【INORAN インタビュー】
前作と2枚でひとつの作品として
仕上げたいという気持ちがあった
まずは自分を許してあげるとか、
他人を許すことから
今の時世は抜けられない長いトンネルがあるように感じて途方に暮れつつ、元に戻れないのなら新しい未来像を描かいないといけないと痛感する日々です。INORANさんは世の中の今後をどう展望されていますか?
世の中ですか? “変わったらいいな”ということもたくさんあるけど、自分が何かしたことで大きく変わることって少ないだろうなって。ただ、自分を想うとか人を想う、その気持ちは持っていたいし、伝えられればいいな、メモワールできればいいよね…とは思う。まずはそこからじゃない? 自分を許してあげるとか、他人を許すとか。自分に、他人に“ありがとう”と言ってあげるとか、“愛してる”と言ってあげるとか。そういうことを含みながら音楽を作れればいいなとは思います。そうやって人の心、自分の心が変化したことによって空気がきれいになったらいいなって(笑)。そういうことかな?
「Minutes to Midnight」にも《ボーダーラインを見直そう》《俺たちが作る/俺たちの時代なんだ》というフレーズがあり、今の時代にぴったりな歌詞だなと。旗揚げして何か大きなことをするのではなく、ひとりひとりが自分を慈しみ、他人を大事に想うことからしか始まらないというニュアンスでしょうか?
そうですね。綺麗事だけ言ってちゃ世の中は形作られないし、必要悪という人がいるわけじゃないですか。この2枚のアルバムの主人公というのはそっち寄りの、澱んでいるふうにはしているんですよ。光に向かってキラキラして飛び出していくみたいな人だとリアリティーがない。テレビの世界でも政治の世界でも、この世の中には汚れ役というのはいて、その人が本当の悪なのか悪じゃないのかは分からないわけですよ。この世界のそういったリアルな部分は、『Libertine Dreams』よりも深く表現できたとは思いますね。カスタマイズは自分次第というか。自分の生きる世界のね。軽く言えばトッピングでいいと思うんですよ。トッピングなんて自分次第だし。…かといって、そこまで深く考えて作っているわけじゃないんですけど(笑)。
前作に続きランディ・メリル氏がマスタリングをされていますが、その点についてはいかがですか?
“やっぱりさすがだなぁ”というのが実感です。『Libertine Dreams』の時も感じたし、今回もそうだけど、音の作る刺激がすごいよね。ミーハー的に言うと、ショーン・メンデスの新しいアルバムであったり、アリアナ・グランデだったり、自分のよく聴いているトレンドの作品を手がけていて。その人と自分の作品でまた一緒にできていることはすごく刺激になります。
世界基準のクオリティーですよね。あと、ジャケットのアートワークもこれまでにない新鮮さが感じられましたが、どういうオーダーをされたんですか?
いや、僕も新鮮に思いました(笑)。こういう画像とか写真とか、僕は直感で良し悪しを決めちゃう人なんです。でも、最初にデザイナーさんからこの案が出てきた時、自分の引き出しにまったくないものだったから“うーん…”と思ったけど、一日過ごしたらすごくこれがしっくりきたんです。これもやっぱり出会ったタイミングだし、“いいな”と思って。素敵なジャケットだと思ってますね。
黒い羽根が描かれていた『Libertine Dreams』との双子感があって、イマジネーションが掻き立てられますよね。
うん、デザイナーさんがそういうふうに考えてくれたと思います。
今作のリリース後はまた配信ライヴをされるのでしょうか?
したいと思っています。今のところ具体的な予定はないし、どんな表現でするのかはまだ決まってないですけど。
2回の配信ライヴをされて“見えてきた部分がある”と冒頭でおっしゃっていましたが、試してみたいこともあるのでしょうか?
何を試してみたいというよりは、画面越しでも想いがつながるようなパフォーマンスができて、それがより強く感じられるライヴをチームとして作れたらいいなとは思いますね。それは永遠のテーマだと思うよ。“もっともっと!”っていうね。有観客のライヴでもそうで、みんなとハグしたいわけだし。でも、ハグはできないでしょ? 全員とハグしたらいいのかというと、そういうものでもないけど、そのつもりでやるわけだし。映像の世界も一緒なんですよね。それが画面越しであろうと、観ている人が手を伸ばしたら掴めるようなものを作らなきゃいけないと思っています。
ライヴの延期・中止が続き、先が見えない中でINORANさんのこの素晴らしいアルバムに触れて、生きる活力を得ることができました。日々我慢したり大変な想いをされたりしているファンの方も多いと思いますが、大きな力になる作品だと確信しています。
日本のアーティストも海外のアーティストもコンスタントに新しい音楽を届けてくれている人はたくさんいるし、今はライヴをしていないアーティストもきっと準備をしてると思うから。状況が良くなったら、そのウェーブにダイヴできる時が来ると思うんだよね、ファンの人が。ミュージシャンだけじゃなくて、僕も一音楽ファンとして、そんな希望があったら乗り越えられそうじゃないですか? だから、“くたばらないで生きていこうや!”という感じですね。
取材:大前多恵
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アルバム『Between The World And Me』2021年2月17日発売
KING RECORDS
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イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP
「 Leap of faith」MV
『Between The World And Me』
全曲試聴動画