早乙女友貴「自分が信じているモノに
命をかけられるのって、素敵だな」~
舞台『陽だまりの樹』インタビュー

青年医師・手塚良庵と下級武士・伊武谷万二郎の友情を軸に、幕末の人々の“戦う”生き様を描いた人間ドラマ『陽だまりの樹』は、手塚治虫が自身のルーツを描いた作品としても知られる青春ストーリー。原作コミックはもちろん、アニメ、ドラマ、舞台とこれまでも多くの人々に愛されてきた作品だ。2021年版の舞台で手塚良庵を演じるのは、これが舞台初主演となる菅田琳寧(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)。そして伊武谷万二郎を演じるのは早乙女友貴。生命力溢れるふたりの青年はどんな物語を紡いでいくのか──本番に向けた思いを、早乙女が語ってくれた。
ーー現在はお稽古の真っ最中。
はい、始まっています。
早乙女友貴
ーー良庵役の菅田さんは今回が初舞台だそうですが、稽古場の様子はいかがですか?
彼はすごく真面目な方。熱心ですし、気になったことは積極的に自分から聞いてきてくれるし……でもまだお互い出会って間もないので、これから稽古をやっていく中でいろんなコミュニケーションが取れたらなと思っています。演出の樫田(正剛)さんは「とにかく元気よく行こう」って声かけをしてくださって、樫田さん自身も稽古場でとても明るくいてくれるのが嬉しいですね。僕ら役者陣も「今この世の中のことは一旦忘れて楽しい作品を創るぞ」って、みんなで稽古に集中できています。
ーー作品についての印象は?
まずもうこの作品自体、全てが見どころになっていると思いました。今の世の中にすごくリンクしていて……自分が生きる時代の“在り方”だったり、大事な人への思いだったりが時代を超えて力強く描かれているなと感じますし、それぞれのキャラクターもすごく個性的。見どころがたくさん詰まってると思います。
早乙女友貴
ーー漢方医が牛耳る医学の世界をもっと開かれた場にしようと情熱を持って医師道を切り拓いていく良庵たち蘭学医のプロフェッショナルな生き様や、その姿に武士としての自分の生き方を問い、新しい時代へと目を開いていく万二郎。そして、彼らを取り巻く人々の人間臭さ。時代劇ではあるけれど、今の私たちの感覚そのままで読み取ることができるドラマになっています。
そうですね。いつの時代でも人間は一人ひとりが確固たる思いや価値観をちゃんと持っているんだ、というテーマが強く伝わってきます。ストーリーは良庵と万二郎の友情が軸となってはいますけど、彼ら以外の人々もみんなそれぞれの覚悟を持って、様々に考えながら日々生きている。そのパワーをすごく感じていますし、決して堅苦しくなく、崩すところは崩して締めるところは締めて……と、この豊かな物語に座組みんなで力を合わせて臨みたい。今はまだそれぞれがどう自分の役にアプローチしていくか、どう互いの関係性を構築していくかっていうところを落とし込んでいる段階なので、まだまだ探りながらではあるんですけど。それぞれの色を出しながら、いい感じに混ざり合っていける空気は感じているので……うん、すべてはこれからですね。
ーーでは、早乙女さんの中での万二郎像とは?
「THE 武士」。ものすごく誠実で、ひたすらまっすぐで、ただ、世渡りはちょっと下手で……不器用すぎ、頭が固い(笑)。自分が信じている道を貫いていく、柔軟性のない生き方のスタイルが万二郎。でもそれが良庵と出会ったことによってちょっとずつ心が解けていったり、自分自身の考え方や幕府への思いというものも変化していくので、その辺も楽しみながら演じたいです。やっぱりあの誠実で真面目な生き様はとても魅力的だと思うので、お客様にもそこをストレートに伝えられたら。
早乙女友貴
ーー一方の良庵は医者としての信念や腕は確かで情熱家だけれど、賭け事や酒や女性が大好きで、ちょっとちゃらんぽらん。
ハハハッ(笑)。ほんと、万二郎と良庵は正反対な性格なんですよね。万二郎はひたすらに忠義の人。僕はあんな風に自分が信じているモノに命をかけられるのって素敵だな、と思います。
ーーご自身と共感する部分もありそうですが……。
いや、万二郎と僕とは真反対(笑)。僕は興味を持ったらもういろいろやりたいほうなんです。まずやってみて、自分に合うか合わないかを知り、そこから学びを入れていく。雑多に経験を重ねながら成長していきたいなと思うタイプなので。万二郎は現状維持、嫌いなモノは嫌い……やったこともないのに。それが偶然、良庵に出会ったことによって少しずつ影響を受け、今までやったことのないことへも目を向けていく。その過程が生き生きと描かれているので、僕自身も良庵との友情関係や万二郎自身の変化・成長を素直に体現したい。そもそも自分と同じ考えの人なんていないんですから、そこはわからなくてもしょうがない。実生活の自分もそう。考え方や生き方が違ってたって、お互いにお互いを尊重してリスペクトできる相手とは一緒にいることができますし、実際、仲良くなることも多い気がします。
早乙女友貴
ーー早乙女さんにとっては今作が今年1本目の舞台になります。
今この世の中の状況下で舞台をやることに対しては……不安がないと言ったら嘘になります。でもそのことばかり考えていても前に進めないので、僕たち舞台人は幕が開くことを信じ、できる限りの対策を練りながらお客様にいい舞台を観ていただけるように努めていくのみ。稽古場でもやはりいろんな制約はあるけれど、でも今は誠実にそれをやる。本当に本番開いたらラッキーだなって思うくらい、今は1日1日の積み重ねですね。だから……それはどの作品に対してもそうなんですけど、まずは「楽しむ」ことが大事。今は劇場にいても役者もお客様もやっぱりどこかで舞台に集中することが難しくなっているので、だからこそ楽しむことを忘れちゃいけないなって思うんです。なので意気込みはとにかく「楽しむこと」。余計なこと考えずに舞台を楽しむ。その一点です。
ーーシンプルイズベスト。客席の私たちもそうです。「楽しむ」ことに集中して、その場に居たいと思います。
僕たちは作品を届けること、表現をすることが仕事なので。去年は残念ながらその機会が少なくなってしまった分、今年はなるべく表現をしていけたら、お客様にひとつでも多くの作品を観て頂けたら……と思っていますし、舞台上と客席とでそんな幸せな空間をまた一緒に作っていきたい。一人でも多くの方に舞台を楽しんでいただけるよう、これからも魂を込め続けていきたいと思っています。
早乙女友貴
取材・文=横澤由香  撮影=池上夢貢

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