MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』
第二十六回目のゲストは池永正二(あ
らかじめ決められた恋人たちへ)「日
々」「開眼」で2人が楽曲に込めた想
いとは

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第二十六回目のゲストは、あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二。この2組は、今年、初めて楽曲制作で手を組んだ。1曲は、1月27日にリリースされた、あらかじめ決められた恋人たちへの「日々 feat.アフロ」。もう1曲は、3月10日に発売された、音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』の新作CD『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 2nd D.R.B Bad Ass Temple VS 麻天狼』に収録される「開眼」。それぞれ作詞をアフロが担当、作曲編曲を池永が担った。楽曲制作に至るまでの経緯や、各楽曲に込めた想いを語ってもらった。
●未開の地に共に踏み込む相手は、絶対的に信頼できる「音楽の人」が良かった●
アフロ:今回の対談、時間があまっちゃうかもしれない。池永さんと既にもうあらかた語り合い尽くしちゃって。
池永正二(以下、池永):ハハハ! そうかもな。
アフロ:「日々 feat.アフロ」(あらかじめ決められた恋人たちへ)と「開眼」(ヒプノシスマイク)の完成を祝して先日、打ち上げしちゃいましたもんね。
池永:夜の公園でね。
アフロ:池永さんが「もう暖かくなってるから外でやろ!」と言って誘ってくれたんですけど、当日が超寒波で。
池永:寒かったよね。これはアカン!と言って。
アフロ:あの日も喋りましたけど、改めて「日々」の話をしましょう。この曲に関して、実はヒプノシスマイクの制作の話がなかったら生まれてなかった可能性もありますよね。
池永:うんうん、そうやな。
アフロ:まず、俺がヒプマイの制作チームから歌詞提供のオファーを頂いて。その際にトラックメイカーは自分の希望を尊重して欲しいとお願いをしたんです。そのお願いをした時点で、池永さんにオファーしたいと思ってて。ディレクターが描く楽曲のイメージにもピッタリだと思ったけど、ただ「声優さんがキャラを演じてラップをする」というコンテンツにお誘いするのは正直、勇気がいりました。自分でさえも、もしかしたら音楽以外の要素がクリエイティブに関わってくるのでは、という不安を抱えていたので。だからこそ未開の地に共に踏み込む相手は、絶対的に信頼できる「音楽の人」が良かったんです。緊張しつつも池永さんに電話して、一緒に挑戦して下さい、とお願いしたら「ちょっと考えてみるわ~」と返答頂いて。そこから2分後くらいにすぐ池永さんから電話が来たんです。
池永:ハハハ、すぐやったもんな。
アフロ:「この早さはフラれるな……」と思って電話に出たら、「ヒプノシスマイクの話もそうやけど、ちょっとあら恋の曲に参加してほしい」と。
池永:まさかの「発注返し」という。
アフロ:ふぁっ!?となりましたよ! でも以前から考えてくれたんですよね?
MOROHAアフロの逢いたい、相対
池永:そうそう。アフロくんにお願いしたいと思ってて。お願いをするためにオファーの旨を書いたメールも下書きしてたし、電話も通話ボタンを押しかけてたんやけど「ちょっと待てよ……明日にしとこかな」と。
アフロ:「明日があるさ」の4番じゃないですか!(<思いきってダイヤルを ふるえる指で回したよ ベルがなるよ ベルがなるよ 出るまで待てぬ僕>※「明日があるさ」歌詞抜粋)。
池永:慎重やねん。もうちょっと待ってみようとか、寝かしてみようと思っていたら、まさかのアフロくんから電話がかかってきて。あれが後押しになったね。
アフロ:ヒプマイが引き合わせてくれた。あら恋の曲に参加できる事、光栄でした。
池永:こちらこそ、ほんまにありがとう。「今のところ尺が12分あるけど、言葉に合わせて尺は縮めるよ」と伝えたにも関わらず、12分まるまる歌詞を書いてきてくれたよな。
アフロ:自粛期間中に言葉が溜まっていたのもあるかもしれないですけど、何より曲に歌詞が引っ張り出された感じがしました。打ち合わせも綿密にやりましたね。中華料理屋で。
池永:あの時、アフロくんが一生懸命メモをしながら話してたからビックリした。めっちゃ真面目なんやなって。
アフロ:あら恋が曽我部(恵一)さん、吉野(寿)さんという錚々たるメンツとやられてきた中で声をかけてもらって、自分はキャリアが足りない分、熱量でかましていかなければと思いました。って、いつもそうなんですけど。
池永:「ここの歌詞はどう思いますか?」と1つひとつ丁寧に聞いてくれて。おかげでガッツリ一緒に曲を作れた。
●震災やコロナを経験して、暗いものが自分の中で響かなくなってる●
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アフロ:これは俺が聞かれて困る質問ではあるんですけど、曲作りってどうしてます? 最初に物語が浮かんだりしてから作るんですか?
