奥井雅美

奥井雅美

【奥井雅美 インタビュー】
アルバムは絶対に希望を残して
終わりたいと考えていた

昔は“神様が見てるよ”だったのが、
そのうちAIに監視される社会になる

JAMメンバー以外で今回、唯一楽曲を提供されているのがGOTCHAROCKAのギタリスト・JUNさんですが、彼にはどういった経緯でオファーを?

私のソロライヴでベースを弾いてる子がGOTCHAROCKAでもサポートしてる縁で、数年前からライヴを観に行くようになったんですけど、彼の作る曲とギターソロがすごく好きなんですよ! よく“私が歌ったらこんな感じかな?”っていう想像もしていて、いつかJUNくんの曲を歌いたいと思っていたから“じゃあ、今回お願いしよう!”と。

ビジュアル系バンドなのでジャンル違いかもしれませんが、昔からとても耳を惹く曲を書く方ですもんね。今回の「Civil war-1vs1-」も抜群にキャッチーだし。

だから、前から狙ってたんですよ(笑)。ただ、キーは高かった! 自分だったら絶対に作らない高さなんですけど、歌ってみたら楽しかったので良かったです。で、JUNくんから上がってきたアレンジとメロディーラインを聴いた時に、最初に言った“光と闇の戦い”みたいなものが浮かんだんです。それもひとりの人間の中にあるものだし、誰でもダークな部分って持ってるじゃないですか。そんな闇に翻弄されながらも、闇に負けると必ず代償が必要になってくるから、やっぱり光に勝ってほしい…っていう世界観ですね。

ちなみに、きただにさん作の「JUDGEMENT」も似たような世界観ですが、やはりロックチューンだとスリリングな世界観が浮かびやすいんでしょうか?

そうかも! 「JUDGEMNET」は『ターミネーター』とか『マトリックス』とかのイメージで、今の世の中を見ているとそういう世界にリアルに向かっている気がするんですよ。匿名だからってSNSで好き勝手なこと書いてるけど、そのうち進化したAIが全部特定して人間を選別し始めたりするんじゃない? そうなったら、あなたは生き残れないんじゃないの?…っていう、そういう曲ですね。昔は“神様が見てるよ”と言われていたけれど、あっと言う間にAIが人間を監視するような社会になるんじゃないかな?

これまで人間のモラルを支えていた神に、そのうちAIが取って替わるかもという、ちょっとゾッとするような未来を感じさせる曲ですよね。一方で、奥井さんご自身が書かれた曲は切ないバラードが多くありません?

私、もともとはロックシンガーじゃなく、どちらかと言うとポップスやニューミュージック…それこそユーミンさんとか竹内まりやさんが大好きなんで、好きな曲を書くとミディアムやバラードばかりになっちゃうんです。あんまり多いとJAMのイメージとかけ離れちゃうんで、これでもバラードの数は抑えたんですけどね(笑)。ただ、逆にMVは既存のイメージとは違うものにしたくて、それで「天使と悪魔」を選んだんですよ。

まさに、普通なら「Civil war-1vs1-」や「JUDGEMENT」といったロック曲になりそうなところ、こんなお洒落なラブソングを!?と驚きました。

これはオケの中に自分でコーラスを入れて、最後にヴォーカルラインを歌うという作り方をしているんですね。そういった手法は初めてで、バックコーラス出身の私としては本領を発揮できたという意味でも、すごく気に入ってるんです。ただ、私自身がイメージするこの曲の世界観に、自分がいたら絶対にダメだと思ったんで、出演は断固拒否したんですよ。異性に翻弄されるさま、そこから生まれる危険と安堵みたいなものを表現したかったから、どうしても抽象的な映像にしたくて。だから、自分は出ていないけど、口出しはめちゃめちゃさせていただきました。

それで海辺等の自然の光景をメインにしつつ、天使の羽が形作られたりしているんですね。「コトノハ」や「秋桜」といったロストラブソングも世界観がとてもドラマチックで、想像の翼の羽ばたきっぷりが凄まじいです!

ほんとですか?(笑) 「コトノハ」は過去に好きだった女性が新しい道を進もうとしているのを見て、“もっと早く言葉を伝えていれば違う未来があったかもしれないのに”と感じている男性の曲ですね。つまり、“大切な言葉は伝えたい時に伝えなきゃダメ!”ってこと。「秋桜」はドライブしてる時にサビのメロディーと♪秋桜~っていう言葉が降りてきたんですけど、コロナ禍で自死を選ばれる方がすごく目立ったじゃないですか。そこから生まれた曲で、せっかく出会った女性を救えなかったっていうストーリーが見えたんです。そうやって降りてきた曲って、すごくお気に入りになるんですよね。今回も「秋桜」はアレンジの最終形までバッと見えて、めちゃくちゃ好きな曲になりました。

「Beautiful Life」に「手をつないで」と前向きな曲でアルバムが締め括られるのも、やはり現在のコロナ禍を意識してのことなんでしょうか?

アルバムは絶対に希望を残して終わりたいとは考えてましたね。それこそ「Beautiful Life」はステイホーム期間中にランティスさんが『MixUp!』っていうクリエイターが家で作った作品を発表する場を設けてくださって、そこに出した曲なんですよ。コロナ禍で経済活動が止まったおかげで川に魚が戻ってきたとか、どこかの国で青空が見えたとかっていうニュースを聞いた時、ハッとしたんですね。お金や経済も大事だけど、今みたいに自然を痛めつけて水も空気も汚してたら、子供たちに未来をつなぐことなんてできない。人間は欲深くて、物だったり、仕事だったり人間関係だったり、いろんなものを欲しがるけど、本当にそれって必要なものなのかって。別になくても生きていけるんじゃないのかって、コロナ禍を立ち止まって考えるきっかけにしていけたらいいんじゃないか…っていう想いから、去年の春夏くらいに作った曲なんです。

この機会に、いらない執着を削ぎ落とせばいいと。そんな深いメッセージが、夏の青空が見えるような軽快でさわやかな曲に乗っているのも素敵です。

JAMに入る前に書いてた曲とか、こういうタイプが多いんですよ。今アメリカとかで流行っていると言われる日本の80年代のシティポップみたいな感じの。動画も自分の家のベランダで、ちゃんと空が入るように撮りましたから。

そこから続く「手をつないで」の歌い出しも“青空は繋がってる”ですから、見事な空つながりですよね。

これも家で“あぁ、空青いなぁ~”と思いながら外をボーッと眺めてたら、雲がポツンとひとつ浮かんでたんですよ。あんなふうにひとりぼっちになって、誰に助けを求めることもできず、死にたくなっちゃってる人たくさんいるんじゃないかと考えてるうちに、その雲がスーッと流れて大きな雲にくっついて“あっ、これこれ!”ってなったんです。最初に言った“光を意識して生きる”っていうのは、別に立派に生きなきゃいけないってことじゃないんですよね。自分の中にある闇に飲み込まれないために、時には愚痴や弱音を吐いて人に頼るのも大事で。一人で抱え込まずに、みんなで手をつないで他人の気持ちに寄り添って生きていこうっていうメッセージで、最後は締め括りたかったんです。

だから、歌詞も雲の目線になっているんですね。

そうなんですよ! 雲も風も太陽も、自然は無償の愛をくれるじゃないですか。与えてくれるばかりなのに人間だけが奪おうとする。だから、自分たちもやさしく生きていかなきゃ…っていう想いも、ここには含まれているんですよね。

OKMusic編集部

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