川崎鷹也、秘めた反骨心と愛情を込め
たラブソング

昨年TikTokの動画をきっかけに火が付いた「魔法の絨毯」は、2月末日の時点でMVの再生回数が2400万回を超えるなど、その勢いは加速の一途を辿っている。リリースから2年経っての急速なブレイクには本人も驚いたと語っているが、きっかけはどうあれ、曲の素晴らしさと彼が持つ声の魅力が人を惹きつけたのだ。発見されるのは偶然でも、伝播していくのには必然があったと思う。

2020年10月にバンドサウンドを基調としたEP『Magic』をリリースし、翌月には「今夜のクリスマス」を発表。2021年1月にも「サクラウサギ」の配信を始めるなど、「魔法の絨毯」のバズ以降積極的なリリースを続ける彼は、Mステ出演などの追い風も受け一層その存在感を強めている。

ミーティア初となる、川崎鷹也(かわさきたかや)へのインタビュー。ミュージシャンを志したきっかけから、「魔法の絨毯」ヒットまでの道のり、そして新曲「サクラウサギ」に込めた思いなど、彼のキャリアを足早に辿っている。そこから垣間見える、音楽の根幹となる愛情や人生観について語ってもらった。

Photography_Sakura Nakayama
Text_Ryutaro Kuroda
Edit:Miwo Tsuji

「反骨心」しかなかった、あの頃

――音楽に興味を持ったのはいつ頃ですか?

川崎鷹也(以下、川崎) : 元々音楽好きの少年ではなかったんですけど、歌うのは凄く好きでした。栃木の田舎の方だったこともあって、休みの日はボーリングするか、カラオケ行くかの二択しかなかったので、カラオケにはよく行ってましたね。

――高校の文化祭で友人と一緒に歌われたことが、音楽の道を志す転機だったそうですね。

川崎 : ただ歌うことが好きだったところから、次第に「歌手になりたい」という夢が大きくなっていって。文化祭に一緒に出た友人は今僕のマネージャーなんですけど、その人はマセキ芸能で芸人もやっているんです。彼は芸人、僕はミュージシャンっていうように、お互いステージに上がる人間を夢見ていたから、人前に立つ経験をしようじゃないかっていうことで出てみたんですよね。そうしたらみんなからの評価が良くて、「よし行こう!」って気持ちになった感じです。

――東京に出て音楽の専門学校に入ってからは、目標に向かって進んでいっている感覚がありましたか?

川崎 : いや、自分の曲もないし、ギターを弾いたこともないし、人前で歌ったのも文化祭だけという状況の中、周りはライブをやっている人だとか、オリジナル曲を持っている人が多かったので、凄く劣等感を感じたし、井の中の蛙だったなって思いましたね。夢に向かって突き進んでいるというよりは、努力しなきゃいけないっていう焦りと不安の中で、専門の2年間は過ごしました。

――そこで得られたことってなんだと思います?

川崎 : “ひたすら練習する”ってことじゃないかなあ。努力が必ず報われる世界じゃないので、そこに意味があるかどうかは結果論でしかないんですけど。あの頃は朝起きて学校へ行って、夜中までスタジオで歌い続けてそのまま寝ずに学校に行くような、そういう生活を繰り返していて。あの時過ごした時間が今に繋がっているのかなと、振り返ってみると思います。

――当時からやりたい音楽や、なりたいミュージシャン像はありましたか?

川崎 : 全くなかったです。僕、いまだに“こういうミュージシャンになりたい”っていうのはないんですよね。“こういうふうになりたくない”は死ぬほどあるんですけど(笑)。

――なるほど(笑)。

川崎 : でも、斉藤和義さんとか、高橋優さんとか、清水翔太さんを、好んで聴いていたので、なんとなくバンドはやらないだろうなっていうことと、激しい音楽もやらないかなあとは思っていました。歌力というか、シンガーソングライターとして、「歌の表現」を磨く方に行くんだろうなって。
――まさに今の表現に通ずるものですね。

川崎 : あと、当時から「リアルなことを歌いたい」とは思っていました。だから僕がやりたい音楽って、その時々で変わるんですよ。たとえば『I believe in you』は、2年前に思っていたことをそのまま書いたアルバムなので、あの作品で歌っているようなことをもう一度書けって言われても書けないし、シンガーソングライターの良いところって、時系列毎に表現したいことが変わっていくことだと思います。そして、情景とか雰囲気を綴って、何が言いたいんだろう?って思われるような歌詞は僕自身好きじゃなかったので、メッセージ性がストレートに伝わるような、誰もが一発聴いてわかる歌を歌いたいです。

――卒業されてから最初のアルバム『I believe in you』がリリースされるまで、少し時間がありますね。その間はライブが表現の中心だったのでしょうか。

川崎 : そうですね。ライブは毎週やっていました。お客さんが3人しかいない日とか、お客さんよりも共演者のほうが多いようなライブを8年間やってきていて。でも、ステージに立ってお客さんの前で歌って気づけたことは多いですね。少ないお客さん達が感動して泣いてくれたり、“この曲に人生助けられました”とか言ってもらえたことで、自分の表現したいことは間違ってないんだなって思えたんですよね。

