ハナレグミの
『音タイム』を聴いて考えた
バンドとソロとの
臨み方の違いについて
歌詞に見る永積タカシの心意気
《Wake Upする気はない Wake Upする気はない/Oh する気はない/嵐でも起きない 津波でも起きない/NO MORE 起きない》《死んでも起きない タダでも起きない/NO MORE 起きない》(M6「Wake Upしてください」)。
《夜な夜な聞こえる パイの音/ヤミのカジノが はじまった》《かこめかこめや マージャン かこめ/子供は寝かせて さぁ かこめ/かこめかこめや マージャン かこめ/負けてちゃ終われない さぁ かこめ》(M7「かこめ かこめ」)。
M6は“春眠暁を覚えず”の独自の解釈か、それとも遅刻の言い訳だろうか。M7は文字通り麻雀のことを歌ったものだろうが(そうとばかり言い切れない節も若干あるが…)、童歌をもじって親しみやすさを加えているのは、逆に見れば、毒っ気にも感じられる。いずれにしても、ユーモアは彼にはなくてはならないものであることが分かる。また、彼のスタンスはバンドの時とあまり変わっていないとは言っても、『音タイム』は永積にとって初めてのソロ作品。全体的にいい感じで肩の力が抜けた印象はあるものの、“ひとりでやっていく”という決意めいたものを見出すこともできる。
《さぁ 始めよう/音タイム 音タイム 音タイム/さぁ 歌いましょう/音タイム 音タイム 音タイム》《朝が来たなら 朝を歌おう/夜が更けたら 夜の歌を/素敵なメロディー 口ずさめば/思い出せるよ 懐かしきストーリーを》(M1「音タイム」)。
《変わらない ここで待ってても/行かなくちゃ 一人ぼっちでも/何処かで 僕を呼ぶ声/届くかなぁ 明日天気になれ》(M3「明日天気になれ」)。
《忘れ物もしたけど 見つけた物もあるよ/無駄な時なんて 一日もないさ/出会えた人たち 言葉をありがとう/名もなき人たち 風景をありがとう》《気の合う仲間たち 力をありがとう/つつみかくさない 心をありがとう》(M9「一日の終わりに」)。
のちに永積はSBDの解散に際してこんなコメントを寄せた。“五年ほど休憩して新たにはじめた 一年の中で やはり 埋まらない 五人ではうまくバランスのとれない 気持ち 情熱 熱量 が 自分の中にもメンバー 一人一人の中にもあることに気づき(後略)”。SBDは発展的な解散であったとは思うが、永積の言うところの“五人ではうまくバランスのとれない 気持ち 情熱 熱量”、その萌芽や種火といったものは上記の歌詞にも隠されているように思う。でも、それは彼のやりたかったことなので、今となってはこればかりは如何ともし難いというか、何と言ってみようもないが、こうして作者のさまざまな側面が露呈してしまうというところを見ると、『音タイム』はソロアルバムらしいソロアルバムと言えるのかもしれない。
TEXT:帆苅智之