L→R ⽔野良樹(Gu)、吉岡聖恵(Vo)、⼭下穂尊(Gu&Harmonica)

L→R ⽔野良樹(Gu)、吉岡聖恵(Vo)、⼭下穂尊(Gu&Harmonica)

【いきものがかり インタビュー】
ツアーができない今だからこそ、
できたアルバムだと思う

今回は気持ち良いほどに一曲一曲が
ちゃんと主張している

それは納得できるところですね。で、私、今「きらきらにひかる」をすごくロックを感じると申しましたが、今年になってシングルとして発表された「BAKU」のほうがさらに激しめで、いきものがかりの新機軸といった印象を受けました。

⽔野
捻ったことをやったつもりはないんだけど、確かにそうかも(笑)。この曲は『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のオープニングテーマで、いきものがかりとしては『NARUTO -ナルト-』シリーズの3回目の主題歌なんですね。同じタイアップを3回もやらせてもらうのは本当にレアなケースだし、ありがたい話なんですけど、前回やらせてもらったのは11年前で干支が一回りするくらい前なんですよ。そこからいろいろ経験して変わってきているし、それこそ時代の流れも変わってきているから、“今なりのものを提示しなくちゃな”みたいな気持ちはあって。だから、ちょっとアクロバティックなメロディーラインにしたいというか、“手数を増やしたいな”みたいなところはありました。

サビ後半の《カクゴハイイデショウカ/ヨアケハコレカラ/こころ 喰らうのは 未来だけ》が超カッコ良いですね。

吉岡
あのカタカナのところは歌い方の毛色も変えてますね。ちょっと声色も変えてますし、野獣じゃないですけど、そんなイメージで、いくつかの声色にチャレンジしながら録っていって。すごくカッコ良い曲だと思ったんで、すごく低い音を出そうとしました。

そのサビ後半は抑揚がなく、メロディーで迫っている感じではないんですけど、でもそこがまた何とも言えずカッコ良いんですよ。

吉岡
全体にメロディーのエッジが効きまくっているんで、そこの角を出すみたいな感じでカッコ良く歌えたらなって思いました。

「BAKU」もまたバンドサウンドがいいですね。

⼭下
江口 亮さんのアレンジなんですけど、江口さんとは久しぶりで。デビュー前から一緒にやらせてもらっているんですけど、これはやっぱり“江口さん臭”がすごい(笑)。あと、アニメのタイアップは江口さんとやることが多くて、そういう意味ではアニメ王道のゴリゴリのロックな感じになったと思います。

演奏するほうも初期衝動に忠実な感じで臨みました?

⼭下
そうですね。途中で何をやっているのか分からなくなった時もあって(苦笑)…いい意味でですけど、“ここでそう行くか!?”みたいなことが多いんですよ。それがめちゃめちゃ出ているくらいの曲になったと思いますよね。

ギター、ベース、ドラム、それぞれの音も粒立ちが良くて、各パートの音を追っていっても十分に楽しめるナンバーに仕上がっていると思います。「BAKU」も「きらきらにひかる」も、いきものがかりの新たな側面のある楽曲であるという話をしてきましたが、アルバムではその2曲の前に位置する、『WHO?』のオープニングナンバー「TSUZUKU」は、いきものがかりの王道といった印象が強いです。

⽔野
これは大変でしたね。みんなにもかなり待ってもらったかも。ほんとできなくて…。

難産でしたか?

⽔野
難産でしたね。何か全然掴めなくなっちゃって、『100日間生きたワニ』というものにどう対峙するかというところで。まだ完全稿ではないですけど、“こういうふうにしようと思ってます”みたいな映画の台本をもらって、上田慎一郎監督とも打ち合わせて、自分なりの『100日間生きたワニ』への向き合い方だったり、あの時に起こったことに対する向き合い方だったり、それらを整理して考えて曲にしようと向き合ってみたんですけど、それが結構難しくて、なかなかメロディーが定まらなかったんです。“さよなら”という言葉をどう入れるかというところが難しくて…でも、やっぱりそこは吉岡を信じているというか。“さよなら”ってどうポジティブに言ったって悲しさや切なさがちょっとは入ってくる言葉だけど、吉岡が歌うことで救われるものがあると信じて、曲のド頭に持って行ったんです。だから、歌詞はある程度あったんですけど、デモも間に合わなくて、ピアノの伴奏と僕の仮歌だけのものをみんなに聴いてもらって、吉岡に歌ってもらい、それをすぐに持ち帰ってデモを作って(苦笑)。やっぱり吉岡が歌うと見えてくるんですよね。

山下さんは「TSUZUKU」に関してはどんな印象でしたか?

⼭下
持って来た時、“これじゃあ、ちょっとな…”みたいな感じだったんですよ。
吉岡
出しづらそうだったよね?
⽔野
恥ずかしがってたんだね(笑)。
⼭下
ただ、そういう時って意外とバズるという(笑)。作者が“う~ん”っていう時は意外とパッと行けたりする現象は見てきたので。でも、いきものがかり的には、まさに王道のバラードだと思いますね。あと、「生きる」があっての「TSUZUKU」という関係性も、それがアルバムの1曲目と最後に入っているのも意図にしたことだし。
吉岡
あれだけ悩んだのに、今の話の流れからすると、これが1曲目なのはすごいと思いますね(笑)。
⽔野
あははは。でも、吉岡に仮歌を歌ってもらい、家に持ち帰ってデモを作って…ほんと軽くデモを作って、それをプロデューサーの亀田誠治さんに渡して。で、亀田さんがデモに入っているちょっとしたフレーズだったりを活かしてくれ、雰囲気だけは踏襲して素晴らしいアレンジをしてくれたんだけど、どんどんかたちが出来上がっていき、歌もコーラスも入って、最後のマスタリングの時に聴いたら“あっ、結構いいかも!”って(笑)。
山下&吉岡
あははは。

「TSUZUKU」での亀田誠治さんのアレンジは完璧じゃないですかね。今、お話をうかがっていて思ったんですけど、リーダーは自分の我を押し通すことよりも、みんなで何かひとつのものを作り上げていくことのほうがそもそもお好きなんじゃないですか?

