BAD HOPや呂布カルマも出演する「凱
旋MC Battle Special アリーナの陣」
3回の中止から立ち上がり開催される
今、オーガナイザー怨念JAPが思うこ
ととは

凱旋MC Battleが開催される。近年フリースタイルダンジョンなどの知名度向上により、ポピュラーなカルチャーとして普及してきたMCバトル。もちろんその歴史は古く、多くのMCやDJがそのフローとともに紡いできた文化だ。そして今このコロナ禍におかれながらも圧倒的熱量で、その文化を絶やさず、その場をクリエイトし続ける男たちがいる。怨念JAPが手がける2021年2月23日にぴあアリーナMMにて開催される「凱旋MC battle Special アリーナの陣」もその一つだ。東西の超豪華な顔ぶれが揃うこのイベントに向けて、オーガナイザーの怨念JAPにその成り立ちと、意気込みを聞いた。
ーー最初に、「凱旋MC Battle」を開催したきっかけを教えてください。
始めたのが2017年だったかな。その当時は自分もMCバトルに出たりDJをやったりしていたんですけど、僕の同級生の友達がイベントを始めると話してくれて、それがきっかけになりました。僕も、それまでにイベント・スタッフの裏方として手伝うこともあって、出演者として表に立つよりも、裏方でイベントをやったり、アーティストのサポートをしたりする方が自分の性格にも合ってるし、むしろそっちの方に面白さを感じ始めたときだったんです。
ーー早い段階から裏方志向だったんですね。ちなみに、どういうところに面白さを感じていた?
みんなが共有して遊べるパーティーの場を作っている人の姿を見ていて、面白いなと思ったんです。それに、その時ーー2016年から2018年くらいーーって、ちょうどラップを始める人口が急激に増えた年でもあると思うんです。僕は当時21、22歳くらいだったので、自分の周りにいる20代の若いメンバーでMCバトルができたらめちゃくちゃ面白いんじゃないかなと思って。
ーー​実際に、動き出したのも早かったですよね。
とりあえず、「キャパシティがそんなに大きくなければ、多分できる」と思って、試しに始めてみたんです。最初の一年くらいはずっとは渋谷にあるFamilyでやっていました。150人くらいのキャパの箱で、それ以上入るともうパンパンです。
ーー「凱旋MC Battle」初回の手応えはどうでしたか?
最初から箱パンで入場規制が掛かったぐらいだったんで、「これはイケるんじゃないか」と思いました。
ーー​そこから、会場をVUENOSやO-EASTに移して、順調に規模を拡大していったというイメージです。
多分、外から見ている人からはトントン拍子に見えたかもしれないですけど、金銭的な部分も含めて、結構いろんな面で苦労しましたね……。キツかったです。
2010年くらいのUMBに姉と一緒に初めて行ったんですよ
怨念JAP
ーー​2017年から数えて今年が開催4年目になるわけですが、途中で「もう無理」と辞めずに続けていったわけですよね。怨念JAPさんを支えるモチベーションは何でしたか?
やっぱり、イベントに遊びに来てくれているお客さんや、ゲスト出演してくれた方からの声ですね。「めちゃくちゃいいいイベントだよね」って言ってもらったり、帰ってからもSNSで「今回の凱旋、すごく楽しかった」って言ってくれたり。イベントごとに反響もたくさんいただいて、その度に「もっと頑張ろう」って思いましたし、辞めようと思ったことは今のところ1回もないです。
ーーこれまで開催を重ねてきて、忘れられない回はありますか?