池永:「うるさい曲が作りたい」くらいから始めて、そこからずっと曲と向き合ってれば自然と物語が曲の中に生まれてくる。うるささを際立たせるには、手前に静寂が必要だろうとか。それこそ「日々」も「最初にこんなんを作りたい」というより、曲作りの過程で社会の状況や自分の感じ方とかいろんな日々を生きていく中で結果こうなった曲だから。アフロくんはどうなん?
アフロ:まずは「何が言いたいのか」の明確な軸を決めます。気の利いた言い回しを重ねているだけだと、一瞬はアガるんだけど聴き終わった後にすぐ泡になって消えてしまう。言葉の筋肉はバキバキなんだけど背骨がないみたいな。曲を聴いた時「これってCDショップの曲だよね」とか「東京で闘う曲だよね」と、一言で曲を説明できるかが背骨の有無だと思うんです。
池永:ああ、なるほどな。「日々」の歌詞を書く前も「コロナに対する曲で良いですか?」と言ってもんな。コロナのことを歌おうとするわけじゃなくて、日々のことを歌おうとしたらコロナのことになっちゃうという。すごく時代とフィットしてるし、大きなことを何とかしようする主義主張じゃなくて、日常の機微を歌っているのが良かったな。「日々」の最後に、アフロくんが「生きろ」と言うやん。これが出だしで「生きろ」やったら、聴き手として気持ちがついていけへんけど。10分くらい言葉やストーリーを積み重ねた上での「生きろ」やから説得力があって。そこからの<生きていてくれて 本当によかった>の流れが好き。時間軸が変わった感じがする。ウチのやりたいことと似てると思ったな。
アフロ:これまでのあら恋の楽曲もそうですよね。
池永:うん。インストだから分かりやすくはないけど、光があったら影があってみたいな音楽を作っているつもり。「どっちかだけ」だと迷いがなくて恐ろしい音楽になる。アフロくんは言葉の人やんか。強い言葉と優しい言葉を持ってるけど、基本的にアフロくんは優しい印象がある。希望の方なんやろうね。暗いな・嫌だな・しんどいなと歌ってても、俯き加減の「しんどいなぁ……」と、しっかり前を見据えた「しんどいな!」でニュアンスがちゃうやん。アフロくんは後者の方なんよ。そこが良いなと思ってる。
アフロ:それは俺自身がすごく大事にしてますね。着地は明るいところを見つめてたいなと。
池永:俺もそう。昔はそんなこともなかったけど、震災やコロナを経験して、暗いものが自分の中で響かなくなってる。暗いのが全部いけないわけじゃないんやけど、暗くて拗ねちゃっているだけの曲って、俺はやりたくないな。暗くてもしっかり踏みしめて行きたい。
アフロ:単純に自分自身の為なのかもしれないですね。俺はこれまで「最後は希望に着地するのが音楽の果たすべき使命だと思う」と色んな場面で言ってたんですけど、最近はそんな大そうなものじゃないなと。結局自分が何百回も歌っていく曲が希望で着地しないなんて、その後のライブ人生がしんどくなる。音楽は自由なものだから、拗ねて部屋の隅っこでホコリをかじって終わる曲も全然良いじゃないですか。ただ単純に、自分の生き方の好みがそこじゃないんだなという。
池永:そうかもな。それとアフロくんの印象で言えば、1歩進んで、2歩下がって、3歩進むみたいな。地団駄じゃないけど、前後ろじゃなくて立体的に上へ渦巻いていくみたいなさ。あの感じが良いなと思ってて。
アフロ:それで言ったら「日々」の螺旋階段をディレクションしてくれたのは池永さんですよ。もう少し言葉を重ねようと提案してくれたじゃないですか。そこから後半の盛り上がりの部分をもう一周、言葉を足したんですよね。確かに、あら恋の楽曲の後半にブチ上がる快感ってこの「もう一周」があるからだなと思って。
池永:終わりと見せかけて、もう一周やるみたいな。『エイリアン2』とかのね、あれが好きなんよね。
