中島愛

中島愛

【中島愛 インタビュー】
自分自身と向き合い、紡いだ、
十編の“緑”の物語

歌に集中したことで自分と向き合い、
次への扉を開くことができた

そうして緑と中島愛のシンクロをしっかり提示したあとは、より自由度の高い曲たちが来て、「メロンソーダ・フロート」や「ハイブリッド♡スターチス」なんかは80年代アイドル好きの中島さんにはたまらなかったのではないかと。

“「メロンソーダ・フロート」はファンとして買わせてほしい!”って言っちゃったくらいアイドル好きとしては嬉しい曲ですね。テーマは“青春”だけど青春ド真ん中にいる曲ではなくて…味とか匂いによって不意に過去の景色へと引き戻される時ってあるじゃないですか。そんな“大人になって歌う青春”なんですね。メロンソーダ・フロート自体にもノスタルジーなイメージがあるから、そこを組み合わせてすごくいいアイドルソングになったと思いつつ、自分がアイドルじゃないのが惜しい!(笑) 逆に「ハイブリッド♡スターチス」は青春じゃなく、私と同世代の女性が“もう恋とか別にいいかなぁ”って開き直ってたのに、急に恋に盲目になってしまう感じを書いてほしいと、清竜人さんに依頼したんです。そういう瞬間の女子ってすごく可愛いし、清さんの提供曲ってハートがトレードマークみたいになっているから、“私も仲間に入りたい!”と思って歌詞には全フレーズにハートをつけてもらいました。

ハイブリッドスターチスの“お茶目”という花言葉そのものですよね。コーラスも可愛いし。

そうなんですよ! コーラスが肝になっていてメルヘンな感じ。ただ、どのくらい甘さを足し引きするかはちゃんと考えなければいけないんで、レコーディングの時に“ここはしゃくったらやりすぎ?”とか“むしろ低く行ったほうがいいんじゃない?”とか、フレーズごとに細かく清さんと話した記憶があります。

しかし、5曲目の「髪飾りの天使」を挟んでの3曲は情緒変化が激しすぎじゃありません? 木琴の響きが可愛らしい「粒マスタードのマーチ」からソウル/ディスコな「窓際のジェラシー」で突然アグレッシブに弾けて、なのにインナースペースを淡々と泳ぐ「ドライブ」で一気に落ちるという。

そこには理由があって…まず「粒マスタードのマーチ」は嬉しくも悲しくもない日常のイメージですね。休日はダラダラするけど、普段はパリッとしてる人が食べてそうなものということで、曲を作った宮川 弾さんから粒マスタードが出てきたんです。そこで何にも惑わされず、“淡々と生きていくぞ!”と決意したものの“いや、無理。そこまで達観できる年齢じゃなかった!!”って嫉妬に塗れる姿を描いたのが、直後の「窓際のジェラシー」なんですよ。英語に“green-eyed monster”っていう嫉妬を意味する言い回しがあると知って、緑をテーマにしたアルバムにはちょうどいいと思ったんですね。私の中にも“なんで私はあの子みたいになれないの? うまくやれないの?”ってしょぼんとしてしまう自分もいるし、そういう側面を曲にしてみたことはなかったので、嫉妬をポップに変えたいというテーマでRAM RIDERさんにお願いしました。

そんなネガティブな面があるとは意外です。

ファンの方には、すでにバレてる気はしますけどね。私、結構ネガティブで、98パーセントの“虚しい”と1パーセントの“楽しい”、1%の“美味しい”でできてる感じですから(笑)。ほんと1秒前に発した言葉も気に病むタイプなんで、そんな自分を変えようと頑張ってきたけれど、最近“変わんないな”ってことに気づいて。だったら、そのままを受け入れて、他の方に書いていただくことで客観性がプラスされれば、ちゃんとポップスになるかなと思って作ったのが「ドライブ」なんです。

先ほどおっしゃっていた、“心に張った藻”ですね。

はい。“楽しい”“嬉しい”“寂しい”“悲しい”とかは、今までも歌にして表現してきましたけど、ただ“虚しい”という気持ちを歌ったことはなかったなぁって。というのも、自粛期間中、私、すごく落ち込んでしまったんですね。でも、それをSNSで発信したら引っ張られちゃう人もいるかもしれないって躊躇した時に、歌だったらフィクションのかたちを借りて吐露してもいいんじゃないかと思ったんです。それなら同世代で、以前にもご一緒したことのあるtofubeatsさんにお願いしようと。