初めてO-EASTで開催したとき、実際にパンパンになった客席を見て「うわー」っと感動しましたね。それと、2019年の秋に恵比寿リキッドルームでやった時も感慨深かったです。僕、18歳まで長野に住んでいたんですけど、すごくヒップホップ好きの4つ年上の姉がいて、2010年くらいのUMBに姉と一緒に初めて行ったんですよ。その会場がリキッドルームだったんです。それがきっかけで「MCバトルも面白いな」と思うようになった。なので、リキッドルームでの開催は「9年越しに、ここでイベントをやっているんだ」と思ったんです。それと、2020年の秋に新木場STUDIO COASTで開催した時も、昔、長野から「第5回 高校生RAP選手権」を観に行ったことを思い出して時にジーンと来ました。
ーー​今回は、ぴあアリーナMMでの開催で、キャパシティも1万人規模になる。「凱旋MC Battle」のみならず、MCバトル・イベントとしても最大の規模ですよね。
はい。もともとは、去年の8月7日に開催する予定だった会場で。2019年の中頃に、(翌年1月に開催した)ZEPP DiverCityで開催する「凱旋MC Battle 東西選抜 冬ノ陣 2020」のチケットを売り始めたんですけど、10日間で完売しちゃったんです。それで、「このまま売り続けたとしたら、どこまで行けたんだろう?」と考えるようになった。イベントのキャパをどんどん大きくして行く中で、これならアリーナを埋められるんじゃないかと思って、徐々に準備を始めました。
怨念JAP
ーー​言うまでもなく、昨年予定していた公演は新型コロナ・ウイルスの影響で中止になってしまったわけですが、中止を決めた時はどんな心境でしたか?
実は、去年はイベントを3回中止にしているんです。一つ目は、去年の4月26日に開催する予定だった大阪ZEPP公演。これはすでに3,000枚のチケットが完売していたんです。3月には、これを全て返金する作業をスタートしました。その時は、「もしかしたら夏になれば、コロナも落ち着いてアリーナでやれるんじゃないかと」思っていた。でも、結局アリーナでの開催中止を決めたのが6月でした。その次に、10月にも大阪で開催しようと思っていたんですけど、結局、今の状況だと会場のキャパシティに対してちゃんとお客さんを入れることができないので、開催は厳しいという判断で中止にしました。
気持ち的には、結構メンタルに来るものがあったんです。特にアリーナでの開催に関しては。でも、とにかく「俺だけじゃないんだ」っていう風に思うようにしていました。イベント業だけではなく、飲食やファッション業界の人たちもめちゃくちゃ困ってるでしょうし、「自分だけ」と思うとどんどんつらくなるので、「みんな同じ状況だから」と気持ちを支えていましたね。必要以上にネガティブな方向に考えないようにしていました。
ーー​そんな中、去年は<MC BATTLE>という試みもあって、異なるMCバトルのオーガナイザーの方達が連続してイベントをオンライン配信するなどの取り組みをしていらっしゃいました。
はい。「凱旋MC Battle」の他に「真 ADRENALINE」と「U-22 MC BATTLE」という3つのMCバトルの大会があって。これまでも。それぞれ仲は良かったんですけど、手を取り合って一つのものを作るということはしてこなかったんですよね。みなさん、僕よりオーガナイザー経験も長いですし、改めて学ぶものもめちゃくちゃあって、勉強になりました。これまでMCバトルはあまり配信をやってこなかったのですが、初めて挑戦してみた。そのおかげで、配信方法の技術や、チケットの動き方に関するデータも知ることが出来ましたし、いいことしかなかったですね。
現時点で最高レベルの、22人のMCに出てもらうことが出来たと思っています
怨念JAP
ーー​今回の「凱旋MCBattle Specialアリーナの陣」は、晴れて大きなリベンジ・マッチが実現となるわけですが、今回の開催に関してはいつ頃から再び準備を始めたのでしょうか?
2020年の9月あたりだった気がしますね。当初は8月にやる予定だったアリーナ公演を延期すると発表して、次の日程を抑えようと思った時に、土日や祝日は全て埋まっていたんですが、2月23日だけ空いていたんです。それで、「この日だ」と思って。ただ、「もしもその時、まだコロナの状況が酷くてキャンセルすることになったとしても、会場費が掛かるけど、どうする?」と聞かれたんです。「今、ここでやると言わなかったら後悔するな」と思って、「やります」と返事しました。
ーー​会場の規模もそうですし、イベント自体の厚みから見ても「大きいものを背負っているな……」という感じがします。
アリーナ公演自体のプレッシャーは、なんだかんだ1年以上ずっと感じています。ぶっちゃけ、早く解放されたいですね(笑)
ーー​今回もとにかく出演者が豪華ですが、どのように決めていったのでしょうか。全方位、誰もが楽しめるようなバトルになるのでは?と楽しみです。
MCバトルの出演者に関しては、今までの凱旋の各大会で優勝したチャンピオンの方達に声をかけました。あと、百足、韻マン、FUMA no KTRたちは、彼らがいたおかげで次世代のMCバトルが盛り上がったという部分も大きかったので、今のバトル・シーンの立役者として入ってもらいました。それと、KING OF KINGSで優勝した呂布カルマさんらもいる。現時点で最高レベルの、22人のMCに出てもらうことが出来たと思っています。
ーー​全国から全世代の方が集結していますよね。怨念JAPさんが思う、今回のバトルの見どころは?