アフロ:しかも池永さんが提案してくれたフレーズがすごく素敵で。「何かのせいにして歩き続けた川沿いで」も池永さんの言葉じゃないですか。思い返せばあのフレーズが出る前、川沿いを2人で歩きましたよね。しかも全然綺麗じゃない東京のドブ川みたいなところで、川の水も見えやしない。そこで「開眼」の話もしつつ「日々」の話もして。
池永:今、振り返っても楽しい時間やったな。
●始めから終わりまで歌い上げることで人間の生々しい様を伝えたかった●
MOROHAアフロの逢いたい、相対
アフロ:今回何が嬉しかったって、池永さんと仲良くなれた事ですよ! 俺、東京に来て人の家に上がった回数は、池永さん宅が一番多いです。
池永:ハハハ! ウチでレコーディングしたもんな。構成作りながら録音してたから何度も表情変えて歌ったり、そもそも尺も長いからパーツだけでも全部録り終えるのにかなり時間が掛かって。すごく良いテイクはかなりあったので、このままでも充分だったんやけど、ここから10分通して歌うのは嫌かな?喉、大丈夫かな?って思いつつ「通しでやれへん?」と聞いたら「やりましょう!」って、「当然でしょ!」くらいのテンションで。俺もテンション上がったもん。で、録音したら9分くらいのところで噛んで、パンチインかと思ったら「最初から録音しましょう!」って。やっぱり最後の一発録りのテイクが独特な緊張感とグルーブがあって一番よかった。
アフロ:やっぱり一発録りのマジックってありますよね。俺、何回も音源を聴き返して「開眼」と「日々」を同時期に作れて本当に良かったなと思うんです。「開眼」は提供曲だから、ナゴヤ・ディビジョンの人生に乗りこんで歌詞を書くという制作。自分の話じゃない。でもナゴヤの3人の目の中には確実に俺が映ってた。反対に「日々」は自分の人生を書くという制作。だけど、俺の目には三人の姿が映ってた。それが両方に良い作用をもたらしたと思うんですよね。作品同士の会話があったというか。
池永:結局2曲とも同じことを歌ってるもんな。
アフロ:そうそう! 「根底にあるのは同じメッセージやんな」と池永さんがポロッと言った時に、本当にその通りだなと思って。
池永:生き様で言うと「日々」は紆余曲折をしながら、最後に<あなたが今日 生きていてくれて 本当によかった>と歌うけど、それが元気な感じじゃなくて、少し儚げな声を入れたんよね。疲れが滲み出てる「本当によかった」にしたかった。良くなかったことも含めての「よかった」に。ちょっと不安げなものを選ばせてもらいました。
アフロ:最後に声が枯れてますしね。
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池永:10分以上もある曲なら、普通はどこかで盛り上がって静かになってを繰り返すけど「日々」はちゃうもんね。ずっと右肩上がりやから、歌も最初はものすごく低くい感情から始まる。歌詞通り、まさに「明けない夜明け」の感じやんな。
アフロ:歌詞で言えば<メディアや音楽は 絶望を映し出し逆境を叫ぶ>という箇所を、池永さんは「メディアだけで良くない?」と言ってましたよね。
池永:うん。俺は音楽には絶望と逆境より希望と安らぎを奏でてる人が多いと思った。だけどアフロくんは「そんなことない」と。あれは自分のことを言っててんな。
アフロ:自分がコロナ禍で「逆境」とか「苦しさ」とかをひたすら歌詞にしてて、それに対してちょっと疑いが生まれていた時で。本当は楽しめてる部分もあるでしょ? 楽になった事、気付き、喜び、あるでしょ?と。
池永:対自分というのも、アフロくんらしくて納得いったもん。
アフロ:あの箇所の追求は厳しかった。
池永:ハハハ、そうやんね。あとは「それだけで」問題や!
