観る人にたくさんのハッピーを届けた
い!中川晃教、花村想太らによる『き
みはいい人、チャーリー・ブラウン』
会見レポート

1950年より、約半世紀にわたって連載されたチャールズ・M・シュルツ著のコミック「ピーナッツ」。世界一有名なビーグル犬・スヌーピーをはじめとするキャラクターたちの活躍は現在も多くの方に愛され、世界中で読み継がれている。そのコミックを元に生まれたのが、ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』だ。
1967年、オフ・ブロードウェイで初めて上演された後ブロードウェイに進出し、1999年のリニューアルを経て一層の注目を集めてきた。日本においても、故・坂本九、市村正親、小堺一機といった面々により上演されており、初演から50年の節目である2017年には、バラエティ豊かなキャストによる公演が行われた。
そして今回、新たなキャストを迎えた本作が、シアタークリエに帰ってくる。
左から 林愛夏、岡宮来夢、花村想太、中川晃教、宮澤佐江、植原卓也
キャッチーな音楽に乗せてキャラクターたちが紡ぐ、最高にハッピーでユーモラスな言葉の数々、コミックの魅力がギュッと詰まったポップな世界で、観る人の心に「幸せ」を届けるこの作品。大人にこそ響くハートフルなミュージカルの上演に先駆けて行われた会見の様子をお届けしよう。

会見は2019年12月にオープンした南町田グランベリーパーク内のスヌーピーミュージアムで実施。まずはキャスト陣より、作品に対する意気込みが語られた。
チャーリー・ブラウン役/花村想太
チャーリー・ブラウン役/花村想太:ミュージカルは2本目ですが、本当にワクワクしながら毎日過ごしています。小さな幸せや大きな幸せなど、いろんなことに気付ける作品となっています。このご時世ですが、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。
ライナス役/岡宮来夢
ライナス役/岡宮来夢:僕はこの中で一番年下なので、「頑張ります!」という気持ちです。想太くんもおっしゃっていましたが、今の自分たちでは気付けないような、子供たちならではの幸せ・大切なものに改めて気付かせてくれる作品ですので、全身全霊で取り組んでいきたいと思っています。
ルーシー役/宮澤佐江
ルーシー役/宮澤佐江:お稽古真っ最中ですが、毎日新しい発見があって、共演者の皆さんから刺激をもらい、楽しく過ごしています。今、世界中が大変なことになっていますが、この作品を見ている2時間少々は、嫌なことや辛いことを忘れさせる自信があります。素敵な作品なので、たくさんの人に見ていただけたら嬉しいです。
サリー役/林 愛夏
サリー役/林愛夏:シュルツさんが描くピーナッツの世界で、サリーとしてお芝居をさせていただけるのが本当に幸せです。コミックから飛び出してきたようなキャラクターたちが歌って踊る、楽しいミュージカルになっています。ぜひみなさんお越しください。
シュローダー役/植原卓也
シュローダー役/植原卓也:この作品は明るくエネルギッシュな雰囲気があり、キャストの皆さんも一人ひとりが本当に明るくてハッピーな心を持っていると感じるので、日々とても幸せで明るい気持ちで稽古に挑むことができています。本番はさらにあたたかな雰囲気で皆さんにお届けできるのかなとすごく楽しみにしています。
スヌーピー役/中川晃教
スヌーピー役/中川晃教:今回新たなメンバーと一緒に、ピーナッツの世界をミュージカルでお届けします。
シアタークリエという劇場で幾度となくステージに立たせていただきましたが、その中でも思い出に残る瞬間というのがあります。このスヌーピーは人間ではなく犬だからか、共演者の表情や客席など、犬から見た景色が焼き付いている感覚があります。しゃがんで四つ足になって吠えた延長線上で喋ったり、音楽の中でステップを踏んだり、大活躍するスヌーピーですが、それを役者として・人間として体現できるというのは、この役と出会えてすごく嬉しいところです。
全身全霊でスヌーピーにぶつかっていきたいと思っているので、どうぞ僕たちと一緒にこの作品を作ってください!
