2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)

2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)

【いきものがかり ライヴレポート】

『いきものがかり
デビュー15周年だよ!!!
〜会いにいくよ〜特別配信ライブ』
2021年3月14日 at 横浜アリーナ

2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
2021年3月14日 at 横浜アリーナ(Photo by 岸田哲平)
 誰もいない客席が映る度にちょっと空恐ろしい感じがした。それはコロナ禍の恐怖というより、この状況に慣れてしまっていることにはたと気づいたからだと思う。ここ1年、配信ライヴを自宅のPCで観ることが当たり前のようになってきた。移動して会場まで行かなくていいのだから、観る方にとって便利は便利、楽は楽だ。モニターを通してでしか観られない映像演出もあって、そこに新たな楽しみも見出せる。この日で言えば、オープニングで流れたリハーサル風景や、FM YOKOHAMAのラジオブース内での3人のトークを収録した中盤でのVTRがそれで、いずれも本編とはまた違った3人それぞれのキャラクターが際立った、とてもいい内容であった。それはそれでいいし、そこを否定するつもりはまったくない。配信というスタイルでライヴをしなければならない事情が演者サイドにあることは痛いほどに理解できる。ライヴを止めてはならない。そこは大前提である。ただ、今の状況が普通ではないことも決して忘れてはならない。観てくれる人が間近にいてこそのライヴであって、その人たちとの交歓があってこそライヴは成立する。この日、それを改めて感じた。いきものがかりのコンサートだったからこそ、余計に強く感じたようにも思う。

 ベストな状況にはほど遠いと言っていいシチュエーションの中、とにかくメンバー3人が一生懸命に駆け回っている姿が印象的だった。吉岡聖恵は比喩じゃなく、実際に広いステージを縦横無尽に動きまくっていた。言葉は適切ではないかもしれないが、随所随所でこの状況と“闘っている”のだと感じた。M2「茜色の約束」とM3「気まぐれロマンティック」との間で行なわれた“こんにつあー”のコール&レスポンスもそうだった。彼らのツアー恒例の儀式のようなものなので、これをやらないわけにはいかないところはある。ただ、目の前には誰もいない。3人の胸中は如何ばかりだったであろうか。

 でも、みんなやり切った。それぞれにモニター向こうのリスナーに届くようにしっかりと声を出していた。努めて通常のいきものがかりのステージをやろうとするその姿勢は感動的ですらあった。M11「じょいふる」でのタオル廻しもそう。オーディエンスとの一体感を強固なものにする上で欠かせないパフォーマンスである。演奏がある分、件のコール&レスポンスに比べればやりやすかったのかもしれないが(?)、ここでもまた懸命にタオルを回す吉岡の姿が印象に残った。アウトロでは“15周年だから”と15回連続ジャンプし、水野良樹(Gu)は“15年経って息が切れるようになりました”、山下穂尊(Gu&Harmonica)は“この齢になってジャンプすることなくない?”と、ふたりとも苦笑いしていたが、加齢による体力の衰えとかではなく、それは通常とは違った緊張感からもたらされたものだったのではないだろうか。メンバー3人とも終始にこやかな表情を見せてはいたが、いつも以上に気を張って臨んでいたような気がした。

 そもそも、いきものがかりの楽曲はオーディエンスとの共有を前提としているようなものが多いと思う。この日のセットリストで言えば、M1「笑顔」もそうだし、M4「アイデンティティ」やM7「夏・コイ」、アンコールを締め括ったEN2「風が吹いている」もそうなのだが、これらのナンバーは(主にアウトロ前が多いが)♪ラララ〜と歌われる箇所がある。全部が全部そうではないだろうが、これらはある程度、ライヴでの一体感を意識したものだろう(この日も吉岡が合唱を促す場面もあったから的外れな指摘ではなかろう)。だが、実際に合唱が起こることはないわけで、歌の中に♪ラララ〜がある分、無観客であることをことさらに意識してしまうようなところが少なからずあったと思う。その辺を理解してか、M1「笑顔」では事前募集していた同曲を口ずさむ大勢のファンの映像をステージ後方のスクリーンに映し出すという演出はとても素敵だった。お見事だったと言える。

