世界最高のギタリストのひとり、
ジョン・マクラフリン率いる
マハヴィシュヌ・オーケストラの
『火の鳥』
本作『火の鳥』について
冒頭のタイトルトラックでは印象的なリフの繰り返しの上にマクラフリンのギターソロとグッドマンのバイオリンが天空に飛び跳ねる火の鳥のイメージを奏でるが、そんなに早弾きはしていないだけに、プレイのすごさが余計に際立っている。2曲目の「マイルス・ビヨンド」はマイルスに敬意を表したナンバーで、途中は各プレーヤーがかなり自由にプレイしている。後半のマクラフリンのギターは、ジェフ・ベックのような弾き方をしている。ヤン・ハマーが前面に出る曲については、70年代の中盤にもなるとマンネリ気味になってしまうときもあるが、まだこの頃は鮮度が良い。
アルバムの前半部分はプログレファンにも満足してもらえるプレイが続く。マクラフリンのアコースティックギターが冴え渡る「サウザンド・アイランド・パーク」や現代音楽のような「ホープ」といった小品もあり多彩な展開となっている。
アルバムの白眉は10分近くに及ぶ「ワン・ワード」で各楽器のソロをはじめ、高いテンションを保ったままピークを迎える。中盤に登場するコブハムのドラムソロは凄まじく、それが終わった後は、メンバー全員でカオスを迎える。また、「オープン・カントリー・ジョイ」ではアメリカ出身のグッドマンがフィドルっぽい演奏を披露し、タイトル通りカントリー的な演奏を披露している。
本作はグループにとっては一番のヒット作(全米チャート15位、全英チャート 20位、日本でも17位と健闘した)となり、ジャズのリスナーだけでなくロックファンにも受け入れられる作品となった。本作の後でメンバーが変わり、第2期マハヴィシュヌ・オーケストラがスタートするが、僕にとって印象深いのは、やはり『内に秘めた炎』と『火の鳥』の2枚のアルバムである。
TEXT:河崎直人