乃木坂46×『荒野行動』 画期的な配
信ライブスタイルを提案したバレンタ
インライブレポート

2月6日、7日、14日の3日間にわたって乃木坂46のバーチャルライブ『乃木坂46 LIVE IN 荒野 〜Valentine Special〜』がスマートフォン用人気バトルロワイヤルゲーム『荒野行動』内で開催された。
乃木坂46と『荒野行動』は2021年1月からコラボレーション中。乃木坂メンバーがあしらわれたアイテムをゲーム内で提供するなどの企画に加えて、同月にはアプリ内で観覧できるバーチャルライブ『乃木坂46 LIVE IN 荒野』を行っており、今回の『乃木坂46 LIVE IN 荒野 〜Valentine Special〜』はその第2弾となる。
そしてライブ自体は文字どおり「“バーチャル”ライブ」といった内容に。当日、オーディエンスは『荒野行動』内に用意された特設フィールドにアクセスし、ゲームで使っているアバター姿で、ゲーム内のフレンドと一緒、またはひとりで乃木坂メンバーのパフォーマンスを存分に楽しむことができた。
ライブに出演したのは齋藤飛鳥、松村沙友理、山下美月、与田祐希、賀喜遥香をはじめとした19人の選抜メンバーたち。オーディエンスがリアルタイムで入力する無数のコメントが弾幕のように飛び交うステージには彼女たちが歌い踊る映像が大きく映し出され、さらにその映像の前では齋藤、松村、山下、与田、賀喜をイメージした3DCGアバターが実写映像と寸分違わぬダンスを披露するという、まさに現実と非現実の間、拡張現実的な世界が繰り広げられた。
アーティストとオンラインゲームのコラボレーション企画というと、昨夏、トラヴィス・スコットや米津玄師が、ゲーム『フォートナイト』内でバーチャルライブを行ったことが記憶に新しいが、『荒野行動』と乃木坂46はそれらオンラインイベントをさらに一歩先に推し進めるかっこうに。しかも『荒野行動』らしさ、乃木坂46らしさがふんだんに散りばめられた、オリジナリティあふれる公演となった。
ライブ本番は大ヒットナンバー「インフルエンサー」でスタート。山下の「一緒に甘い甘い時を過ごしましょう」、松村の「楽しむ準備はいいですか?」の声とオープニングSE・OVERTUREののち、スパニッシュギターとパーカッションをフィーチャーしたイントロが流れ出すと、『荒野行動』の画面にはペンライトやロケット花火のアイコンが。これらを装備して、客席フロアを自由に歩き回りながらリズムに合わせてペンライトを振ったり、曲の一番の盛り上がりどころで花火を打ち上げたりと、単に映像が流れる画面を眺めるだけの配信ライブとは違い、実際のライブ以上のスタイルで彼女たちを応援できる演出がオーディエンス側にも施されていた。これも「“バーチャル”ライブ」を謳う、『荒野行動』✕乃木坂46コラボならではの仕掛けだろう。
さらに4つ打ちダンスロックナンバー「裸足でSummer」に続く、「Girls Rule」のパフォーマンス中には、客席フロアにプールが出現。オーディエンスは実際の乃木坂46のライブではとりわけファンのコールが熱いアッパーなナンバーをときに水の上をたゆたい、ときに全力で泳ぎながら鑑賞する、まず現実ではありえない観覧スタイルを提案してくれていた。
「『荒野行動』ハマってしまいますよね」と語る齋藤に、山下が「でも飛鳥さん、そんなにうまくないですよね?」と即座にツッコめば、返す刀で齋藤が「申し訳ないけど、ヤマ(山下)よりは上手です」「なんなら与田のほうがもっとヘタ」と、与田にパス。ボールを受けた当人は「私は逃げる専門なので気付いたら生き残れている」と、ゲームが上手いのか下手なのか、どうにも判じかね、またなんとものんびりとしたMCに続いてドロップされたのは、彼女たちと『荒野行動』のコラボレート楽曲「Wilderness world」だ。
衣装チェンジしたアバターの彼女たちが、ボトムヘヴィなドラムとベースと、その上に乗るド派手なシンセや加工しまくった声ネタが耳に残る、このトランスナンバーを歌い踊るあいだ、特設フィールドは花火大会会場と化す。普通の地面に戻ったフロアの上空にはいくつもの花火が打ち上げられ、それに呼応したオーディエンスもロケット花火弾を打ち上げて、ステージ上の彼女たちを盛り上げる。また落ちサビ直前、アバターたちはステージ上に現れたクルマに乗り込み、下手からステージ袖へと消えたかと思えば、瞬く間に上手からステージへと現れる、これまたバーチャルならではの演出でオーディエンスの度肝を抜いてみせた。
「Wilderness world」と意匠を同じくする、エレクトリックなダンスチューン「制服のマネキン」では、オーディエンスがリズムに合わせてジャンプする、いわゆる“推しジャン”をするたびにステージ上にハートマークが飛び交う演出や、またコールを送れるボタンが登場。本当のライブさながらの応援をすると、画面上の様子が刻一刻と変化する、やはり『荒野行動』✕乃木坂46らしい、インタラクティブなライブの楽しみ方を提案していた。
そして齋藤、松村、山下、与田、賀喜が次の楽曲がラストナンバーであることを告げるMCののちには、画面が音楽ゲーム仕様に変身。いわゆるスタジアムロックといった風情のたっぷりとしたリズムにあわせて乃木坂メンバーとファンがともに歌い、ハンドクラップを送りあえる「Sing Out!」のリズムに乗って画面をタップすると、ポイントが加算され、得点に応じて『荒野行動』内で使える、乃木坂46とのコラボアイテムがもらえるプレゼント企画が実施された。さらに客席フロアでライブを観ている自身のアバターはステージ上の乃木坂アバターと同じコスチュームに。彼女たちと同じダンスをする、いわゆる“振りコピ”をする姿を楽しめた。
昨年春に始まった新型コロナ禍以降、アイドルグループやロックバンドが無観客配信ライブを行うことはさほど珍しいことではなくなった。しかし、前述のとおり、たいていの配信ライブの場合、オーディエンスはPCやスマートフォン、タブレット上で繰り広げられるライブ映像をただただ鑑賞するほかなかった。
しかし『荒野行動』と乃木坂46はインターネットだからできる可能性、インタラクションを徹底的に模索。当日のオーディエンスたちはただの“視聴者”ではなく、彼女たちの楽曲やパフォーマンスに即応してなんらかのリアクションができる、ライブの“参加者”だった。『荒野行動』と乃木坂46は、より先鋭的で“リアル”、かつバーチャルならではの仕掛けを多数用意して、配信ライブの意味を拡張してみせていた。両者のコラボレーション企画は現在も続行中。それだけに今回のステージは今後の展開にも大きな期待をもたせてくれる内容となったと言えるだろう。
レポート・文:成松哲

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