――それがモチベーションになっていたと。

川崎 : ステージに立って、お客さんの表情を見て初めて「やめなくて良かったな」って思うんですよ。ライブとライブの間はめちゃめちゃ地獄のような毎日で、もう帰ったほうがいいんじゃねえかなとか思うこともあったけど、それでもライブのために準備をしてステージに立つ。そうすると「ああ、やめなくて良かった」って思える瞬間が毎回あって、そういう日々を続けてきました。だから僕の活動はステージありきだし、ライブをしてなんぼだと思っています。

――そういう苦しい時間を経験したことで、反骨心が育っていったところはありますか?

川崎 : 反骨心しかなかったです(笑)。悔しいっていう感情だったり、劣等感だったり、嫉妬心だったり、そういう気持ちはずっとありました。なので昔は「なにくそー!」と思って歌っていたと思いますし、言い方が難しいですけど、専門時代は音楽を聴くのも、テレビの音楽番組を見るのも嫌でした(笑)。

――それだけ悔しい気持ちがあったということですね。

川崎 : そうですね。その裏にあるのは、“なんで自分はそこにいないんだろう”って想いで。自分の曲に対しては自信があるし、なんでこれが広まらないんだろうって思っていました。「魔法の絨毯」も書いたのは2017年で、リリースしたのが2018年。今でこそ沢山の方に聴いてもらえているけど、当時からライブに来てくれていた人はたぶん今頃「ほらね」って思ってるんですよ。僕だってそう思ってますし、「良いものは持ってるはずなんだよ」っていう気持ちで歌っていました。

「魔法の絨毯」が、2年の時を経て大ヒ
ット

――そして昨年、2018年にリリースしていた「魔法の絨毯」が急速に広がっていきました。

川崎 : 2020年の8月くらいなので、まだ1年も経ってないですね。

――驚きの方が大きかったのではないかと思ったのですが、どうですか?

川崎 : 本当に驚きです。最初はきっかけさえわからなかったから、嬉しいっていうよりも、「なんで? なんで? なんで? 今?」みたいな(笑)。
魔法の絨毯【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

――調べて見たらTikTokがきっかけだったと。

川崎 : 一般の方が「魔法の絨毯」をBGMにして動画を上げてくれたんですよね。恋愛相談のような動画に、「魔法の絨毯」の<君が仮にどんな>ってところが入ってくるんですけど、その動画が広まっていく内に、そもそもこの曲はなんだ?ってことで検索されていきました。

――環境は一変しましたか?

川崎 : 一変しましたね。街で声をかけていただけることも、ミュージシャンをやっていく上では嬉しいことだし、カラオケに行って僕の曲が履歴に入ってるのも夢のようでした。きっと家族や友人だったり、僕を応援してくれていた人達も僕の曲が有名になっていくことは嬉しいことだと思うし、おかんはバイト先の後輩から、「この曲知ってます?」って言われて僕の曲を紹介されたらしいんですよ。ドヤ顔で「息子やで」って言ったらしいです。

――ははは(笑)。

川崎 : あと、環境が変わったという点では、やっぱり会社を辞めたことで覚悟は一層強くなりました。

――まさにご家族にとっても非常に大きいことですね。

川崎 : 去年、子どもが生まれたので、もう自分ひとりの人生じゃないんですよね。結婚するってことは、そもそも妻だったり子どもだったり、妻の両親も含めて背負うことだと思うんです。それもあって僕はサラリーマンをやっていたんですけど、もちろんその期間も「音楽で売れたい」と思っていたし、家族も本気で応援してくれていたんですけど。妻と子どもいはひもじい思いはさせなたくないから、音楽活動と並行してサラリーマンもめっちゃ頑張ってましたね。今は(サラリーマンを辞めて)音楽に対しても私生活に対しても、覚悟が変わってきました。
――時間を経て曲がヒットするというのは、どういうきっかけがあるにせよ、その曲に何かしら普遍性があるからだと思います。

川崎 : でも、あんまりこだわって書いてはいないんですよね。構成とかトレンドとか、考えてないんです。僕が曲を書くことってエゴなんですよ。変な話、僕が書く曲は奥さんが良いって思ってくれればそれで良いんですよね。日本中にわかってほしいなんて、1ミリも思ってなくて、「魔法の絨毯」もそういう気持ちで書きました。で、それが結果的に沢山の人に共感していただいて、広まっているっていう。

――ひとりに刺さらないものは、誰にも刺さらないと。

川崎 : そう思います。自分の言いたいことを言いたいように歌う、その時表現したいことを表現したいように書く、それを続けていきたいです。その中でたとえば、奥さんへの感謝の気持を綴った曲が、ライブに来てくれるお客さんへの感謝の気持ちとリンクしたりするのかなって思います。

川崎鷹也、秘めた反骨心と愛情を込めたラブソングはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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