【門脇更紗 インタビュー】
誰の真似もせず、
自分で道を突き進んで行ってほしい
誰かの背中を押せる曲に
なったらいいなと思います
歌詞についてもうかがいたいのですが、門脇さんの歌詞は主人公の心情や見ている景色を疑似体験できるような感覚にさせてくれるのが魅力的だと思っています。「トリハダ」では冒頭の《ぞわぞわとした感覚だ》は恐怖心から生まれる感覚による鳥肌で、《落ちていく羽たちが/また新しく生まれる》の“羽”は新しい恐怖が身体にまとってくることに主人公が怖がっている心情なのかなと。
でも、読み進めていくと主人公の中になにか光や希望など、目指すものができて少しずつ強くなるというか、上に向かっていく心情の変化が感じられました。そして、最後に冒頭と同じ歌詞を持ってきているので、後のほうは目的へ向かう楽しみが“羽”として生まれて身体にまとってくるという一曲の中で主人公の心情の変化や門脇さんがおっしゃったいい鳥肌の感じ方を体感することができて。この物語のためにあえて冒頭と最後を同じ歌詞で構成したのかなと思ったのですが。
そうです! 最後のほうは楽しみが強くなっているんです。最初と最後の歌詞については、もともとラストのサビで終わる予定だったんですけど、冒頭の歌詞を最後に足したほうがいいと思うようになって。言っていただいたように最初は少し弱い気持ちもあり、歌詞が進むにつれて“新しく生まれた羽で飛び立つんだ”という気持ちが強くなっていき、最後の歌詞では決意が全然違うことが分かるようにしたかったんです。“これから飛び立つぞ!”というイメージで受け取ってもらえたので嬉しいです。
このように主人公の心情が読み取れるので、歌詞を読むのも楽しみになりますよ。門脇さんの中ではどこがポイントになりますか?
《大切なものを犠牲にする覚悟を/この空に見せなくちゃ》というところは、結構悩んで書きましたね。最初は“崖っぷち”みたいな歌詞を書いてた記憶があって。
その部分の前が《ギリギリに立ってる足が震えても》ですからね。
そうなんですよ。だから、ギリギリで崖っぷちに立ってる足が震えてるみたいなイメージで書いたんですけど、“いろんな大切なものを犠牲にしながらも進まなきゃ”という気持ちの部分で主人公が一番強くなったシーンになると思っているので、ここはポイントになりますね。
主人公がどのように強く成長していくかを考えて書かれていったと。歌詞とサウンドが本当にうまくマッチした一曲ですよね。それこそ、佐伯さんから曲のアレンジが届いた時に“こういう想いで仕上げました”というようなコメントはありましたか?
いや、直接想いを言われた記憶はないですけど、“好き勝手にやらせてもらいました”みたいなことは言っていた気がします(笑)。仕上がりがすごくカッコ良かったので、私から何か言うこともなかったですよ。
イントロのギターリフもそうですけど、Bメロに入る手前でベースが遊びながら入ってくるところなんて、それこそ鳥肌が立ちましたよ。
私もイントロから“いい!”と思いました。めっちゃいいですよね。
門脇さん的にもめっちゃいいと思われたんですね。
はい! これがいいってなりました。周りのみんなも同じ気持ちだったので。
この曲は歌うのも大変じゃなかったですか?
大変でした。レコーディングをする前に他の曲よりもめっちゃぎっちりと練習したので、そのおかげでいつもより自信を持ってレコーディングができて、すごくいいテイクが録れたんです。でも、自分で作っててあれですが、“なんて難しい曲なんだ!”と途中で思ったりして(笑)。結構大変だったけど、めちゃくちゃ楽しくレコーディングができましたね。周りの人も“変わったね”と褒めてくれました。
自身でも結果的に挑戦できた曲に仕上がったと。
はい。とても挑戦できた曲だなと思います。「さよならトワイライト」とかも今までにない曲調だったので自分の中でも新しい一面でしたが、「トリハダ」はまたまた自分のための勉強になった曲ですね。
「さよならトワイライト」よりも直球なテイストですもんね。
そうですね。うんうん。テンポ感はそんなに変わらないかもしれないですが、スピード感がこっちのほうがシャって感じで(笑)。
シャって感じですよね(笑)。レコーディングを通して成長できた部分はどんなところでしたか?