アフロ:<そう思うと それだけで……>を何回も繰り返す箇所って、俺は1回で良いと思ってた。だけど池永さん的にはもっと言葉が欲しかったんですよね。
池永:うん。 <それだけで>のあとに感情が吐露されて曲も畳み掛けていくから、手前で悩んで躊躇する部分が欲しかった。<そう思うと、それだけで…>の先がなんなのか言ってなかったから三点リーダーの部分も含めていろんな葛藤を入れられるし、ここでどれだけブレーキを踏めるかがこの曲の肝だと思って。あとはアクセル全開やからね。
アフロ:俺としてはあの部分は、歌わずにあら恋の音が全面に出ていくべきだと思ったから「俺は、ちょっと引きたいんですけど」と。結構、話し合いましたね。
池永:アフロくんが<生きて 生きて 生きろ>と歌ったタイミングで、(あら恋が前に出て)一緒に音も盛り上がっていく方向なら繰り返さない方が綺麗かなって話もして。でもさっきも言ったけど<それだけで>で悩んだ方が後半グッとくると思ったの。ただ、最初は俺が回数を増やしすぎたんよな。
アフロ:ハハハ、そうそう。「池永さん、さすがに多いよ!」と。
池永:「悩みすぎ!」と。最終的に<それだけで>を3回入れることで落ち着いた。そう考えるとほんまに何度も2人で話し合って作ったよね。
アフロ:そんな制作を通して池永さんは言葉の人なんだと思いました。俺の知人があら恋のライブを見たときに「池永さんは詩人だ」と言ったんです。だけど、曲中に言葉は一言も入ってないじゃないですか。友達の言ってる意味が掴めなくて、でもその言葉が頭の中にずっと残ってて。だけど今回、言葉の文脈みたいなところでも音楽を作っているんじゃないかなと感じるくらい、池永さんは言葉の人だと思った。何なら小説の一節が頭に浮かんでから、その物語に沿って曲を作っているんじゃないかなと。
池永:確かに、そういうのは好きやね。音から感じる風景とか背景が見える曲が好き。電車の踏切音が聴こえるだけで、音の中に風景が見えてドキッとするからね。
●作品に触れる態度って、その人の日々の熱量と比例する●
MOROHAアフロの逢いたい、相対
アフロ:曽我部さん、吉野さんとやる時も歌詞のディレクションはしたんですか?
池永:ディレクションって言うと偉そうになっちゃうけど、アフロ君と録音した時のように話し合いながら、思いついた事はもう後悔のないようにしっかり伝えるようにしたかな。ただ、内心はドキドキしまくってた。
アフロ:曽我部さんも吉野さんも、それぞれ違う真剣な怖さがありますよね。
池永:そうそう。リスペクトをしてるからこそ感じるよね。
アフロ:池永さんも怖かったですよ! 今では遠慮なく意見をぶつけ合えるようになったけど。
池永:最初は、俺もアフロくんに遠慮してたもん。やっぱりやり取りすると気にせずに何でも言えるようになるよね。
アフロ:お互いに妥協せず作った曲だから、「日々」を多くの人に聴いて欲しくて、色んな知り合いに送ったんです。ピースの又吉(直樹)さんに「願わくば爆音で、叶うなら一人で聴いてやって下さい」と伝えて送ったら、わざわざ夜中の公園の写真と一緒に「景色のいい所まで歩いて爆音で聴きました」と感想を送ってくれて。その時、作品に触れる態度って、その人の日々の熱量と比例するんだと思った。送ってもらったものに対して、自分の作品を作る時と同じくらいの熱量をもって聴くっていう。そういうふうに自分も生きようと思いましたね。
池永:他人の作品に対して、つい流しがちになることもあるやん。でも何にしてもちゃんと向き合った方が良いよね。それが自分のためにもなるし。
アフロ:それこそフェスの現場で、アーティストや関係者からCDをもらうじゃないですか。すごくありがたいけど、時間は限られているから、枚数が多いとじっくり聴けないこともあって。それがコロナ禍になり、会う人が減ったのも向き合い方を変えた1つのきっかけにはなってます。
池永:そうやね。確かに、今の方が音楽を聴く時間が増えてるかもな。
●音楽だけじゃなく、物語を含めて夢中にさせてるコンテンツ●
MOROHAアフロの逢いたい、相対
アフロ:とにかく今回は、みんな向き合って聴いてくれて嬉しかったですね。その感想文を池永さんと共有して、2人でキャッキャするのがさらに嬉しかった。
