L→R SHOUYA(Ba)、SYUTO(Pf)、YAFUMI(Vo)、SEIJI(Dr)、KAZUKI(Gu)

L→R SHOUYA(Ba)、SYUTO(Pf)、YAFUMI(Vo)、SEIJI(Dr)、KAZUKI(Gu)

【LAID BACK OCEAN インタビュー】
パンクロックから始まった俺が歌う
繊細な歌を俺自身が聴きたがっている

俺が歌う繊細な歌を
俺自身が聴きたがっている

DISC1の10曲目「PATIENT CITY」(色+色 mix)。これは2020年の楽曲ですから最新曲のひとつと言えると思うんですけど、ほとんどプログレみたいですよね。ラップあり、女性ヴォーカルあり、でもしっかりと一曲にまとまっている。LAID BACK OCEANサウンドのひとつの到達点と見ることもできると思って聴かせてもらいましたよ。

うん。それを成立させられるようになったことで、LAID BACK OCEANを10年間やってきた意味があるって感じますね。細かい感情を表現するにはやっぱりちょっと複雑な構造が必要になってくるんですよ。LAID BACK OCEANの楽曲はよくテンポが変わるし、転調もするんで(笑)。でも、それは必然なんです。それが何なのかはまだ模索中なんですけど。

転調したり、ひとつの楽曲内でテンポが変わったりするのは、それが必要だからそうなっているということですね?

やっぱり必然性があるんですよ。そこで転調するのも、テンポが変わるのも。もちろん音楽は複雑になればいいというものでは絶対にないので、なぜそうするのか…そこをずっと考えていくんでしょうね。

今“音楽は複雑になればいいというものではない”とおっしゃいましたが、DISC2の6曲目に「COLOR COLOR」という新曲が収められています。これがコットンのようなシンプルなサウンドでして(笑)。洋服に例えるとすると、これまでLAID BACK OCEANは10年間かけて、本革や化学繊維などさまざまな素材を駆使して洋服を作れるようになってきたと思うんです。でも、10周年記念のベスト盤に唯一収められた新曲がさらし木綿で作ったシャツのような、ものすごくシンプルなものになったというのは、すごく興味深いことで。

常に“複雑にサウンドを構築していくだけじゃねぇんじゃねぇの、音楽は?”というのがあるんですよ。…うん、そのYAFUMIが常ににらみを利かせてますね。KAZUKIとセッションしてると、どうしても細部にこだわっていっちゃうんで。バンド内でアレンジして、ミックスまでやってしまうと、外部の人が一切関わらないじゃないですか。そうするとね、暗い部屋にふたりでこもることも多くなるんで(苦笑)、そこではにらみを利かせてます。“そこは失ってはいけない”という意味では、「COLOR COLOR」という曲を入れることができ、奇しくもアルバムのタイトルに冠することができたのは、自分の中では気持ちが良いというか、良かったと思ってますね。

DISC2の最後には「pray_music」という未発表曲が収められていて、とてもシンプルで柔らかな楽曲なんですが、これにも「COLOR COLOR」に込めたものと同じ想いがありますか?

…コロナ禍がちょっと影響しているかもしれないですね。“何を伝えたいのか? 何を残したいのか?”というところで、俺はできるだけ繊細な歌が歌いたくなってるんですよ。パンクロックから始まった俺が歌う繊細な歌を俺自身が聴きたがっている。そこは同時に自分に課してる命題ですね。

「COLOR COLOR」は歌詞もいいですね。これは歌詞の中の物語がはっきりと分からないところがとてもいいと思います。何か不穏なことが起こった感じは若干するんですけど、かと言って殺伐とはしていない。想像の余地があるんです。

いいですよね(笑)。何かを失ったことがある人が、そこから立ち上がっていく時に何を思うかというのは、LAID BACK OCEANの歌詞のテーマのひとつなんですけど、そこの表現を自分の中でコントロールできるようになってきたところはありますね。そして、コロナ禍という事態になり、視点がはっきりしてきたというか。戦後の高度成長期に文壇が盛り上がって小説家がグッと力を蓄えていった時期があるって本で読んだんですけど、共通の話があるということは表現をしている人にとってはアドバンテージで、それを語らなくても共通の悲しみを認識するのは、生きている時に何度も起こることではないと。そういう意味では、おそらくここから数年は自ずとその時代に入っていくんだと思うんです。その時に俺が20年間やってきたこと、LAID BACK OCEANで10年間やってきたことが、誰かの支えになったり、生きる上でのヒントになったりするようなことがあるといいなというのは、このベストを作っている時に徐々に付加されていった意味合いなんでしょうね。だから、「COLOR COLOR」「pray_music」が大事なところに置かれたのかもしれないですね。

DISC1の13曲目「BEGINNERS」の歌詞には、下の世代への継承といった意味合いがあります。これも2020年に発表されたものですけど、自分の想いを他の誰かに継承したいという気持ちが昨年辺りから出始めていたんでしょうか?