左から 林愛夏、岡宮来夢、花村想太、中川晃教、宮澤佐江、植原卓也
続いて、それぞれが演じるキャラクターの個性や魅力、自身との共通点について尋ねられると、花村は「チャーリー・ブラウンは本当に純粋で、不幸の連続だけど、だからこそ小さな幸せをしっかり噛み締められる男の子だと思っています。空が綺麗ならそれだけで幸せになれるって、今の子供たちにはもしかしたらピンとこないかもしれない。今は例えばゲームがあるとか、好きなものをたくさん食べられるとかかなと思うんですけど、チャーリー・ブラウンは空が晴れているだけで幸せになれる」と、愛情たっぷりに紹介。
「共通点は、鈍臭いところですかね。エレベーターに挟まったりとか。普通は避けたり入ったりすると思うんですけど、僕は固まって動けなくなる。そういうところは似てるかなって思います。あと、自分はすごくネガティブな部分を持ってるんですけど、子供の頃はポジティブな時代もあったのでそれをミックスして。若いけどネガティブな男の子って結構少ないと思うので、繊細で憎めないチャーリー・ブラウンを演じられたら」と意欲を見せていた。
続く岡宮は、「ライナスは、カボチャの大王を信じていたり、毛布を手放せなかったり、指をしゃぶってたりという幼い部分と、頭の良い哲学者の部分のギャップが愛らしいと思います。そんなライナスと自分が似ている部分は……ギリギリ絞り出して、顔が可愛いところくらいしか(笑)。……こんな空気になりましたけども」と照れ笑いをすると、キャスト陣から笑いが起こり、花村が「可愛いです」とフォロー。
「もう一つ、僕は幼い頃にクイズ番組をすごく見ていて、そこで得た知識をあたかも元から知ってましたみたいな感じで翌日友達に披露することが多かったので、そのへんは似てるかなと思いました」と知的なライナスとの共通点を披露するも、「でも一番似ているところは?」と茶々を入れられ。「顔が可愛いところです!(笑)」とアピール。可愛さ満点のライナスに期待したい。
ルーシー役の宮澤は「口うるさくてガミガミ屋さんなんですよね。私と正反対なんです(笑)。本当に!」と言うも、「皆さん(取材陣)の空気を見ていただいて(笑)」とツッコミが入り、苦笑い。
「あまり似ているところはないと思っています。でも、なんでルーシーがみんなに嫌われず、愛されるキャラでいられるのかを考えると、何事にも一生懸命で、その中に彼女なりの愛がたくさん散りばめられているから。発する言葉が人を傷付けてしまうこともあるけど、嫌味があって言ってるわけじゃないというのが、ルーシーと向き合って私なりに出した答えです」と、不機嫌で威張り屋ながら愛嬌がある彼女の魅力を分析していた。
また、「みんなの会話をできるだけ聞こうとしています。私の知らないところでの会話も、耳をダンボにして(笑)。キャラクターを立てるためにもちょっとした努力をしているので、舞台上でも発揮できたらと思っています」と、丁寧なキャラ作りをしていることを明かした。
林は「サリーはチャーリー・ブラウンの妹。お兄ちゃんをいじるのが大好きだったり、学校の宿題が大の苦手でお兄ちゃんに押し付けたり、毎日をうまくすり抜けるように生きている女の子かなと思います。私も佐江ちゃんと同じで、似てる部分は正直一つもないくらい正反対(笑)」と困り顔に。
「天真爛漫なガキンチョであるサリーの雰囲気を掴むために、SNSで『6歳女子』とか『6th birthday』とかのハッシュタグを検索しています。海外や日本の6歳の女の子を観察するのが、今の私のマイブームです。役に忠実に、作品に貢献できるように頑張ります」と、実際の子供たちを通してキャラクターへの理解を深めていると語っていた。
天才音楽家少年・シュローダー役の植原は「彼はベートーベンをこよなく愛するキャラクター。シュローダーの登場シーンは基本的にピアノが目の前にある。僕自身、ピアノは弾けませんが、幼少期から音楽が身近にあって、音楽が好きすぎて一人で踊って……と言うところから始まって今があります。去年の自粛期間はずっと家で音楽を作ったり、キーボードで打ち込んだり、ピアノを弾く時みたいな体勢が続いていたので、偶然だなっていう嬉しさがありました。音楽を通して喜びや楽しさを伝えるシーンもあるので、楽しく表現できたらいいなと思っています」と、音楽に深い繋がりを持つキャラクターとの共通点に笑顔を浮かべる。
2017年から続投の中川は作品の世界に一歩踏み込み、「子供の頃って自分の中で、『かっこいい』『強そう』『いいな』って感じるスーパーヒーローがいたような気がするんです。ピーナッツのキャラクターは、一人ひとりが自分のヒーローを持っているんじゃないかと思っていて」と個性的で魅力溢れるキャラクターたちの芯に言及。
「スヌーピーはいろんな人に扮装するのが得意。自分は犬だけど、犬ではない何かになれると信じているのかな、そんなヒーローを思い描いているのかな、つまりそれって?と考えて、人間なんじゃないかなと僕は思ったんです。スヌーピーを演じることで、人間の持っているポテンシャルを改めて感じたり、考えさせられたり。仲間たちから感じるものも多くやりがいがあります。自分ならではの『犬』を突き詰めていきたいなと思っているところです」と意気込んだ。
