L→R ⽔野良樹(Gu)、吉岡聖恵(Vo)、⼭下穂尊(Gu&Harmonica)

L→R ⽔野良樹(Gu)、吉岡聖恵(Vo)、⼭下穂尊(Gu&Harmonica)

【いきものがかり インタビュー】
ツアーができない今だからこそ、
できたアルバムだと思う

今から緊張感とライヴ欲で
興奮しております

ここまで話をうかがって、ニューアルバム『WHO?』がバラエティー豊かな作品になった経緯はよく分ったのですが、本作にはさらに重要なナンバーがありますよね。まずは「からくり」です。なぜインディーズ時代からの人気曲を再録することになったんですか?

⽔野
「からくり」だけが残っちゃってたんですよ。高校生の時にやっていた曲なんですけど、いつか出したいという気持ちは常に持っていて、これまでのアルバムの曲選考の時にも何度か候補になってたんです。で、昨年ツアーができない中で配信ライヴを一度だけやらせていただいたんですけど(2020年9月19日@『いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! 〜リモートでモットお祝いしまSHOW!!!〜』)、その時に“ちょっとでもファンのみんなに喜んでもらえるようなことをするとしたら何がいいかな?”と考えて「からくり」をやることになったんですね。配信ライヴはコアなファンの方も観てくださってるだろうし。そうしたら、“「からくり」をやってくれた!”みたいなことをいっぱい言ってもらえて。今回のアルバムって普段なら12曲くらいあるのがいつものパターンなんですけど、それに比べると曲数が少ない…それが限界だったんで、それでもファンのみんなに喜んでもらうのは何かと考えたら、「からくり」をちゃんとレコーディングすることかなと。
吉岡
リーダーが“「からくり」だなぁ”って言った時、私も“「からくり」だよな”って思ってました(笑)。
⽔野
インディーズの時のアレンジがあって、ライヴではそれを踏襲してやっていたんですけど、音源を出すんだったら“これがシングルだ”と言ってもいいくらいのものとして出したいとなって、アレンジャーの本間さんにもその意向を伝えて。とはいえ、例えば、普通のシングルであれば1コーラス目である程度進行させて、サビに来たら結構な音圧があって…みたいな感じになるんだけど、本当にストイックに、1番はエレキとアコギと歌だけで進んでいくという。
吉岡
こんなふうに生まれ変わるとは思ってなかったからすごい緊張感がありましたね。「からくり」を“ファンの人たちの中ですごい人気の曲”ということだけで終わらせたくなくて、もっとみんなが見てくれるステージに上げたいと本間さんと話してて。だから、新しい「からくり」になった…いろんな想いがありますね。これ、リーダーがいくつの時に作ったんだっけ?
⽔野
17歳。だから、聖恵が加入前(笑)。
吉岡
そうそう。私が加入前に歌っていた曲だから路上の景色も浮かんじゃうし、ファンの人たちも好きな曲だし、コアな曲で終わらせてもいいんですけど、でも…というところで、“あんまり色をつけないで歌わなきゃな”と思って。その結果、ミックスの時に感動しちゃって、私はウルウルしてたという(笑)。すごくいい感じに生まれ変わったんじゃないかと思います。

歌もインディーズの音源とは全然違いますね。過去の音源の方が大人びてる印象があります。

吉岡
それはそうかもしれないです。そもそも背伸びして作った曲だと思うんですよ。高校生の時のリーダーには“こういう曲を作ってみたい!”っていうところがあって、歌詞も難しい漢字とか使って謎めいた内容だし。

歌詞は特に大人びてますよね。

吉岡
そうなんですよ。思いっきり背伸びして大人っぽさを出そうとしていたんだけど、今では大人になっちゃったから、曲との向き合い方も変化したと思うし。親しい人と会話するようにはできなくて、ちゃんと距離を置いて、凛とした佇まいにしてあげたかったというか。ライヴではフェイクをいっぱい入れていたり、インディーズの頃は語尾が長かったりしたのを、あえてさっぱりと淡々と歌うことで、女らしさとかじゃなくて、凛々しさが出たかなと。

