますね。演技もすばらしかったです。
自分自身でもびっくりしたのが、笑い方です。「私、こんな笑い方するんだな、怖っ!」って思いました。とにかくお芝居するのが楽しかったのを覚えています。
――口角を上げてにやりとする部分はグッとくるものがありました。
自分の口角がこんなに上がることも知らなかったので、私にとっての発見でもありました。最初のビデオチェックで、ちょっとざわつく事件もありました。お芝居が楽しすぎて入り込んでいたので気づかなかったのですが、思いのほか怖すぎるという感想が多数勃発して(笑)。怖すぎるNGが出て、もう少しマイルドにというリクエストがきました。メイクのおかげもあるけれど、自分で言うのもなんですが、マリオネットの動きが想像以上に上手にできすぎた感がありました。そのせいで、周りに「動きも表情も人形すぎて怖い」と。何箇所か怖すぎてやり直しすることはありましたね(笑)。
――アルバムは夜をテーマにしたコンセプトアルバムですが、渕上さんにとって夜とは?
朝よりも夜の方が好きです。私が感じる夜の魅力は、楽しいことも多いけれど、静かで落ち着くところです。
――好きな「夜」がテーマであれば、作詞のアイデアもいろいろと浮かんだのではないでしょうか。
個人的に前向きな言葉や意識があまり好きではないんです。夜には前向きになっても、どこか切なさが上回る部分があります。また、一人で考え込んでつらくなったり悲しくなるのも夜が多い。そういう意味でも夜という題材のほうが色々と言葉が浮かんできやすい印象はあります。
――ずっと夜派ですか?
夜を生きている人生の方が長いです(笑)。20代の頃は、深夜に働き、昼夜逆転の生活をしていました。その影響で私の人生、夜の印象が強いのかもしれません。これから先はわからないけれど、これまでは夜派の人生を送ってきました。
「星空」MV short Ver.
――前向きなものは苦手とのことですが、「恋なの?」からは前向きな印象を受けます。
今回は比較的スムーズに楽しく作詞ができました。中でも「恋なの?」は、私の中でマイナスというか、ネガティブなイメージがない楽曲で、書きながら「意外だな」と思っていました。書いている時期は、新しい趣味などを始めたタイミングだったこともあり、楽しい気分に切り替わっていたのかもしれません。なので、スラスラ書けて数時間で出来上がりました。
――初回限定盤には2nd LIVE「Journey & My Music」のBlu-rayが同梱。100分超の豪華すぎる内容となっていますよね。
ライブだけでなく、外出することにも抵抗がある人も多い中で、そういう環境でも楽しんでいただける素材を提供することができ、よろこんでいただけることはすごくうれしく思います。ファンの方からの感想、言葉もたくさんいただき、ありがたい限りです。TVでオンエアされたものよりもさらにボリュームアップして、アンコール部分まで収録した完全版です。ライブに来た方も、来られなかった方も、あのときの雰囲気を存分に感じていただける内容になっています。
――今回のライブの演出もとても楽しみです。
絶賛打ち合わせ中なのですが、基本的には夜をテーマに、衣装も含めていろいろな演出のアイデアを出し合っているところです。個人的に楽しみなのはセクシーパートです。
――セクシーパート、気になるワードですね。どんなところにこだわっているのでしょうか?
衣装はもちろん、ダンサーさんたちにもかなりいろいろとリクエストを出しています。2ndライブのときも、冒頭でブラックキャットの演出をしました。ダンサーの方には全身キャットスーツで登場していただきました。あの衣装でセクシーダンスをするために、毎日トレーニングを重ねてがんばってくださいました。今回も、前回を上回るセクシーさで、衣装も演出も用意したいと思います。今は、私の提案にNGが出ないことを願うばかりです(笑)。
――ちなみにセクシーパート以外にはどんなパートがありますか?
アルバムの世界観を楽しむ星空満喫パートと、渕上舞LIVEが初めての方でも楽しめる番外編パートです。番外編パートは、過去のライブでもあったキャラソンのカバーをするコーナーのようにしたいです。声優として関わった作品のキャラソンや、自分自身が好きな楽曲などのカバーで楽しんでいただきたいと考えています。これもセクシーパート同様、私のライブではお約束にしていく心づもりでいます。
星空 初回限定盤ジャケット
――アルバムのジャケットもすごくキレイで印象的です。夜がテーマでアルバムタイトルが『星空』でもあることから、夜ならではの寂しさや、切なさを感じるライブになるのでしょうか?
そうなるといいなとは思っています。私自身、大事にしていきたいと思っているのは、1stアルバムからのつながりです。1stアルバムでは、大好きな鳥をテーマに、渕上舞がアーティストとして不安もありつつ、楽しく飛び立って行くことをイメージしています。ミニアルバムでは、飛んでいる途中の旅路を描いています。旅路(アルバム)最後の「Journey」という楽曲で「次は星の海 渡ろう」というフレーズがあります。この歌詞があったから、旅の続きから始まる今回のアルバムが生まれました。2ndライブの最後から始まる3rdライブみたいなイメージで楽しんでいただきたいので、可能であれば1stライブの映像もチェックしてからライブに参戦していただけるとうれしいです。
――三部作であれば、1作目を観ないわけにはいかないですね。3年間の旅路、一連の流れが感じられます。3周年を迎えた今、アーティストとして目指す形はありますか? 
がんばりすぎず、自分のペースで歌っていきたい、紡いでいきたいという気持ちがあります。「がんばれ」は言うのも言われるのもあまり好きではありません。「この先の未来に希望があるよ、だからがんばろうよ」というのではなく、がんばれない人に寄り添えるような存在でありたいと思っています。刹那的ではあるけれど、明日死ぬかもしれないから、今日を楽しく生きようよ、という気持ちでいます。もちろん、背中を押してほしいという人もいると思うので、そこは他の誰かにまかせて(笑)。私自身は、前に向かって進んで行くというよりも、「停滞してもいいじゃない、そこが楽しいなら」という考えなので、楽しくない、つらいと思うなら、やめてもいいとも思っています。「いいじゃん、やめちゃえば」といい意味で軽く言える存在でありたいですね。
星空 通常盤ジャケット
――「やめちゃえば?」と軽く言えるのは、近くにいる存在ですよね。そういう意味で寄り添うというのはしっくりきます。
もちろん、大きくて華やかなステージも好きなので、やれるのであればやりたいし、がんばるのは苦手と言いながらも目標ではあります。その一方で、オンライン配信などが定番化する中で、コンパクト形でファンの方に寄り添いながら歌を届けられる場も定期的に作っていきたいと思っています。
――アーティストにはさまざまな形があっていいと思います。背中を押す担当もいれば、寄り添い担当の渕上さんもいるというのもアリですよね。
そうそう。「やめちゃえば」という言葉で救われることもありますよね。私自身、しんどいなら逃げちゃえばって思うタイプだし、肯定されないほうが楽なんです。「気にすることないよ」とか言われるのは苦手です。「みんな分かってないくせに」なんて思ってしまうので(笑)。
――「やめちゃえば」は、近くにいるからこそ、言える言葉ですよね。ファンに寄り添う、ファンへの想いが伝わってくるインタビューでした! ありがとうございます。
そう受け取ってもらえるととてもうれしいです! ライブ楽しみにしていてください。がんばるとか前向きとか苦手ですが、1周年、2周年、3周年のタイミングでインタビューしていただいているので、次もまた取材していただけるように精進します。ここは苦手でもがんばるところかと思っています(笑)。
取材・文=タナカシノブ

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