出始めているんでしょうね。長く音楽を続けてきて感じ始めていることかもしれないです。何かを残したくなっているのかもしれない……おじいちゃんかよ!(笑)

でも、表現者はたぶんそういうふうになっていくんじゃないですか?

そうですね、きっと。これが一度目の人生なので本当のところは分からないですけど、“今、何が起きているか?”と訊かれて、心の赴くままに答えるのであれば、そういうことでしょうね。

ということは、今年でLAID BACK OCEAN は10周年を迎えたわけですけど、これから先はそこを見据えていくということになるでしょうか?

うん。やっぱり生きるということを模索していくための何か…その中での道具として音楽は大事なものだし。ただ、時代も大きく変わるでしょうから、自分の心の中でどういうことが起こるのかは分からないですけどね。

でも、その心の中をその都度、自らの表現に落とし込んでいくんでしょうね。

そうですね。自分を探求してくことと、社会と自分の接地面を考えていくということをやっていくんでしょうね。

分かりました。そして、ベストアルバム『色+色』がリリースされますと、その後、2月6日に『10th Anniversary Streaming Live“COLOR COLOR”』が決まっているわけですが。

配信ですけどね。今回はYUTAROに…

そう! このライヴは元メンバーのYUTAROさんが映像監督という。YUTAROさんの脱退は喧嘩別れとかではないと理解していたものの、こういうかたちではっきりと示されると何か安心します(笑)。

あははは。奴も昨年くらいから映像ディレクターのほうに舵を切ってて…あいつらしいと思うのが、きっぱりとプロフィール欄から“ミュージシャン”を消し去ってるんですよ(笑)。清春さんのやシシドカフカさんのバックとかで弾いてるんですけど、自分の名刺からは“ミュージシャン”を外してるんです。そういう覚悟を見て、クリエイティブなことを話せる時期なのかなと。とはいえ、ちょいちょい会ってはいたんですけどね(笑)。

そうでしたか(笑)。アーティストにとって配信は、少なくとも向こう1〜2年は欠かせないものになるでしょうから、映像の役割はこれからどんどん大きくなるでしょうし、そんな中で気心の知れた人と一緒にやれるというのはすごくいいことでしょうね。

めちゃくちゃいいスね。“あぁ、理解してんなぁ”って思いますよ(笑)。俺が何を表現したいかをめっちゃ理解してくれている。セットリストを見るだけで意図が分かるんですよ。“ここはこの曲じゃないとあり得ないよな。ということは、俺はこういうことをやればいいんだろ?”って言われて、“はい。そういうことです”と(笑)。…いやぁ、それはねぇ、すごく嬉しいスねぇ。「COLOR COLOR」なんかも“俺は本当にこの曲はいいと思う”って言ってくれて、それもすげぇ嬉しかったし。“今、YAFUMIがLAID BACK OCEANをやっている意味がすごく分かる”って言ってれて。…うん。時間はかかりましたけど、純度の高いものを提供できるようなところにまで持ってこれたんで、そういうところでいいものを残していけたらいいなって。

“純度の高いもの”ですか。そこで言うと、こうしてベストアルバムが出る時はよく“入門編”と言われますし、実際この『色+色』にもそういう惹句がありましたけど、これは入門編にしてはかなり内容の濃い作品になったと思いますよ。

あははは。そうかもね。

もちろんビギナーは聴けないという意味ではなくて、ともに進んできたリスナーがバンドの軌跡を確かめることができるようなベストアルバムかなと思います。

そうですね。もちろんまとめではあるんで分かりやすくそこは表現されているんですが、残るものとして30曲を選んだところはすごくありますね。表現物として出すべきものになりましたね。

取材:帆苅智之

アルバム『色+色』2021年2月3日発売 POWER PLAY MUSIC
    • 【特別BOX仕様 限定盤】(2CD+DVD)
    • DDCZ-2270
    • ¥8,600(税込)
    • ※オンラインショップ限定販売
    • 【通常盤】(2CD)
    • DDCZ-2271
    • ¥3,500(税込)

『10th Anniversary Streaming Live“COLOR COLOR”』

2/06(土) 開場19:00/開演20:00
https://w.pia.jp/t/laidbackocean-pls/

LAID BACK OCEAN プロフィール

レイド・バック・オーシャン:2010年12月活動をスタート。ピアノ、ギターサウンド、プログラミングを駆使し、攻撃的なロックや繊細なアレンジのミッドテンポやバラードを鮮やかなコントラストで鳴らす5 人組ロックバンド。幾度かのメンバーチェンジを経て、SYUTO(Pf)、SHOUYA(Ba)が加わり現体制となる。また、YAFUMI(Vo)は役者、モデル、文化人とのトークイベントへの出演など幅広い分野での活動を行なっており、マルチな才能を発揮。KAZUKI(Gu)をはじめ、他メンバーも他アーティストのレコーディングやライヴのサポートとして参加。LAID BACK OCEAN オフィシャルHP

OKMusic編集部

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