“肩の力を抜いた”という表現でいいのかどうか分かりませんけど、そうすることによって、むしろ堂々とした感じになっている印象はあります。

吉岡
そうかもしれない。アレンジがそうさせたというところがあるのかもしません。

今日の取材は終始そうしたところに行き着きますね。チームで作り上げた感じが今作はより強いのかもしれません。そして、『WHO?』で注目したい曲をもうひとつ。山下さんが作られた「もう一度その先へ」です。ここまで話してきたように、本作収録曲の歌詞には、『100日間生きたワニ』からコロナ禍の影響で、“生きる”というテーマが多く見受けられますが、「もう一度その先へ」は少し趣が異なる印象はありまして、“ここからさらに先へ向かおう”という、今のいきものがかりを象徴するようなところもあるのかと想像していたんですが、作者としてはどんな想いがあったのでしょうか?

⼭下
これはアルバムを作るために書いた曲で、もともとのタイトルは“さよならのその先へ”だったんです。それで1コーラスを書いて、そこからフルを書いていろいろと修正していく中で、この曲は一番最後か、後半のほうに置くことになるだろうという話をしていたんですよ。その中で、“さよならのその先へ”というよりは、この一年間でいろんなことがあった中、いきものがかりが15周年を迎えたので、そういう意味では“もう一度”にしたほうが自分たちに当てはまりやすいかなと。“さよならのその先へ”だと結構具体的なものが思い浮かんでしまうんで、もうちょっとポジティブな表現に変えた結果、こういうタイトルになりました。

“別れのあとに来るものは?”と示唆するものよりも、そこに自らの展望というか、先を見据えた感じを重ねたということですね。

⼭下
そうですね。とはいえ、内容は人生観とかそういうもので、コロナの影響はちょこちょこあったりはして。もともとこれを書いた時は映画を観に行って、その映画の最後のシーンのイメージでAメロを書き始めて、そこからどんどん書いていくとやっぱりこう…2番のAメロの《振り向けば悲しさより優しさの数増えていった》とかは、時期的にちょうど医療従事者の方々のことを思うタイミングだったりして、“頑張ってくれている人がいる”みたいなことを思って書いたり。まぁ、歌詞は人によって見方が違うとは思うんですけど、作り手としてはそういう影響はあって。

なるほど。「もう一度その先へ」は同じく山下さん作詞作曲の「わたしが蜉蝣」とテーマ性は通底しているようには思うんですけど、こちらの方は完全に前向きですよね。

⼭下
そうですね。「わたしが蜉蝣」は後ろ向きでもいいと思って書いてるんですけど…そうですね、この2曲では対極的ではあるかもしれない。

個人的には、いきものがかりが事務所を独立したことにもそうですし、昨年はコロナ禍でツアーができなかったわけですが、このアルバム『WHO?』を完成させて再び活動を再開させるといったところとも、「もう一度その先へ」は重なると感じてます。

⼭下
「TSUZUKU」と「生きる」はひとつのセットと考えると、アルバムの一番いいところに置いたかなと。最初は“これが最後だろう”と言ってたんで、アレンジャーの島田昌典さんはエンディングの駆け上がりのところを大団円な感じで作ってくれたらしいんですけど、曲順が決まって“あれ? 「もう一度その先へ」が最後じゃないの!?”って(笑)。

そうでしたか。でも、「もう一度その先へ」の大らかさと開放感とが合わさったサビのメロディーと、それを支えるアレンジは申し分のなく素晴らしいですし、いい意味で多くを語る必要がないナンバーだと思います。さて、ここまでニューアルバムアルバム『WHO?』についていろいろと伺ってきましたが、その新作を引っ提げて、まさに待望と言っていいツアーが始まりますね。

⽔野
この一年間、現場は本当に大変で。僕らよりもスタッフのみなさん、関わってくださる方々が大変で、ご迷惑をおかけした中、制限があるとはいえ、やっと有観客でのライヴが実現できるというのはすごく嬉しくて。この段階ではみなさんにいろんな考えがあって、行きたくても行く判断ができない人もいらっしゃると思うんで、来ていただけることにまず感謝したいし、この状況でライヴをやらせてもらえること自体がすごく幸せというか。リスクをとって会場を抑えてくれたり、一緒にチームでライヴを作り上げてくれたりする人たちがいるから。今回、発表されているのは大阪と愛知だけで全国を周るという感じではないんですけど…いろんな想いを含めて特別なライヴだよね?
山下&吉岡
うんうん(頷く)。
⽔野
自分自身がステージで何を思うのかが、今から楽しみですね(笑)。いいライヴをするのは当たり前なんですけど、“やって良かったね”と思ってもらえるライヴにしたいと思っております!
⼭下
ツアーは2015年からやってないんでね。で、昨年のことがあったわけだし、もう6年分の溜まっていたものを吐き出すというか。待っていてくれた人はたくさんいると思うし、全都道府県ツアーをやっている時に“また来ます”って言っておきながら行けていなかったことも含めて、この6年分を楽しめるようなツアーにしたいと思います。

