NIGHTMARE 地元・仙台での柩(Gt)
バースデー公演に見た、更新し続ける
バンドの歴史

NIGHTMARE TOUR 2021 cry for the moon

2021.3.5 宮城・SENDAI PIT
結成20周年を迎えた2020年、2月に行なった横浜アリーナ公演で完全復活を遂げ、コロナ禍のなかでもできる形で音楽活動を続け、アニバーサリーイヤーを駆け抜けてきたNIGHTMARE。現在、彼らは復活第2弾となるニューシングル「cry for the moon 」のリリースに合わせて、2月27日(土)大阪・Zepp Osaka Baysideを皮切りに全国ツアー『NIGHTMARE TOUR 2021 cry for the moon』を開催中。ツアー3公演目となる3月5日、彼らの地元=宮城・仙台PITにて有観客で行われたライブは、昨年コロナ禍で中止となった柩(Gt)のバースデー公演を兼ねたものとなった。本ツアーのなかでもとっておきの内容となったこの日のライブの模様を、配信を通してレポートする。
来場したオーディエンスがハンドクラップを鳴らし、いまかいまかとメンバーの登場を待ち構える場内。そこに流れ出したのは、なんとあのドビュッシーの「月の光」。こんなにも優雅な雰囲気に包まれたオープニング、かつてのNIGHTMAREにあっただろうか。そんな意表をつく幕開けのなか、5人はいつものように定位置につき、ライブが「パンドラ」からスタートすると、優雅な雰囲気はとたんに闇に包まれていく。この日は柩のバースデー公演ということで、昨年リリースした『20th Anniversary NIGHTMARE PERSONAL BEST HITSUGI Edition』の1曲目に収録されていたこの曲をライブでも特別にアクト。
「ツアー3カ所目。仙台に帰ってきました!」とまずは地元のファンに元気よく挨拶をしたあと「今日は柩君のバースデーライブ。なので、今日はみんなで“バースデーボーイ”を喜ばせたいと思います」と伝えたYOMI(Vo)。この言葉通り、ライブはこの後も柩仕様で進行。MCの後に始まったのは柩の作詞作曲による「ERRORs」だった。これも『~BEST HITSUGI Edition』からの選曲だ。ここでは間奏で咲人(Gt)がソロを弾きだすと、YOMIが上手にいる柩に駆け寄り、ナイショ話を交わしてにこやかな表情を浮かべる。
YOMIが配信カメラに向かって手のひらをパーンと広げて歌い出したファンキーな「ink」。そこから「メビウスの憂鬱」、「惰性ブギー」と対になっている2曲を、Ni~ya(Ba)がグルーヴィーなベースでカッコよくつないでみせると、バースデーボーイの柩もそのリズムに合わせ楽しそうに腰をフリフリ。「惰性ブギー」ではYOMIが咲人に1番ではうなじ、後半は身体ごとステージに押し倒すという濃厚接触プレイでコーラスを求め、客席の笑いを誘うと、その横で柩はNi~yaと一緒に配信カメラを見つけて顔を近づけ、チャーミングな笑顔を浮かべながらノリノリで2人でエアコーラスを届けた。柩とNi~yaがこんな風に楽しそうに歌っている顔は、普段のNIGHTMAREではなかなか見られない。これは、この日のライブが有観客とともに配信という形態でも行われたからこそ生まれたミラクルシーンといえる。
もちろん「ジャイアニズム天」などのNIGHTMAREらしいダークで激しく、盛り盛りの展開で威勢よくオーディエンスを煽り立てていく曲では、声が出せないという制約があるなかでも集まった観客たちとすんなり一つになって、画面越しでも伝わるような有観客ならではの熱くダイナミックなライブ空間を生み出してみせる。カメラを使った配信ならではの見せ方にしても、新しい環境のなかでの有観客ライブの盛り上げ方にしても、今回のツアーはそのあちこちに昨年の早い段階からライブ再開を決断し、実践を積んできた彼らの経験値がしっかりと反映されていた。
そうして、ライブは咲人がギターでDJのスクラッチ音を出す「B.A.R.K」から終盤戦へ。Ni~yaのスラップが合図となって始まった「UGLY DUCK'S WILL」は、間奏で再びNi~yaのソロに戻ると、RUKAとNi~yaのリズム隊が奏でる間奏を愛おしむように、柩とYOMIと咲人が自然と2人を囲むように集まってきた。お互いを認め合い、尊重し合うことで再び集結した5人。いまのバンドのそんな部分、つながりが感じられて、じわりと胸にきたこのシーンは、まさに“やり直した”からこそたどり着けた“美しい世界”だ。
