ブリティッシュロックを進化させた
ジュリー・ドリスコール、
ブライアン・オーガー
&ザ・トリニティの傑作
3rdアルバム『ストリートノイズ』
本作『ストリートノイズ』について
収録曲は全部で16曲。今回のカバー曲はドアーズの「ハートに火をつけて(原題:Light My Fire)」、リッチー・ヘイブンスの「インディアン・ロープ・マン」、フィフス・ディメンションの「レット・ザ・サンシャイン・イン」、ニーナ・シモンの「テイク・ミー・トゥ・ザ・ウォーター」、マイルス・デイヴィスの「オール・ブルース」、ローラ・ニーロの「セイブ・ザ・カントリー」と、幅広いジャンルからセレクトされている。特に「ハートに火をつけて」はトリニティ独自のアレンジで、素晴らしい仕上がりになっている。
本作でのオーガーのハモンドプレイは快調この上なく、キース・エマーソンやリック・ウェイクマンを凌駕しているといっても過言ではない。クライブ・サッカー(Dr)とデビッド・アンブローズ(Ba)によるリズムセクションは、後のブライアン・オーガーズ・オブリビオン・エクスプレス時代と比べると少し線の細いところもあるが、本作においては上手くハマっていると思う。
LP時代は各面に4曲ずつが収められ、A「How Good It Would Be To Feel Free」、B「Kiss Him Quickly, He Has To Part」、C「Looking In The Eye Of The World」、D「Save The Country」とそれぞれにタイトルがつけられてコンセプトアルバムの体裁になっていた。しばらく日本盤がリリースされていなかったが、この4月に久々に廉価版でリリースされることになっているので、まだ本作を聴いたことがなければこの機会にぜひ聴いてみてください。
この後、オーガーはオブリビオン・エクスプレスを結成、ハービー・ハンコックが『ヘッド・ハンターズ』('73)でやろうとした“ジャズ+ファンク”(要するにフュージョンのはしり)をハンコックに先駆けて実践し、ジャズとロックの融合に成功するのである。
TEXT:河崎直人