濱田めぐみと海宝直人が姉弟役、戦時
中の実話を元にしたミュージカル『ア
リージャンス〜忠誠〜』が開幕 【観
劇レポート】

第二次世界大戦下のアメリカで、強制収容所に収容された日系人家族の実話をもとにしたミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』が、2021年3月12日、東京国際フォーラムホールCで開幕した(3月28日まで/その後、名古屋・大阪を巡演)。ここでは、初日を前に行われた囲み取材とゲネプロ(総通し舞台稽古)の様子を写真と共にお伝えする。
まずは、囲み取材から。
濱田めぐみ
ーーいよいよ初日を迎えます。まずは意気込みをお願いします。
濱田めぐみ:いよいよ来たかという感じです。この作品自体、テーマが今の時代に意味のあるものだと思っているので、大切に、1公演1公演演じていきたいなと思います。
海宝直人:本当に濱田さんが仰った通り、今、上演する意味のある公演だと思います。それでいて、日本人だけでこの作品を演じる、作るというのはとても難しい作品でもあるとも思います。その中で試行錯誤して、みんなでいろんなことを考えながら、アイディアを出しながら、ここまで来たので、それをお客様に精一杯お届けしたいと思います。
渡辺徹:何しろ、私は初めてのミュージカルなんです。(これまでも)いろいろお話はいただいたんですけど、スケジュールなどが合わなくて、今回はじめてやらせていただくんです。それがいきなりミュージカル界を代表するお二人の父親ということで。(濱田さんが)娘と、(海宝さんが)息子ですから。足引っ張っちゃいけないなと。歌があるんですけど、DNAが変なことになっていてはいけないので。でもみなさんお忘れかもしれませんが、私、一応トップアイドルでしたから(笑)。久々に大きなステージで歌わせていただけることで、喜びに体が震えているところです。
ーー昔はレコードも出してましたからね......!
渡辺:そうですね。でもその言い方がちょっとチクリとくる(笑)。でもね、こうやってお芝居の中で歌を歌って、しかも、お二人の歌を稽古から含めて、特等席で聞けるというのは、非常にラッキーです。
海宝直人
ーー本作は実話をもとにしたミュージカルです。
濱田:日系人の収容所のお話は、現実を体験をされた方のお話をなかなか聞く機会がなく、さらに、経験された方々の想いがありまして、なかなか外に出ることがなくて。本当に、つい最近原作ができて、ブロードウェイで上演されたという経緯があるんです。我々もオファーいただいた時に、初めてその事実を知ったぐらい。なかなか広く知れ渡っていなかったことなので、すごくショックを受けました。こういうことが歴史の中の一部であったんだな、と。かなりいろいろな資料も読みましたし、日系の方々の思いも勉強させてもらって。深い思いを持ちながら、お芝居させてもらったという感じですね。
ーーコロナ禍なので稽古大変でしたよね。
濱田:そうですね。それは多分『アリージャンス』の舞台だけではなく、すべてのエンターテイメントがそう。歌の稽古も芝居の稽古もマスクをして、ソーシャルディスタンスを保ちながらスタンバイする。本来、舞台芸術というものは、そういったこととは真逆のところにあるものでしたからね。この状態が舞台稽古ぎりぎりまで続いていたということがかなり結構なハードルだったんですよね。
渡辺徹
渡辺:舞台あるあるだと思いますけど、稽古場でずっとマスクをした状態で、劇場入って、場当たりや舞台稽古もマスクをしていて、本番近くになって初めてマスク取ったら、妙に照れ臭いもので。初めて共演する方なんか、そういう顔なんですかっていう(笑)。1ヶ月以上付き合っているのに、まぁ不思議な環境で稽古をしましたね。
ーー歌う時もマスクをされていたんですね。
濱田:していました。違和感ありますよ。ほとんどのマスクを試して、どれが一番歌いやすいか研究して。歌うときに呼吸が苦しくなるので、いかに二酸化炭素を出しつつ、酸素を吸いつつ、見えないところで呼吸をしたりしながら。普段のお稽古よりも、かなり2倍3倍労力がかかりましたね。大変でしたね、正直。
海宝:高地トレーニングみたいな感じでした。特に初めて衣裳つきで、全体を通したときに、息ができなすぎて、本当に死にそうでした。みんなヒーヒー言いながらやっていました。こういう状況ですから、仕方ないのですが。(感染予防策を)徹底して、ようやくここまで来れたのが改めて奇跡。僕自身もこれまで中止になった作品とか、公演回数が少なくなってしまった作品もある。そういった中で、初日を間も無く迎えられるのは、とても特別なことなんだなと改めて感じました。
海宝直人、濱田めぐみ、渡辺徹(左から)
ーー渡辺さん、ダンスは踊られるのですか?
