Kradness

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【Kradness インタビュー】
自分で曲と歌詞を書いて歌うことに
ずっと意味があると思っていた

暗いトーンの楽曲が多い中で
「From now on」は明るくありたかった

『Memento』は都会的なアルバムであると同時にグッとくる瞬間が多くて。例えば「From now on」は勇壮なシンガロングをフィーチュアしていますね。

「From now on」は今回のアルバムの中では一番“ザ・EDM”なのかなと個人的には感じているんですけど、一曲はこういう曲を入れたいと思ってたんです。他の楽曲が王道的なEDMというよりは、昨今のダンスジャンルのいろいろなエッセンスだったり、民族っぽいエッセンスを入れたので、王道的なものも入れたいなと。原点回帰じゃないけど、自分が一番最初にハマったEDMが「From now on」のようなジャンルだったんです。今回は節目のアルバムということで、そういうものも入れたかった。同時に、みんなで一緒に歌えるような曲がいいと思って、『ワールドカップ』の閉会式とかに流れるような曲をイメージして作りました。

ライヴ映えすること間違いないです。「From now on」の歌詞はラブソングのようでいながら、ファンのみなさんに向けたメッセージとも取れるものになっていますね。

ファンもそうですし、周りで支えてくれる家族だったり、友人、スタッフさんといったお世話になっている人全員に向けられるものを…と思いながら歌詞を書きました。先ほどお話ししたように、今回は“死生観”というテーマがあって、死を連想させるような暗い曲が多い中で、「From now on」だけはすごく明るくありたいと思ったんです。“From now on”というのは“ずっとこれからも”という意味の言葉で、“10年間の中でいろいろなことがあったけど、これからもよろしくお願いします”という気持ちをファンや周りの支えてくれる人に伝えたくて、こういうタイトルにしました。でも、おっしゃっていただいたように、ラブソングととらえていただいても全然構わないです。それぞれが自分にとって大切な人への思いを重ねて聴いていただければ嬉しいですね。

「From now on」はアルバムのいいアクセントになっています。アクセントということでは、ストリングスを使ってダークファンタジーを思わせる世界を構築している「Pain(interlude)」をEDMの中に入れ込む辺りもさすがです。

『Memento』は前半がわりと気持ちが高揚するようなナンバーが並んでいて、後半はちょっと落ち着いた雰囲気になっていくんですね。アゲめな曲が続いてきたところに変化球を差し込むことで聴いてくれている人の意表を突くことができるし、ここで空気を変えることで後半へのつながりも良くなると思ったんです。そういう思考のもとに「Pain(interlude)」というインスト曲を作りました。

作家としての幅広さが活きましたね。さらに、『Memento』はエキストラトラックとしてGARNiDELiAのメイリア氏/toku氏が書いた「Burn up my life」とtilt-six氏のペンによる「ホシノアシアト」が収録されていることも見逃せません。

最初にアルバムを作るとなった時は全曲を自分で作る気持ちになったんですけど、10年間の集大成という意味では作家さんの曲も入れたほうがしっくりくると思ったんです。僕はシンガーとしての側面と、シンガーソングライターとしての側面の両方を育んできたので。それに、外のテイストも取り入れたほうがアルバムの幅が広がるというのもあって、今までお世話になった方の中でも特に好きな方たちに曲を書いていただきました。

2曲ともに上質ですが、特にストレートな8ビートを活かした「ホシノアシアト」は“おっ!”と思いました。

でしたら良かったです(笑)。こういうちょっと古い感じを活かしたものは“シンセウェイヴ”と言われるジャンルなんですけど、80年代くらいに流行ったのがリバイバルでちょっときていて、いろんな人が2020年にやっていたんです。シンセウェイヴのテイストを活かしつつドロップはFuture Bassにして、古きと新しきを融合させたかたちになっているのが「ホシノアシアト」かなと思います。この曲のドロップはエフェクティブな声になっているじゃないですか。そこは僕の声をサンプリングして、シンセっぽく波形をいじって加工していただいたんです。そういうアプローチも楽しかったです。

