武藤彩未、満を持したメジャーデビュ
ーの持つ意味

 卒業後、最初の1年間は活動のニュースもあまり伝わって来ず、やきもきするファンも多かったことだろう。さくら学院の他の卒業生が順調に活動する中、武藤自身、「焦りも正直あった」という最初の1年、彼女はレッスンに明け暮れていた。目標は〝ソロのアイドル歌手〟。精神的な強さも、歌の技術やステージパフォーマンスも、グループの中の1人とはまるで違ったレベルが求められる。ボイストレーニングも一からやり直した。彼女にとって厳しくも充実した、成長のための1年だったことは想像に難くない。

 そして2013年4月29日、『DNA1980』と称したソロプロジェクトの開始を発表。両親の影響で幼い頃から親しんできた、80年代の名曲の再現を目標に掲げた。80年代と言えば、まさにソロアイドル歌手全盛の時代。武藤彩未自身が尊敬する松田聖子や、中森明菜小泉今日子菊池桃子といったアイドル歌手がオリコンチャートやTVの歌番組を席巻していた時代だ。彼女たち先人のエッセンスを幼い頃から吸収していた武藤が、グループアイドル全盛で、(グループ内のソロユニットとしてでない)ソロアイドルは皆無に等しい今の時代に、ソロアイドル歌手としてデビューするというのも何かの因縁なのかも知れない。

 7月29日、Shibuya O-EASTで初のワンマンライヴ開催。会場限定で80年代アイドルソングをカバーしたCD『DNA1980 Vol.1』『DNA1980 Vol.2』も販売された。10月から年末にかけてはライヴツアー『TRAVELING ALONE』を開催。首都圏でコンスタントにライヴを行い、来たるメジャーデビューへ向けて力を蓄えた。そしてツアーファイナル・12月29日赤坂BLITZで発表された2014年4月のメジャーデビュー。

 アイドル歌手は通常、シングルを何枚かリリースし、それからファーストアルバムを出すのがセオリーだが、その常識を覆すアルバムでのメジャーデビューである。そこには、2年間にわたるレッスンとライヴで培われた彼女の自信がうかがえる。

 武藤彩未の歌唱は、デビューアルバムにして既に完成されている感がある。キラキラとした透明感のある声質に表情の付け方。80年代にシーンをリードしていたトップアイドルたちに勝るとも劣らない表現力は既に備わっている。となると次にほしいのは強力なシングル曲だ。18歳の瑞々しさ、若々しさをたくさん詰め込んだ、80年代黄金時代のようなサウンドを期待したい。

 あのソロアイドル黄金時代から既に30年近い月日が経過、本当に久しぶりの、本格的ソロアイドルの誕生なのだ。武藤彩未にかかる期待は、大きい。彼女が活躍することによって、それに続くソロアイドルが生まれてくることも希望が持てるからだ。その時こそ、真のアイドル黄金時代復活、と言えるのかも知れない。



竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます!80年代モノに詳しい。

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