渡辺:僕、ダンスはできなくはないんですけども、幸いダンスがないんです(笑)。基本的にダンスはボックス(ステップ)ぐらいしか踏めないので。それは次回のお楽しみで(笑)
ーー渡辺さんからご覧になって濱田さん、海宝さんはどうですか?
渡辺:あのね、第一線でなさっている方というのは本当にすごいですね。俺が「歌がうまい」とか「ダンスがすごい」とか評する域じゃありませんから。本当に素晴らしいですね。まぁ稽古の合間の喋りは、くだらないことばかり喋っているんですけど(笑)。濱田さんも海宝くんも曲数がめちゃくちゃ多くて、忙しくて、稽古中はハァハァ言っているのに、濱田さんは「私、LINEのスタップ作るの得意だから、今度作ってきます」とかいって、本当に作ってきたりする(笑)。こんなに忙しいのに。いやぁ、素敵なお二人ですね。
ーーお二人からご覧になって渡辺さんは?
海宝:裏ではずっと笑わせてもらっています。
濱田:本当に面白いんですよ。いろいろなネタをお持ちなので。我々は出番が終わったらまず徹さんのところに話を聞きに行って。ずっとおしゃべりしてくださるから。
海宝:そう、貴重なお話もいろいろと。これまで共演されてきた錚々たる俳優さんのエピソードだったり......。
濱田:トップアイドルだった頃のいろいろなお話などを。
渡辺:海宝くんとか、その時代のこと、知らないと思うんですよ。だから洗脳しておかないとね(笑)。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ーー改めて本作の見どころを教えてください。
濱田:これ私も予期せぬ合致だったんですけど、『アリージャンス』という作品が持っているメッセージやテーマが、まさに今生きている私たちとすごくリンクするところがあって。あなたは一体何者ですか。あなたは何ですか。それをすごく問われている気がします。アリージャンスは忠誠という意味ですが、あなたは何に忠誠を誓いますか、と。今コロナのことや、世界情勢も揺らいでいて、いろんなことが起きている。私は初めて自分が生きている環境や自分が住んでいる国についてを見直したんですね。いままでそういうことはなかったので。皆様がこの作品をご覧になったときに、何が自分に問題提起されて、何を見返すきっかけになるのかなとすごく興味があるし、そういうメッセージが届けられるといいなと思います。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
海宝:日本版ということで、日本で新たに演出をしなおして、ブロードウェイで上演されていたものとは全く違う作品になっているんですね。日本人がやるからこそ、より分かりやすく、日本人のお客様が見て違和感のない形に作り上げるという目標でここまでやってきています。本当にシンプルなセットで、その中でいかに役者がエネルギーを出していけるかという勝負になるような作品に仕上がっている。ご一緒させていただている皆さん、本当に素晴らしい俳優の皆さんが集まっているので、僕自身も一緒にやっていて勉強していますし、その役者力というか、俳優たちのエネルギーを感じてもらえたら嬉しいなと思います。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
渡辺:この話は第二次世界大戦下の日系人の史実に基づいています。大変なご苦労をされた話がもとになっているんですけれども、その一方で、家族の話なんですね。家族の絆というものは今の世の中、コロナやいろんな問題で分断ということが言われていますけれども、この家族はそれこそ大変な環境の状況の中で過ごすわけです。家族の絆はどうあるべきか。そういうテーマも含んでいますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
さて、このほど筆者の観た舞台のことを振り返っておきたい。
時代は、真珠湾攻撃により日米が開戦した第二次世界大戦下のアメリカ。「日系人である」という理由で強制収容所に収容された日系人家族の実話を元にした物語だ。
『スター・トレック』シリーズでも知られる日系米国人俳優ジョージ・タケイと家族の体験が本作のモデルで、ブロードウェイ公演ではタケイ自身が“おじいちゃん”役を、姉ケイ役をレア・サロンガ(『ミス・サイゴン』初代キム役)、弟サミー役をテリー・リアン(『アラジン』アラジン役)が演じた。世界中で問題となっている移民問題や外国人嫌悪などタイムリーなトピックを扱った作品ということに加え、アジア系のクリエイターによって作られ、アジア系の演出家(スタフォード・アリマ)によって演出され、ほとんどのキャストがアジア系という、ブロードウェイミュージカルとしても革新的な作品として評判となった。一方、今回の日本版では、出演者はみな日本人。
