『DEEN』に宿るDEENらしさと
タレント集団、ビーイングの威信
シティポップ、アーバンポップの萌芽
《三人でよく来た映画館/いつからか苦しかった/少しずつ君の瞳に心奪われてた》《君が誰を見つめているのか/気付かないはずもなく/いっその事 なければよかったとさえ思う友情》《いつかきっと…/夢の終り見届けたい 叶うならば/だけど今は やり場のないこのせつなさ/何に叫ぼう》(M4「いつかきっと…」)。
《髪を切り大人びた君は 3年前とちがう/淋しさの分だけを 強がったおさない恋》《君に手を振る交差点の向こうの/あの人は Boy Friend?/運命的な出会い信じた僕/光るリング見つけ消えた DAY DREAM》(M10「恋が突然よみがえる」)。
これもまた私見で…と前置きするが、池森が書く等身大というか日常的というか──言葉を選ばずに言うと、情けなさ全開の歌詞もメロディーとの相性がいいように感じる。若干、享楽さがあるサウンドの方が情けなさと切なさが際立つように思うのだ。
このように、アルバム『DEEN』は織田哲郎提供楽曲とDEEN自身が手がけたナンバーを“ビーイング・オールスターズ”とも言うべきアーティストが支えているという作品であるわけだが──タレント集団、ビーイングを指してそう言うのも憚られる話ではあるが──とりわけ、その先見の明を素晴らしく思うのは、アルバムの半数をDEEN自身の楽曲としたところではあろう。現在の彼らの音楽性はまさにその延長線上にあるタイプである。この度、DEENはジャパニーズ・シティポップ・カバーアルバム『POP IN CITY ~for covers only~』をリリースしたのは、アルバム『DEEN』から彼らが自らの音楽性を研ぎ澄ませ続けてきた結果なのである。
TEXT:帆苅智之