声が自信あり気の声だなと。だから、メジャーデビュー曲が自信に満ちたいい声で録れた曲で良かったです。
それこそ、この曲も門脇さんにとって大きな変化を与えたターニングポイントになる一曲になったんですね。
そうです。まだライヴで演奏していないので、レコーディングした時の声に負けずにライヴをするのが不安です(笑)。ここから訓練してしっかりと披露できたらいいなと思います。
確かに。アコギの弾き語りで演奏するとなると難しいですよね。
「トリハダ」で門脇さんの曲と出会うリスナーも多いと思うのですが、曲の聴きどころを改めて教えてください。
この曲というよりは内容になってしまいますが、夢を追いかけるのが年齢を重ねることにつれて恥ずかしくなったり、周りの目を気にして諦めてしまったりすることがあると思うんです。私自身も高校生の時に“まだ、やってるんだ”と思われる時もあったんで。
高校生で言われるって早くないですか?
小さい頃からやっていたし、みんな私が音楽活動をしていることを知っていたので。そういう冷たい目で見られるのがすごく悔しくて嫌だったんです。そこで辞めようと思う人もいるかもしれないけど、それってすごくもったいない。誰かに終わりを決められるんじゃなくて、自分がどこまでやるかを決めてほしいから、“誰の真似もせず、自分で道を突き進んで行ってほしい”という想いをこの曲に込めました。誰かの背中を押せる曲になったら嬉しいですね。
私も主人公が成長していく勇気みたいなものを感じたので、曲を聴くだけじゃなく歌詞もしっかり見てほしいですね。そして、MVも拝聴いたしました。門脇さんのMVはイラストで制作されたものや「ばいばい」(2020年12月発表の配信シングル)ではSNSで話題の11歳ロングスケート女子の内田日向さんが登場したりと観どころたっぷりですが、今回出演している男性はどなたですか?
宮世琉弥くんという同じ事務所の俳優です。今回のMVも私が一切登場しないという(笑)。
宮世さんでしたか。すごくカッコ良く踊られているし、彼をまとう透明のビニールみたいなものが動きを強調して綺麗ですよね。
あれはビニールみたいですね! ブワ~って風がかなりすごかったみたいで(笑)。
下からのアングルや走っているシーンもあって。それこそ青空もすごくきれいなので、楽曲のテーマと疾走感にとてもマッチしていました。MVで門脇さんからリクエストをしたこともありましたか?
宮世くんに出てもらうという話が出た時にぜひお願いしますと言って。宮世くんが「東京は」を聴いてくれているとうかがっていたので、そういうつながりもあってお願いしました。逆に女の子が歌っているのに男の子しか出ないMVってカッコ良いと思って、構成などは監督さんにお任せしましたね。でも、空がきれいとか疾走感を感じられるMVがいいなとは思っていたので、めちゃくちゃ良かったです。あと、ラストのシーンで靴だけになるんですけど、宮世くんが飛び立ったみたいな演出をしてくださっていたのがすごく良くて。ラストのシーンだけど、みなさんに一番観てほしいグッとくるポイントですね。
今、見どころを訊こうと思ったのに(笑)。
ポイントはその最後のシーンだからこそ全部観てほしいですね。
みなさん観てくれると思いますよ。そして、気になっていたのですが、もともとデビューシングルは配信で考えていたんですか? CDではなく、あえての配信なのかなと思って。
そうですね。CDというのは考えていなかったです。確かにCDもいいとは思うんですけど、いつかアルバムを出す時にCDにしたいという想いはもちろんあります。でも、今はこういうご時世ということもあり、届けやすいから配信シングルにしました。
配信だからこそ届けやすいという想いがあったんですね。では、最後に大きなターニングポイントを迎えて、2021年はどのように過ごしていけそうですか?
次の大きな目標が日本武道館でのライヴなので、武道館に向けてステップアップできるようにいろんな経験をこの一年でしていきたいと思います。今の自分が知らない景色を見たいですね!
取材:岩田知大
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配信シングル「トリハダ」2021年3月3日配信開始
Victor Records
カドワキサラサ:1999年、兵庫県生まれのシンガーソングライター。10歳でアコースティックギターを弾き始め、中学2年生でオーディションに参加した。落選してしまったが、その頃からオリジナルソングの制作を始め、ライヴでカバー曲とともに披露。本格的に音楽活動をスタートさせる。17年、18歳でライヴ会場限定のミニアルバム『You and I』を発表。18年にアルバム『雨の跡』をリリースし、神戸と東京にて初のワンマンライヴを成功させる。19年には20歳の誕生日に自主企画スリーマンライヴを神戸と東京で開催した。20年には5作を配信リリース。21年3月にメジャーデビュー配信シングル「トリハダ」をリースした。門脇更紗 オフィシャルHP
「トリハダ」MV