日系キムラ一家のカイト“おじいちゃん”(上條恒彦)、父タツオ(渡辺徹)、姉ケイ(濱田めぐみ)、弟サミー(海宝直人)は、カリフォルニア州サリナスで暮らしていた。真珠湾攻撃が勃発後、日本を祖先に持つというだけで、キムラ家や日系人たちは強制的に追い出され、収容所へ移送されてしまう。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
収容所での厳しい環境のなかでも希望を失わず暮らしていたある日。アメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配られる。その中には「アメリカ軍に志願し、いかなる戦闘地でも戦う意思があるか」「米国に忠誠を誓い、日本国天皇への忠誠を破棄するか」という項目があった。 
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
父タツオは不当な強制収容に抵抗し、アメリカへの忠誠を問う質問にNOを貫く。姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキ(中河内雅貴)とともに、強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。一方、弟のサミーは、他のアメリカ人と同じであること=国家への忠誠を示すことで、父をはじめとする日系人を自由にしようと、家族の反対を跳ね除けて戦地へと赴くーー。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
なんといっても、キャスティングが絶妙だった。
姉ケイを演じる濱田めぐみと、弟サミーを演じる海宝直人は、約25年前に劇団四季で共演して以来の付き合いで、以前SPICEインタビューでも「お家でお茶でも飲んでるような感じ。その空気感で舞台に上がるので、家族的な雰囲気が出るという意味においては最強だと思います」(濱田)、「本当にちっちゃいガキンチョの頃を知ってもらっているので、カッコつけようがないわけですよね。その頃を知ってもらっているから遠慮なくぶつかっていけるというか」(海宝)と語っていたほどの仲。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ケイとサミーは兄弟だが、サミーが生まれた頃に母親を亡くし、ケイがサミーの母親代わりだったという設定もあいまって、その濃密な関係性が「家族」そのもの。非常に熱の入った芝居を見ることができた。また、日本ミュージカル界を一線で牽引している二人なので、さすがの歌唱力。ミュージカルらしく歌い上げる楽曲が多い印象だが、その重責をそれぞれ完璧なアプローチで見せてくれたように思う。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
おじいちゃん役の上條恒彦は、そこにいるだけで物語を感じる存在感。くすっと笑えるひょうきんさもいい。父のタツオ役の渡辺徹。ミュージカルは初挑戦だというが、俳優としてのキャリアが光る。囲み取材では「トップアイドル」だったことをネタにしていたが、渋く頑固な父親役はなかなかハマっていた。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子

そのほか、フランキー・スズキ役の中河内雅貴、看護師のハナ・キャンベル役の小南満佑子、マイク・マサオカ役の今井朋彦と実力派俳優も作品を支え、魅力的だった。
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
自由を奪ったアメリカへの「忠誠」を受け入れなかった者、「忠誠」を示し日系人の社会的地位を認めさせるために軍に入隊した者。それぞれの信念や苦悩が描かれた本作。濱田が囲み取材で「作品が持っているメッセージやテーマが、まさに今生きている我々とすごくリンクするところがあって。あなたは一体何者ですか。あなたは何ですか。それをすごく問われている気がします」と語っていたように、今のこの状況だからこそ痛烈に感じられるメッセージが伝わってきた。ぜひそれを劇場で目撃してほしい。
※上演時間は約2時間40分。(途中休憩あり)
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子
ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』のゲネプロの様子

取材・文・撮影=五月女菜穂

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