池永:ハハハ。「日々」もそうやし「開眼」もキャッキャしながら作ったもんな。
アフロ:「開眼」もキャッキャしましたねぇ。
池永:色んなパターンのメロディを作ったもんな。
アフロ:制作チームの情熱がすごいですよね。ディレクターが歌詞依頼してくれた時の熱量も凄かった。本気に対して、本気で応えることが出来て心から良かった。だからこそナゴヤ・ディビジョンの事、推すようになっちゃいましたもんね。
池永:ふふふ、そうやんね。
アフロ:改めて『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』は、コンテンツの特性を活かした見せ方、楽しみ方がありますよね。リスナーに想像の余地を残しつつ、ドラマトラックを背景にラップする。音楽だけじゃなく、物語を含めて夢中にさせてる。それに対してMOROHAはどうなんだ?と考えた時に、もっと歌詞の背景を感じ取ってもらえるような間口ををつくれたらいいな、とも思いました。背景なしでぶっ飛ばせる曲をつくるのが第一なんですけどね。
池永:これまで知らない世界やったから、刺激になったよね。
アフロ:しかも「開眼」はトレーラーにも関わらず、YouTubeに上げたら2週間で130万回も再生されていて、さらに歌詞の分析もめちゃくちゃ丁寧に汲んでくれてる。これは愛されているキャラクターだからこそなんだ、と思いますね。
池永:ほんまほんま。こんなに愛を持って聴いてくれてはんねんな、とすごく嬉しかった。
アフロ:「開眼」のイントロ、最高でしたよね。
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池永:いきなり、ライブであのイントロが流れたらビックリするんちゃうかなと思って、イントロを入れるか悩んだりもしたけどね。
アフロ:あのイントロが良いんですよ! 音が鳴った瞬間にライブ会場の風景が想起されます。お客さん鳥肌がヴァー!ですよ。しかも池永さんのサウンドの後に、アカペラが始まることで俺たちの色が最大限に出るじゃないですか。
池永:「この世のすべてが暗闇ならば」の入り方も色々と意見を交換したよね。
アフロ:あそこはアカペラのスピード感も肝になってくるし、オンビートのようでオフビート、オフビートのようでオンビートですから。あの絶妙な具合も共有しつつ、四十物 十四(榊原優希)も完璧にモノにしてて。
池永:「うまかった!」と悔しがってたもんな。
アフロ: 絶妙でした。それから波羅夷空却(葉山翔太)の<進む先に道はない ならば幸い 迷う事もない>というフレーズも体重乗せて歌ってくれたのは嬉しかった。あそこ、実は歌うの難しいんですよ。「うぉー!」という雄叫びの直後にギアを落として<進む先に道はない~>なので、声のチャンネルを切り替えないといけないところなんです。そこも見事でしたね。
池永:2月にライブ(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE >』2nd Battle)で披露した時もすごい良かったね。
アフロ:特に、天国獄(竹内栄治)が冒頭の<我慢、ならん><怒り、痛み>を韻の意識を持ってラップしてくれていたのが嬉しかった。語尾じゃないところの韻でグルーヴを加速させるのは、すごく難しいからこそ、彼の勤勉さが滲み出てました。あと十四(榊原優希)の<この世の全てが暗闇ならば~>の歌い出し。あの熱量で、あの声量はレコーディングだったら、俺は十四に「もうちょいテンションを下げよう」と言ってるはずなんです。それが音源としては正解なんだけど、人前で歌うとなればやっぱり緊張とか気迫で感情が乗るんですよね。それがライブだからこそ、美しく激しく活かされていた。
池永:うんうん。緊張感があったよね。
●「この曲が届いていたら結果は違ったんじゃないか」って大真面目に思ったんです●
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アフロ:「開眼」でシタールを使いましたけど、あら恋でシタールを使った曲ってあるんですか?