⽔野
あぁ…そうですね。本来は我を出したいタイプなんだけど、そこに吉岡が歌をぶつけてくれたり、アレンジャーさんが僕の全然届かないものを持ってきてくれたりすると、曲がよりすごくなることを何度も経験しているから、そこがこのグループでやっている意味というか。アルバムの中でも山下の曲も吉岡の曲もあって、3人が曲を持ち寄ることによって何となく立ち上がる“いきものがかりらしさ”みたいなものがあるんですよね。

『WHO?』の中盤、5曲目「わたしが蜉蝣」、6曲目「チキンソング」、7曲目「ええじゃないか」はまさにそれじゃないでしょうか? この3曲はタイプがバラバラですけど、こうしていきものがかりのアルバムに収まっているという。

⽔野
おっしゃる通りです(笑)。
吉岡
マスタリングの時がそうで、今回は3曲目を整えたあとで音質を確かめるために1曲目と2曲目に戻ったんですけど、みんなで首をひねって“人格が曲ごとに違う…”みたいな(笑)。気持ち良いほどに一曲一曲がちゃんと主張しているんですよ。

「わたしが蜉蝣」は山下さんのナンバーで、エスニック感というか、異国感というか、サウンド自体が面白いんですけど、作曲している段階からこういうアイディアがあったんですか?

⼭下
これはアレンジャーの本間昭光さんのアイディアでうまくやってもらいました。アルバムを作ることになっていくつか書いた曲のひとつなんですけど、アルバム曲なんで自由に書けるということで、好き勝手書かせてもらったところがあって。その異国感、ファンタジー…自分の中では“暗いファンタジー”というテーマがあったんで(笑)、例えば歌詞に《ルルル》を入れてみたりとかは、これまで自分はあんまりやったことがなくて。しかも、それをAメロの間に入れるとか、そのコード進行がサビのコード進行と同じでサビの裏側で《ルルル》を歌っていたりとか、新しいトライをしてみた感じですね。

で、その「わたしが蜉蝣」から続く「チキンソング」がオールドスタイルのロックンロールで雰囲気が変わるわけですが、作者の吉岡さんとしては当初からこういうポップなロックンロールをイメージしていたんですか?

吉岡
…どうでしたでしょうか?(笑) でも、テンポも変わってないし、歌詞もこの調子だったので、このアレンジに導くにあたり、曲にとっては自然な感じだったというか。コーラスのイメージもあって…男子(水野&山下)に入ってもらってワイワイと楽しくやるイメージがあったんで、歌の内容、テンポ感、雰囲気は頷けるというか(笑)。アレンジは島田さんにやってほしかったという想いはあって、それでお願いしましたね。…すみません、私は鼻歌で作っているんで、アレンジの説明ができないんですよ(笑)。

いえいえ。今、吉岡さんの話は先ほどリーダーがおっしゃられたことに近いのかなと思います。吉岡さんの頭にあるものを完璧に再現するのではなく、メンバー、アレンジャーも含めて、みんなで作者の考えをかたちにしていくという。「チキンソング」はまさにそういう楽曲なのでしょうね。

⽔野
「チキンソング」は最後のほうに決まった曲なんですけど、“何か明るい曲が欲しいね”という話になって…その時に出ていた曲が「BAKU」とか「きらきらにひかる」とか、ちょっと重い曲が多かったんで、何かスカっと堅苦しいことを考えないような曲が欲しくて。で、吉岡の曲がいいと思って、“聖恵、一曲どう? 書いてくんない?”って(笑)。
吉岡
で、“できると思う!”とか言って(笑)。
⽔野
これは僕の偏見だけど、可愛らしい感じの曲が来ると思っていたらゴリゴリの楽しんでいる曲がきて。俺が言ったのはそっちの方向じゃなかったんだけど、めちゃくちゃ楽しそうで。
吉岡
あははは。
⽔野
でも、これは面白いなと。そして、吉岡が率先して“ここはこういうふうにコーラスを言ってもらって”みたいな感じでリードしてて。
吉岡
“リーダーの言い方はそうじゃない! ちょっと目立ちすぎ!”って言ってコーラスを下げたりとか(笑)。めちゃめちゃ盛り上がってコーラスを録りましたね。リーダーも本領発揮してくれたんで、変なコーラスが入ってます(笑)。

そこは確認しました(笑)。「チキンソング」で感じられるユーモアもまたいきものがかりのエッセンスとして重要なものだと思って聴きました。その楽しさは、次の「ええじゃないか」でも感じられるところではあります。“昭和ディスコ歌謡”というか、既存のジャンルでは何とも語りにくいサウンドですよね。これはアッパーな感じを意識して曲作りされたんでしょう?

⽔野
もちろんです。ダンスがつくことも想定しながら。わりと今までやってきたことをうまく再構成しながらやった感じがあって。これも“ええじゃないか”という単語だったり、“あっかんべー”であったり、フックになるような言葉を吉岡が歌うことによってノーマルな感じになるだろうと。
吉岡
リーダーが好きなものが詰まってるね、きっと。アレンジもこの曲が一番こだわっていたような気がする。2番でちょっとジャジーになったりするところとか。

OKMusic編集部

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