続いて、稽古場のエピソードについて聞かれた花村が「面白かったことで言うと、初期の林さんの縄跳びがヤバかったです。縄跳びが得意なサリーの役なのに全然飛べない!」と暴露すると、キャスト陣から笑い声が上がる。
林は自分の話が出るとは思わなかったと赤面しつつ、「皆さんたくさん飛んでお手本を見せてくれました。素晴らしい先生がたくさんいるので、本番はしっかり飛びたいと思います!」と意欲を見せていた。
次に、ミュージアム見学の感想を聞かれ、花村が「下の階に大きいスヌーピーがいたので、あれを持って帰れるくらい大きい家に住みたいです!」と言うと、岡宮も「ウッドストックの部屋の黄色い壁紙が可愛くて、僕も家の壁紙をあれにしたいなって思いました。気分が明るくなりそう」と笑顔。中川に「そこで何作るの?」と尋ねられた岡宮が「何作ろう?でも黄色いものがいいですよね」と悩むと「黄色の壁で黄色いもの作るの?」とツッコミが入るなど、和気藹々とした雰囲気なのが印象的だった。
宮澤は「この階でキャラクター紹介がされているんですが、本編では大好きなシュローダーに中々近付けないのでパネルにチューしました。作品の中では縮まらない距離を縮められて嬉しかったです」とお茶目にアピール。
林の「外のテラスにスヌーピーがゴルフをしている様子がたくさん描かれていて、景色も綺麗で素敵でした」と言う言葉には、他のキャスト陣も大きく頷きながら口々に「可愛かった!」と絶賛していた。
植原は「原画に驚きました。買えないですけど、いくらするんだろう?って(笑)。修正とかもマジマジと見ちゃいました」と展示を堪能したことを話し、中川も「全部なんですけど、階段に小さいスヌーピーがいたり、原画の絵があったり。展示スペース以外に目を向けた時にもピーナッツの世界があるのが素敵だなと思いました」と、細部までこだわったミュージアムの魅力を紹介していた。
作品の見どころを聞かれた中川は「稽古初日に、演出家さんが思いやりを持ってこの作品を一緒に作って欲しいと言っていました。一人ひとりが温かい気持ちで、ゆとりを持ってこの作品を作ったら、必ずシンプルなこの物語の良さが伝わると思う。そんな言葉をかけられた時に、4年前の経験を礎に、新たに生まれるこの作品を伝えたい、見ていただきたいと思いました」と、演出・小林の言葉を紹介しながら本作への思いを語ってくれた。
続いて、花村と中川に対し、東日本大震災から10年というタイミングと、コロナ禍という現状の中でのエンターテインメントについての質問が。
宮城県仙台市出身、父親の故郷が気仙沼という縁から、20年近くにわたり宮城県および気仙沼大使としても活躍している中川は、「10年という時間ですが、この経験においては「あっという間だった」という感想がどうしても出てこないんです。目の前にある現実も見つめながら、明るい未来を信じて一歩いっぽ進む。この節目から、また新しい一歩が始まるんだと思います。僕自身、ちょっと前まではこの仕事がこの世の中でどんな力になるんだろうと半信半疑で、答えを探していました。人の心に伝えるパワーはすごいんだと、逆に教わっているような感覚。この仕事に出会えたことを大切に、未来に向かって頑張り続けたいと思っています」と、改めてエンタメが持つ力に気付いたと話す。
花村も「僕自身は、幼少期に阪神淡路大震災を経験し、東日本大震災を関東で経験しました。両方経験している若い世代に入ると思うので、次の世代にしっかり恐ろしさや当時の大変さを伝えていくことが大切だと思っています。2011年、僕はまだデビューしていなくて、何もできなかったからこそ、今はたくさんの方に希望を与えられるような存在になれていたらと。コロナが発生し、いくつもの舞台が中止になった中でこの作品に出させていただくので、より強い気持ちを持って、たくさんの方に小さな幸せを届けたいと思います」と、自分たちの役割と作品に対する熱い思いを語った。
「僕たち共通して使命を持っているんですね。世を幸せにする!っていう」という中川・花村の笑顔と、二人の言葉に真剣に耳を傾け、大きく頷いているキャスト陣の真摯な表情が印象的だった。
左から 林愛夏、岡宮来夢、花村想太、中川晃教、宮澤佐江、植原卓也
左から 林愛夏、岡宮来夢、花村想太、中川晃教、宮澤佐江、植原卓也
その後、花村が家に持って帰りたいと語っていた大きなスヌーピーの前でもフォトセッションが行われた。各々がキャラクターのぬいぐるみを持ち、かわいらしくポーズを決めてくれる一場面も。一足先にピーナッツの世界観に浸りたい方は、ミュージアムを訪れてみるのもいいのではないだろうか。
ピーナッツの仲間たちを取り巻く、小さな冒険溢れる日常。たくさんの幸せを見付け、ハッピーで優しい気持ちになれる本作を、ぜひその目で見届けてほしい。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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