それでは最後に吉岡さん、締めてください!

吉岡
はい! 昨年は致し方ないことだったとはいえ、楽しみにしていてくれたツアーがなくなっちゃったのは本当に申し訳ないと思っています。自分たちもいろんな予期せぬ動きをして…みなさんもこのコロナ禍でいろんな変化に向き合ったり、困難な状況に向き合ったりしてて、お互いに状況は違うけど、その時間に積もったものがあって、私たちはライヴ欲が積もってるんで。この間、リモートライヴをやったけど、それでも“みんなが目の前にいてくれる”と思ったらすごい楽しかったんですよ。だから、“これ、本当に目の前にいたらどうなっちゃうんだろう!?”ってワクワクもありながら、ツアーをやる時はいつも新鮮な気持ちでいるんで、今から緊張感とライヴ欲で興奮しております。全国を周れるわけじゃないですけど、来れる方はお待ちしておりますので一緒に楽しみましょう! またね!

取材:帆苅智之

アルバム『WHO?』2021年3月31日発売 EPIC Records Japan
    • 【初回生産限定盤】(CD+DVD)
    • ESCL-5505〜6
    • ¥4,180(税込)
    • ※スリーブケース•デジパック仕様
    • 【通常盤】(CD)
    • ESCL-5507
    • ¥2,970(税込)

ライヴ情報

『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!』
4/14(水) 大阪・大阪城ホール
4/15(木) 大阪・大阪城ホール
4/24(土) 愛知・日本ガイシホール
4/25(日) 愛知・日本ガイシホール
5/07(金) 千葉・幕張メッセ 国際展示場1〜3ホール
5/08(土) 千葉・幕張メッセ 国際展示場1〜3ホール
6/10(木) 神奈川・横浜アリーナ
6/11(金) 神奈川・横浜アリーナ

いきものがかり プロフィール

イキモノガカリ:⼩・中・⾼校と同じ学校に通っていた⽔野良樹と⼭下穂尊が1999年2⽉1⽇に結成。ユニット名は、ふたりの共通点が⼩学校1年⽣の時に⼀緒に⾦⿂に餌をあげる“⽣き物係”をしていたことによる。結成後は地元の厚⽊・海⽼名や⼩⽥急線沿線でカバー曲を中⼼に路上ライヴ活動を始める。99年11⽉3⽇、同級⽣の吉岡くんの紹介で、その1歳下の妹・吉岡聖恵がいきものがかりの路上ライヴにいきなり⾶び⼊り参加。⼩さな頃から歌うことに興味を抱いていた吉岡は、そのままの勢いで加⼊し、いきものがかりは3⼈となった。吉岡という強⼒なヴォーカルを得たあと、地元の厚⽊・海⽼名を中⼼に精⼒的に活動し、ライヴハウスやホールでのワンマンをソールドアウトするようになっていく。2006年3⽉15⽇に「SAKURA」でメジャーデビュー以降、「ありがとう」「YELL」「ブルーバード」「風が吹いている」など、数々のヒット曲を世に送り出す。21年夏をもって2人体制での活動がスタート。2023年5月3日に2人体制となって初となる楽曲「STAR」をリリース。同日に地元・海老名のビナウォークにて開催されたフリーライヴには、8,000名超が訪れるなど大きな話題を集めた。12月13日(水)にはふたり体制初となる自身10枚目のオリジナルアルバム『○』(読み:まる)をリリース。24年には12年ぶりとなる全国ホールツアーを予定している。いきものがかり オフィシャルHP

「TSUZUKU」MV

「BAKU」MV

OKMusic編集部

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