なるほど。先ほど“シンガーとしての側面”という言葉がありましたが、『Memento』は全編で聴ける良質なヴォーカルも大きな魅力になっています。

本当ですか? 恐縮です(笑)。自分の中では、歌はまだまだなんですよ。

えっ!? そんなことはないです。いい声をされていますし、歌唱力も高いですし、リズムの良さも随所で活かされているじゃないですか。

どうなんでしょうね? ただ、10年間活動してきて、今までのKradnessというヴォーカリストはわりとアップテンポのロックだったり、元気系の曲が多くて、いわゆるパワーヴォーカルみたいなスタイルを得意としていたんです。でも、最近聴くようになった音楽だったり、最近流行っているダンスミュージックだったりはボタニカルというか、生楽器みたいな音と音数の少ないシンセで成立させているものが多いんですよ。低音がドゥンドゥンくるような4つ打ちではなくて、あまりEDMとかに馴染みのない方にも聴きやすいものが主流になってきている。今の僕が提示したい音楽はそれに近くて、そういうものにフィットする歌となると、押し引きや緩急といったことを意識する必要があるんですよね。ここ最近はそういう技術的な面が昔よりはできるようになってきたことを感じていて、今回のアルバムで活かすことができたかなと思います。さっきも言ったように、まだまだですけど。

楽曲の世界観の深さと表現力に富んだヴォーカルが組み合わさることで、説得力に満ちた音楽になっていますよ。

そう言っていただけると嬉しいです。今回は自分で作った曲なので、ここを物語の切り替えポイントにしたいとか、ここでよりリズムを強調したいといったことを無意識で表現できたと思いますね。それが歌にも乗っかって、より表現力のある歌になった気がします。やっぱり自分で主旋律と歌詞を書くことによって生まれる相乗効果のほうが何倍も大きいと思うので。

カッコ良いトラックを作って、適当にメロディーを乗せてOKではなくて、アコギの弾き語りなどで表現するシンガーソングライターと同じ感覚で曲を作っていると言えますね。その結果、『Memento』はEDMという枠を超えて、幅広い層のリスナーが楽しめるアルバムになっているし。

ありがとうございます。“ザ・EDM”というジャンルに馴染みがない人にとってEDMはクラブシーンで流れているとか、パリピな人たちがノリノリで聴いているというようなイメージだと思うんですよ。でも、今のダンスチャートの音楽はすごく洗練されていて、ダンスミュージックに馴染みがない人も惹きつける魅力を持っているので、僕が『Memento』で提示したかったのは、そういう音楽なんです。だから、ぜひ聴いてほしいし、Kradnessがダンスミュージックへの間口としても機能するといいなと思っています。

機能することは間違いないと思います。では、『Memento』のリリースで幕を開ける2021年は、どんな一年にしたいと思っていますか?

今年も変わらずにがっつりと曲を作っていきます。今回アルバムを出したので、次はシングルだったり、数曲入りのEP的なものを作りたいですね。『Memento』は大々的に“生と死”ということを表現したアルバムになったので、次はもうちょっと小さな枠組みのテーマにしたくて。あとは、僕はもともとヴォーカリストとして10年活動させていただいてきたわけですけど、今後は作家としてのキャリアも積んでいきたいと思っています。自分が50歳、60歳になった時に今の声で歌えているとは思えないので、歳を重ねるに連れて他のヴォーカリストの方に歌ってもらえる曲を書ける方向に転向していきたいんです。もちろん自分が歌える間は歌っていきたいですけどね。そういう未来に向けた第一歩として2021年は楽曲提供とかもコンスタントに行って、作家としての実績を着実に積んでいけるといいなと思っています。

取材:村上孝之

アルバム『Memento』2021年2月17日発売 PONY CANYON
    • 【通常盤】(CD)
    • PCCA-04985
    • ¥2,800(税抜)
    • 【PCSC限定盤】(CD+DVD+グッズ)
    • SCCA-00102
    • ¥4,000(税抜)
    • ※PONY CANYONオンライン通販限定盤
Kradness プロフィール

クラッドネス:国内はもちろん、海外にも多数のファンを抱えており、特徴的なハイトーンヴォイスと、DJと歌唱を同時に行うというハイブリッドスタイルを武器に、EDM・POP・ROCKと幅広くプレイしている。2015年12月、デビュー以来隠し続けてきたビジュアルを解禁後、新たな活動としてファッションブランド『REMERA』を立ち上げ、プロデューサー・モデルとしても活動を始めた。さらに、DJ兼コンポーザーとして活躍する”Camellia”とのユニット“Quarks”を結成し、その特殊なプレイスタイルに磨きをかけ続けている。Kradness オフィシャルHP

「Lay」MV

「Diorama」MV

『Memento』全曲試聴XFD

OKMusic編集部

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