やはり今回は場所が場所なので。あの環境で、まだ誰も立ったことのないステージに立ったとき、みんなどういうパフォーマンスをするんだろう?と僕も楽しみなんです。あと、試合数も他のバトル・イベントよりも少なくて、かつ賞金100万円が用意されている。なので、みんな結構本気で気合いを入れてくるんじゃないかなと思っています。それに、これで「バトルに出るのは最後」、もしくは「しばらくバトルからは距離を置く」と言っているMCも何名かいるので、そういう人たちの気持ち的にも、多分「最後にカマしに行く」って思いがあるんじゃないかなと思っています。
ーー​ちょっと想像するだけで鳥肌が立ちそうですよね。今回はさらに、ライブのパフォーマンス陣においても豪華な顔ぶれが揃っている。
まずBAD HOPさんはヒップホップをアリーナのレベルに持っていった人たちだと思いますし、(キャンセルになった)横浜アリーナ公演が話題にもなっていたので、ぜひ今回、このステージに立ってもらえると嬉しいなと思ったんです。¥ellow Bucksさんに関しては、一昨年の終わりごろからずっと勢いがすごかったですし、僕自身もファンなので、出ていただきたいなと。WILYWNKA君は、一昨年のO-EASTでやった「凱旋MC Battle 東西選抜 夏ノ陣 2019」でもゲストライブに出てもらってるんですけど、彼とは同い年なんです。自分と同じ世代で、ライブで盛り上がるといえばやっぱりWILYWNKA君だなと思って、誘いました。Awichさんは、3,000枚完売したけど結局開催できなかったベイサイド大阪Zeppでの回に、ゲストライブとして出演してもらう予定だったんです。それもあって、今回また声を掛けさせてもらいました。今回、ライブで出てくれる4組のアーティストのファンの方の中には、「バトルはあまり…」という方もいると思うんですが、それでもちゃんと面白いと思ってもらえる自信はあります。イベントに来てさえくれれば、絶対に楽しめると思うので。
東京にいると西日本のMCを24人もまとめて見る機会もないと思うので
怨念JAP
ーー​今、さまざまなMCバトル・イベントが乱立している中で、”「凱旋MC Battle」は他のイベントに比べてここが違う!”というポイントを挙げるとしたらどんな点ですか?
まず、オーディエンスの熱気がえげつなくて、お客さんがこのバトルに賭けているアツさみたいなものをビシバシ感じるんです。あと、映像にもすごく自信があります。当日のバトルの内容は全て撮影していて、後からYoutubeに全試合をアップしているんです。その点に関しても、多分どこのイベントより力を入れてやっています。(※註:今回のアリーナ公演における全試合のYoutube掲載は予定しておりません)それと、普段はいつも、東西に分けてMCバトルをやっているんですよ。東日本と西日本、それぞれ同じ数のMCに出場してもらう。そういう形のバトルってなかなかないし、東西それぞれ24名くらいずつ出場してもらうんですが、東京にいると西日本のMCを24人もまとめて見る機会もないと思うので、そこも魅力の一つだと思います。
ーー​さっき仰ったように、今は百足さんたちの世代、いわば2000年生まれくらいの世代が非常に注目を集めいてる状況だと思うのですが、その下の世代の盛り上がりはどうですか?
本来だと、毎年のように各世代からいいMCが出てくるんですけど、去年はコロナの影響でイベントが止まってしまっていたので、そこも停滞気味なんす。僕自身、去年は若い子たちが出てくれるような小箱でのフリー・エントリーのイベントが全然できなかったので。
ーー​そういう、次世代MCのフックアップみたいなことも怨念JAPさん自身の使命として受け止めていらっしゃいますか?
