[Alexandros]川上洋平、史上初のZoo
mホラー映画『ズーム/見えない参加
者』について語る【映画連載:ポップ
コーン、バター多めで PART2】
パンデミックになって『ライト/オフ』とか『シャザム! 』の監督のデヴィッド・F・サンドバーグも、家で奥さんとふたりで過ごす生活を強いられてる中で、家の中だけで3分弱のホラーのショートフィルム『Shadowed』っていう作品を作ったんですよね。主演は俳優でもある奥さんで、セットや演出、編集とかも全部自分たちでやって。そのこじんまりとした感じも好みだったんですが、『ズーム』もそういう手作り感があります。
『ズーム/見えない参加者』より
■ホラー映画にはB級感のある笑いが欲しい
『カメラを止めるな!』とかは、低予算を逆手に取ってアイディアで勝負したのが良かったわけで。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』も低予算ならではの良さがありましたよね。あれは続編が作られましたけど、ああいう映画はヒットしたからといって、予算をかけた続編を作らない方が良いと僕は思ってます(笑)。
あと僕は、ホラー映画にはB級感のある笑いが欲しいんです。『ズーム』も、交霊会に招かれた霊媒師の人がいきなり画面から消えた時の「接続のせいじゃない?」ってやりとりだったり、お約束みたいな展開も結構あって。お面を顔認証機能が認証するシーンとか、「なんでそのお面やねん」って感じで笑いたいけど笑えなかったり。そういう安っぽさも含めて楽しめました(笑)。
『ズーム/見えない参加者』より
■ただ怖がらせることを突き通している方が潔い
日本の作品でいうと、昔『怪談新耳袋』っていう1話5分くらいのホラードラマがあったんですけど、それも良くて。5分っていう短さなんで「あれは何だったの?」ってもやもやする時間もないくらい、ただ怖いだけでパンッて終わる。そのスピード感が良いんですけど、『ズーム』はその映画版みたいな感じだと思いました。
でも無宗教の日本人にとっては、神とか悪魔ってあまり馴染みがない。だから『ヘレディタリー』とか『ミッドサマー』とかは、よくわからない気味の悪さがあって。そういう場合、僕は「神様って良い存在じゃないんだ?」とか思って、圧倒されちゃったりします。魔女とか悪魔が相手だと、何を考えてるのかとか、そもそも感情があるのかないのか想像もつかなくて。だからその存在には感情移入できないし、ただただ恐れおののくって感じで楽しむのは、海外のホラー映画の醍醐味ですよね。
『ズーム』も、その何かを起こしてる正体が霊なのか霊じゃないのかもわからなくて、その正体が明かされない。「これって誰かが作り上げてるの? 何なの?」っていう不気味さがあります。説明できないものが相手だとやっぱり怖いですよね。いくら途中までおもしろくても、最後の最後で異星人の顔や化け物の姿が出てきたりすると、僕は冷めちゃうんですよね(笑)。最後まで何も明かされないところも僕は好きでした。
僕が今のところ一番好きなホラー映画は、やっぱり『イット・フォローズ』ですね。心理的にすごく怖い。音楽をディザスターピースって元々ゲーム音楽をやっていた人が手掛けてるんですけど、いかにも怖がらせるようなおどろおどろしい曲じゃなくて、シンセが入ったアンビエント系で、神秘的な雰囲気もあるんですよね。それもあって、ちょっとキューブリックっぽいサスペンスタッチも出ていて。形容しがたい怖さをまぶしてくる。
僕は霊感は全くないので、実際に何か霊的な体験をしたことはないんですね。だからこそホラー映画が好きなのかもしれないです(笑)。実際に怖い体験をしてる人は、気軽にホラー映画を楽しめないのかもしれない。
取材・文=小松香里
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