そして、ラストの「All Green」は聴くだけで心励まされる名曲ですが、曲を提供した葉山拓亮さんは小学生の頃からのファンだそうで。

そうなんです。当時からhiroさんとw-inds.の大ファンで、もちろんアーティストさんの声にも助けられてきたんですけど、葉山さんの内面を掘っていくような歌詞に、多感な思春期はすごく救われたんですね。デビューしてからも葉山さんに曲を書いてもらうことが目標で、もっと歌がうまくなってから、ちゃんと何かを成し遂げてから…と考えていたところ、5枚目のアルバムで原点に返るというのを節目にオファーさせていただくことにしたんです。本当に憧れの方なので、初めてお会いした時は緊張のあまり直視できず、肩のあたりのカーディガンの模様をずっと見ながら話してました(笑)。夢が叶ってすごく嬉しくて。そこでお願いした曲のテーマが“前進”だったんですよ。“All Green”というタイトルは先にこちらでつけていたんですけど、これ、ロケットとかが発射する時のゴーサインなんですね。要は“進め”という意味で、それだけ大ファンだった方に“君はこれからも進め”と言われたら、きっと私は進んで行けると。そしたら葉山さんのほうから“今の世相を歌詞に織り交ぜたいですか?”と訊かれたので、“織り交ぜたいです”と答えた結果、このような詞をいただきました。

当たり前が当たり前でなくなった今の状況が歌詞に落とし込まれていますよね。それにしても《前触れも無いまま 乾いてゆくこの世界》とか、本当に表現が素晴らしい!

曲が届いた瞬間、泣いちゃって! 毎回泣いちゃって覚えられないっていうくらい胸に刺さりましたね。“こんな詞が来ちゃったら、もう前に進みながら歌うしかない!”って、ほんとに勇気をもらいました。そうやって今まで以上に自分の意見をどんどん出しながら作っていったアルバムなのに、いい意味で自分のアルバムじゃないみたいな感じがするんですよ。自分の顔って自分では直接見られないのに似ていて、“あっ、みんなから見えてる私ってこうなんだ!?”って感じですね。私、人からの評価を正直に受け取れないタイプなんですけど、これだけの作家さんが私の話をすごく真剣に聞いて、“あなたに似合う服はこれですよ”って着せてくれたってことで、すごく自信が持てた気がします。

今回は10曲全て綿密な打ち合わせを重ねながら、それぞれ作家の方々の目を通して描かれていますからね。

そこは狙いでもあったんです。自分で曲も歌詞も一切書かないことに最初は迷いもあったんですが、シンガーとして歌に集中できたことで次への扉を開けたというか。作家さんたちのクリエイティブなパワーにも刺激されましたし、ヴォーカルに集中したことが結果的に今の自分と向き合うことにつながったので、それが一番の収穫かなと。

では、今作のキャッチコピーに“いまこそ私は、あなたと向き合いたい”とありますが、この“あなた”とは自分のこと?

そうです。今まで出会ってきた全ての人とか、いろんな“あなた”が当てはめられますけど、やっぱり自分ですね。いろんな場所に行って、いろんな人と話している時のそれぞれの自分と向き合うっていう感じ。2017年に活動を再開してから“とにかく活動していることを知ってもらわなければ!”という気持ちに掻き立てられて、矢継ぎ早に進んできたけれど、その復帰キャンペーンの最後が今回のアルバムになる気がしてるんです。なので、次からは変に気張らず、ちゃんとひとつひとつ味わってマイペースに進むということを勇気を出してやりたいですね。「粒マスタードのマーチ」で歌ってるみたいに、淡々と進む中で生み出されるものを無理なく追っていくのが、2021年の自分にとってはいいんじゃないかな? アルバムのライヴも急がず焦らず、みなさんにじっくり聴いてもらってからでもいいし…でも、必ずやりたいと思っていますから!

取材:清水素子

アルバム『green diary』2021年2月3日発売 FlyingDog
    • 【初回盤】(CD+Blu-ray)
    • VTZL-182
    • ¥5,000(税抜)
    • 【通常盤】(CD)
    • VTCL-60543
    • ¥3,000(税抜)
中島愛 プロフィール

ナカジマメグミ:6月5日生まれ。A型。80年代アイドルが大好きな、レコードマニア。2007年に『Victor Vocal & Voice Audition』にて最優秀者に選ばれ、TVアニメ『マクロスF』にて声優・歌手デビュー。09年1月にシングル「天使になりたい」にて個人名義でのリリースをスタート。同年の『第3回声優アワード』にて歌唱賞を受賞。その後、歌手活動と並行して『セイクリッドセブン』(藍羽ルリ役)、『君のいる町』(枝葉柚希役)、『ハピネスチャージプリキュア!』(愛乃めぐみ/キュアラブリー役)など数多くのTVアニメでヒロイン役を射止める20年9月には、これまでに中島愛がキャラクター名義で歌唱した楽曲を集めた、キャラクターソング・コレクション『FULL OF LOVE!!』を発表。中島愛 オフィシャルHP

「GREEN DIARY」MV

『green diary』クロスフェード

OKMusic編集部

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