 しかしながら、♪ラララ〜と歌われる度、通常のライヴとの違いが際立ってしまったことは否めない。だが、そこは前向きにとらえなきゃいけないのだと思う。いきものがかりのライヴはフルスペックが楽しいし、誤解を恐れずに言えば、本質的にフルスペックじゃなければ楽しめないものなのだ。彼らの楽曲とこの日のパフォーマンスでそれが分かった。そんな中、観ている人たちが楽しめるようにメンバー、スタッフは最大限に尽力したことは伝わってきたし、そこには最大限の敬意を払いたい。だからと言って、悪い意味で、そこに慣れちゃいけない。彼らがそう言ったわけではないけれども、今の状態が普通でないことを忘れちゃいけないのだ。約2時間のライヴを観終えて、今振り返ってみると、そんなことを訴えかけられたような気がする。

 アンコールの1曲目でこの日、初披露されたEN1「TSUZUKU」の演奏前、水野は“2020年は“続く”ことがめちゃくちゃ難しい一年間だった”と、この楽曲タイトルの由来を話した。まだこの状況は続くだろう。ただ、まったく同じ状態が続いて行くのではない。すでに4月14日&15日の大阪、4月24日&25日の愛知公演が発表されていた『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!』。この日、5月7日&8日の千葉と6月10日&11日の横浜の追加公演が発表された。今回のライヴの最後の最後、ステージ後方のスクリーンにメンバー3人のサイン入りで、“次は会おう! みんな、元気でね!”のメッセージが大きく映し出された。次回は有観客だ。“Show Must Go On”、ライヴは続く。わずかではあるかもしれないが、事態は変わっていくのだろう。懸命に演奏、パフォーマンスを繰り広げるいきものがかりの3人からその希望を感じたところでもある。

撮影:岸田哲平/取材:帆苅智之


セットリスト

  1. 0.会いにいくよ
  2. 1.笑顔
  3. 2.茜色の約束
  4. 3.気まぐれロマンティック
  5. 4.アイデンティティ
  6. 5.KIRA★KIRA★TRAIN
  7. 6.YELL
  8. 7.夏・コイ
  9. 8.ありがとう
  10. 9.きらきらにひかる
  11. 10.BAKU
  12. 11.じょいふる
  13. 12.SAKURA
  14. <ENCORE>
  15. 1.TSUZUKU
  16. 2.風が吹いている
いきものがかり プロフィール

イキモノガカリ:⼩・中・⾼校と同じ学校に通っていた⽔野良樹と⼭下穂尊が1999年2⽉1⽇に結成。ユニット名は、ふたりの共通点が⼩学校1年⽣の時に⼀緒に⾦⿂に餌をあげる“⽣き物係”をしていたことによる。結成後は地元の厚⽊・海⽼名や⼩⽥急線沿線でカバー曲を中⼼に路上ライヴ活動を始める。99年11⽉3⽇、同級⽣の吉岡くんの紹介で、その1歳下の妹・吉岡聖恵がいきものがかりの路上ライヴにいきなり⾶び⼊り参加。⼩さな頃から歌うことに興味を抱いていた吉岡は、そのままの勢いで加⼊し、いきものがかりは3⼈となった。吉岡という強⼒なヴォーカルを得たあと、地元の厚⽊・海⽼名を中⼼に精⼒的に活動し、ライヴハウスやホールでのワンマンをソールドアウトするようになっていく。2006年3⽉15⽇に「SAKURA」でメジャーデビュー以降、「ありがとう」「YELL」「ブルーバード」「風が吹いている」など、数々のヒット曲を世に送り出す。21年夏をもって2人体制での活動がスタート。2023年5月3日に2人体制となって初となる楽曲「STAR」をリリース。同日に地元・海老名のビナウォークにて開催されたフリーライヴには、8,000名超が訪れるなど大きな話題を集めた。12月13日(水)にはふたり体制初となる自身10枚目のオリジナルアルバム『○』(読み:まる)をリリース。24年には12年ぶりとなる全国ホールツアーを予定している。いきものがかり オフィシャルHP

OKMusic編集部

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