そう感じていますね。特に、最近は「高校生RAP選手権」もあまりやってないじゃないですか。だから、なおさら、そういうことをやらないといけないんじゃないかと思いっています。ヤバい若手MCは絶対にそこらじゅうにいると思うので、彼らのことを知りたいと思いますし、彼らが活躍できるような場を設けたいなと思っています。今年はそういうアクションを起こす年にしたいと思います。
ーー​ちなみに、普段はどうやって全国のヤバいMCたちを見つけているんでしょう?
とにかく動画が上がっている他のイベントの様子を見たり、年に3、4回くらいは大阪にイベントを観に行っています。ここ最近はコロナの影響で行けていないんですけど、実際に足を運んで探していますね。
ーー​「凱旋MC Battle」を開催している大阪以外で注目しているローカルなエリアはありますか?
北九州には注目しています。小倉周辺で活動している”ベゲfastman人”というクルーがあって。音源もカッコよくて、おそらくメンバーにはバトルに出ている方もいるんじゃないかな。僕は百足のバックDJもやっていて、いろんな地方にも行かせてもらうんですけど、いつも沖縄は他の街と比べて全然雰囲気が違うんですよ。どのアーティストの方でも、すっごくいいライブをするんです。沖縄のクラブに行く時が一番新鮮でアツい気持ちになりますね。あと、東北の方でもイベントをやってみたいなと思います。かっこいい人は絶対にいると思うんで。
何かを賭けて闘う姿は格闘技にも通じるものがあると思っていて
怨念JAP
ーー​ずっと「凱旋MC Battle」を背負ってきた怨念JAPさんが思う、MCバトルの真髄とは一体なんだと思いますか?
まず、言葉ですよね。フリースタイルは、基本的に即興もしくは自分の楽曲から(リリックを)サンプリングして、それを一小節にまとめながら闘っていくわけですけど、MCバトルに興味がない方とか、少し見たことあるけどよく分からないっていう方も、スピーカーじゃなくてイヤホンやヘッドフォンをつけて聞いてみて欲しいと思います。そうすると、MCたちの言葉がダイレクトに響いてくるので。そして、あれだけいろんなラッパーの方々が、8小節という決められたルールの中で何かを賭けて闘う姿は格闘技にも通じるものがあると思っていて。負ければ何かを失うこともあると思いますし、勝てば自分より上の人たちすらもひっくり返すようなことも起こり得る。お金ももらえますしね。そこには面白さはもちろん、ストーリーもあるんです。ただそこに立って闘っているだけではなくて、知れば知るほど面白い背景があったりもする。たとえば、因縁の相手と10年ぶりの対決、とか。そういったところも知っていくと、より面白さが増して行くんじゃないかなって思いますね。
ーー​今回の開催における意気込みは?
音楽やイベントを生きがいにして働いている人ってたくさんいると思うんですけど、コロナ禍になってから、MCバトルとかヒップホップとか関係なしに、そうした人たちの生きがいやモチベーション自体が失われていっていると思うんです。さらにいうと、例えば会場に入ってくれている照明さんの人の仕事や技術職の人たち、イベントに関わる人たち全体の仕事も失くなってきている。そんな中で、「止めちゃいけないな」と思うんです。国のルールさえ守れば、僕はイベントごともやるべきだと思うし、挑戦しなかったり、挑戦できる場にも関わらず自分がそこから引いちゃってやらなくなったら、「ここでこんな形で終わるのもなあ」って後悔する気持ちもある。今は僕が率先して、今回の「凱旋MC Battle」を届けたいっていう気持ちだけですね。
ーー​アリーナへのステップも大きな一歩ですが、今回の挑戦が成功した後のヴィジョンもすでに見えていますか?
やっぱりこれまで東西で分かれてバトルを行ってきたので、もしこれが成功したら、武道館と大阪城ホールでやりたいなと思っています。それに、全国でもツアーを組めたら最高ですよね。
ーー​今は自信しかない?
そう思うようにしています(笑)。
取材・文=渡辺志保 Photo by大塚正明
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