池永:ないない! 考えたこともなかった。
アフロ:あら恋で使ってみようとは思わないですか?
池永:だって、俺らの背景に寺がないから。やっぱりMOROHAの場合も、アフロのくんの背景を歌っているからリアルに聴こえるわけで。ヒプノシスマイクの曲もキャラクターの経験したことが音楽になっているから、ちゃんと届くんちゃうかな。俺の歩いてきた物語の中にインドはないから、それを曲にしたら嘘っぽくなる。ちゃんと真実味があるものって、ウチらの体験している中から出てきたものやから。
アフロ:俺の中では、あら恋の音楽から(シタールが)聴こえてくる気がしたからお誘いしたのもあるんですよね。
池永:ホンマ? あ、でもドープさという意味では繋がってるかもしれへんね。
アフロ:いっそのことインド行きます? そうやって繋がっていく気がするんですよね。逆に、背景を作りにいくというか。
池永:ふふ、俺ら2人でインドに? 確かに興味があったら行くべきなんやろうな。
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アフロ:繋がるで言えば、池永さんの家の周りに川が流れてるじゃないですか。あれも「日々」の<何かのせいにして歩き続けた川沿いで>に繋がってますよね。
池永:MVでも映ってるしね。MVの冒頭はコロナで小学校が休みになっている時にうちの子とプライベートで撮影した映像やねん。去年の春くらいに。だからツツジがきれいに映ってる。
アフロ:あ、そうだったんですか。
池永:うん。そういえばうちの子、MVで映ってる坂を昔は自転車に乗りながら登られへんかってん。それが俺の知らんうちに立ち漕ぎで登れるようになってて、これこそ「日々」や!と思って。
アフロ:むっちゃいい話じゃないですか。やっぱ作品には私情を絡めると良いですよね。そもそも私情を絡めなくて何が作れるんだって話ですしね。
池永:言葉にしないだけで、俺はめっちゃ音楽に私情を絡めてるな。
アフロ:柴田さんの映像、素敵でしたね。
池永:すごく良かったね。「日々」のMVは映像だけじゃなくて、色んなシーンの写真を組み合わせた構成なんよね。「MVで写真を使いません?」と提案してくれたのはアフロくんやったもんな。それで写真やったらタイコウ(クニヨシ)さんにお願いしたい!と決まっていって。
アフロ:池永さん以外のあら恋のメンバーとは、コロナ禍という事もあって、実は一度も顔を合わせなかったんだけど、写真を撮りに行ったタイコウさんだけは全員と会っていて。タイコウさんが皆を繋いでくれている感覚がありました。MVで言うとカフェで抱き合う2人はヤバかったです。
池永:グッとくるよね。あとラスト、相手のカップにコーヒーを注いであげるんよね。このささいな日常の風景、気遣いというか寝起きの何気ないやさしさが良かったな。
アフロ:「日々」のMVでも楽曲でもいっぱい泣いたもんな。
MOROHAアフロの逢いたい、相対
池永:MVも良いんだけど、MVのみ観て終わりって風潮が大きいから、楽曲のみ先行してのリリースにしたんよね。やっぱり音楽のみで見える景色も必ずあるから、できれば曲だけで聴いてからMV観てもらえたら、その体験順番がいちばん理想。やっぱ音楽やからね。
アフロ:レコーディングの最中に訃報が届いた事も忘れられないっすね。
池永:あれで「生きろ」を含め、一気にリアルになって。「別日に録音する?」って話もしたんだけど、このまま録音しようと。今はこの瞬間を音楽に焼き付けようと。だから、本当に哀しくなるくらい感情が込められたリアルな楽曲になったんだと思ってる。
アフロ:あの時「この曲が届いていたら結果は違ったんじゃないか」と大真面目に思ったんです。愚かな思い上がりだと思うし、「人の命に関われる曲」そんなものが本当にあるのか?と今でも疑っています。はっきりと無力さを感じる事の方が多いです。それでも、この曲ならば、と思える一瞬がありました。その瞬間を疑いつつも、信じていきたいっすね。
MOROHAアフロの逢いたい、相対
文=真貝聡 撮影=森好弘

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