ただ、復活した訳じゃない。まだまだNIGHTMAREというバンドの歴史を更新したい。いまの彼らのそんなパッション、意欲を表すように、本編ラストの締めくくりに用意されたのは彼らの最新曲だった。Aメロの8ビート感が懐かしくもあり、NIGHTMAREとしては新境地とも思える新曲「cry for the moon」を彼らは堂々とパフォーマンスして、ステージを後にした。
アンコールは、YOMIに無理やり背中を押されるように、柩を先頭に5人が舞台に姿を現した。そんな心温まる場面に続いて始まったのが、柩作詞、柩・咲人作曲の名曲「落羽」で、さらに胸がしめつけられる。この曲も『~BEST HITSUGI Edition』で本人がチョイスしていたナンバーだ。この曲でも感動的なシーンがあった。間奏で柩がソロを弾いていると、まずそこにYOMIが近寄ってきてギターを覗き込み、続いて咲人がやってくると、途中から柩のフレーズにハモリを重ねていったのだ。これは、本当に素敵なシーンだった。そんなメンバーたちの愛情をひしひしと感じ取ったのか、この曲でYOMIが最後のサビを歌い出すと、柩はRUKAの前へ移動。RUKAと目が合ったところでちょこんと頭を下げると、RUKAがなんともいえない表情で微笑む。次はNi~yaの横へ移動。Ni~yaとはハイタッチを交わし、続いて咲人、YOMIとも目線を合わせながら丁寧に挨拶を交わした柩。柩の人懐っこい性格がしみじみ感じられる場面だ。
そして、曲が終わると場内に突然バースデーソングが流れだし、サプライズで誕生日を祝うケーキが登場! 柩はメンバー、会場のオーディエンス、視聴者に見守られながらケーキのロウソクを吹き消した。そのあとは、メンバーが柩にお祝いのコメントを贈った。
咲人は「いろんな現場でギター弾いてますけど、やっぱりアナタとギター弾いてるときがすごく楽しい」といって柩を感動させ、Ni~yaは「柩君、誕生日おめでとう。って、面と向かっていうと恥ずかしいな」といって照れまくり。RUKAは「21年目だよな? 俺たち。成長しましたね。いま当時の君の姿を思い出しました」と語りかけ、YOMIは「これからもお互いいいコンビでいれたら嬉しいです」と伝えた。
そして、その後も「極東乱心天国」の後半、4人がRUKAの前に勢揃いして体を揺らす場面では柩のみお立ち台に立つ場面を作るなど、最後までバースデーボーイの柩をフィーチャーしたアクトで盛り上げ、この公演を締めくくっていった。
そうして、お楽しみはまだあった。終演後、柩のユニット、GREMLINSでは恒例の“イエガー! 酒もってこい!”コールが場内に鳴り響くと、なんとここで会場に来ていた柩パパがお酒を持ってステージに登場! この日最大のサプライズに、柩は「頭、おかしいよ(笑)」といいながら、その場に倒れ込むほど大爆笑。そして、最後までステージに残り「心底、自分の居場所はここだなと感じました」とファンにはたまらないコメントを伝えたあと、「いまは全員が大変な時代。みんなと遊べることが幸せなので、いまはライブに行けないのが悔しいとか思わないで、自分が安心できる環境でNIGHTMAREを楽しんでもらえればいいです。俺、いま世界で一番幸せ者です。ありがとー。大好き!」とファンにとびきりの笑顔を贈り、バースデーボーイはステージから姿を消した。
今回のツアーのなかでも特別な公演となったこちらのライブは3月11日(木)までアーカイブ視聴が可能なので、まだ観ていないファンはぜひともチェックしてほしい。そして、3月11日(木) Zepp DiverCity Tokyoでこのツアーを締めくくるファイナル公演を開催する。同日の配信チケットは現在も発売中だ。また、今後は柩以外のメンバーのバースデーライブも決定しているので、こちらのほうも期待して待っていてほしい。
完全復活のNIGHTMARE、そのバンドの歴史は、いまもまだ更新中である。
取材・文=東條祥恵

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