祝賀のためのスペシャルステージ、「
ミュージカル『刀剣乱舞』 五周年記
念 壽 乱舞音曲祭」公演レポート

2021年1月9日(土)に東京ガーデンシアターにて開幕した、ミュージカル『刀剣乱舞』の五周年を記念する大型公演「五周年記念 壽 乱舞音曲祭」は、2015年のトライアル公演から5年間に渡って上演され続けてきた刀ミュがファンへと贈る新たなプレゼント。これまでミュージカル本公演とは別に開催されてきた「真剣乱舞祭」「歌合 乱舞狂乱」とも異なる、祝賀のためのスペシャルステージだ。また、今回は長距離の移動が難しい現状の中でもより多くの観客に楽しんでもらえるようにと、全公演配信というスタイルも導入。回替わりの演出も複数用意されているため、本レポートも全19公演中の「ある日の1本」(※膝丸役 高野 洸出演回)として伝えていきたい。
※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

オーケストラのチューニング音が鳴り、静かに会場の空気が変わっていく。まずは浦島虎徹(糸川耀士郎)と日向正宗役(石橋弘毅)が現れ、“光る棒”の点灯・消灯について元気にレクチャー。観客と一緒に実際にミニナンバーに合わせての練習を経て──いよいよ公演の幕開けだ。
最初に登場したのは三日月宗近(黒羽麻璃央)。艶やかなアカペラの歌声が響き渡る。続いて現れたのは小狐丸(北園 涼)。2振りのデュオでしっとりとした空気が漂う。その空気を断ち切るかのように「ここぞ!」と光る棒ONの合図と共に加州清光(佐藤流司)らが踊り出る。グッとアガる客席。さあ、思う存分この時間を楽しもう!
  (c)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
冒頭の三日月宗近の「印象深い物語ばかりだったな」という言葉に象徴されるように、1部はミュージカルナンバーを中心に、これまでの出陣を振り返りながら、各公演を彩ってきた楽曲が披露されていく。
ワイドなステージ幅をほぼ使い切るシンプルな階段状のステージと、様々な季節や時間で移りゆく空の情景を映し出すバックスクリーン。その光景にふとトライアル公演のステージの様子が……広くて真っ白な階段の上で、全力で必死に演じていた5年前の阿津賀志山異聞メンバーの姿がよみがえるよう。そうだ、すべてはそこから始まったのだ。20振りの刀剣男士たちが主のために歌い踊ってくれている目の前のこの舞台には、刀ミュのすべてのステージの思い出が透明なレイヤーとして幾重にも積み重なり、胸高まる“今”となっているのだ。
  (c)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
例えば蜂須賀虎徹(高橋健介)・長曽祢虎徹(伊万里 有)・浦島虎徹の3兄弟が和やかに語り合う様子や、篭手切江(田村升吾)・桑名江(福井巴也)・松井江(笹森裕貴)・豊前江(立花裕大)が揃ってレッスンし華麗なステージを務める日が実現するなんて、5年前には想像もつかなかった。なんて嬉しい未来!
もちろん、大和守安定(鳥越裕貴)、和泉守兼定(有澤樟太郎)、蜻蛉切(spi)、大倶利伽羅(牧島 輝)、膝丸(高野 洸)、陸奥守吉行(田村 心)、明石国行(仲田博喜)、鶴丸国永(岡宮来夢)、御手杵(田中涼星)──それぞれの刀剣男士も次々に見せどころを披露。キャスト全員、きっちりと自身のキャラクターに磨きをかけ、歌に込められた思いもダンスのキレもチームワークもさらに極まっているのがひしひしと伝わってきて目が離せない。
  (c)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
1部のクライマックス。全員揃っての「かざぐるま」から、刀剣男士たちの中央に三日月宗近が立つフォーメーションで歌われる「まほろばに」への流れは、ここまでのすべてを集約するかのようなとても美しい流れとなっており、刀剣男士たちの“集中力”が注ぎ込まれたパフォーマンスに心が揺り動かされた。
休憩後の2部は一転、非常に厳かでフォーマルな佇まいの新曲からスタートしつつ、一気にアゲアゲな「mistake」でリミッターを突破。ソリッドな照明に彩られ、ライブパートでおなじみのナンバーの連打に次ぐ連打でパワーの放出が止まらない! 客席のペンライトの躍動も納得、これぞ刀ミュ! というカッコよさが舞台上に充満し、百戦錬磨で主たちを楽しませ続けてきた刀剣男士たちのポテンシャルの高さをまざまざと見せつけられた。
その日限りの回替わり演出や意外な組み合わせの意外な選曲も盛り込みつつ、エンディングに向けてはさらにもうひとつ、刀ミュファンには堪らない構成が待っているので、その展開もぜひじっくりと味わおう。
  (c)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
世に蔓延っている「困難」がなければまだまだお正月気分を引きずっていたい時期に、華やかな祝賀の誂えでモヤモヤを吹き消し正しくお正月気分にさせてくれた「五周年記念 壽 乱舞音曲祭」。今までとは違う種類の感動が何度も押し寄せてきた公演だったが、最も印象的だったのは、刀剣男士たちが終始とても研ぎ澄まされたオーラを放っていたこと。「愉しい」だけではない、ハレの日に向けて特別な手入れが施された切っ先の鋭さを感じさせる渾身のパフォーマンスで観客をもてなしてくれていたことだ。ラストに披露されたオーケストラアレンジの「刀剣乱舞」にもそんな彼らの思いがしみじみ丁寧に刻み込まれており、一層特別な感動が湧き上がってきた。
どうやら歴史を行き来する刀剣男士たちは、私たちのこの先がまた明るい日々になることを知っているらしい。そして「主のこと応援してるから!」と、常に主のほうを向き、寄り添ってくれているかのように感じた。それはイコール刀ミュカンパニー全員が抱く“届ける者”のプライドでもあり、観客が全身で受け取ることのできる“生きること”への大きな勇気ともなっているのだ。「壽」の文字を胸に抱いた帰り道、気づけば少し多めに上を向いて歩きたくなっていた──これぞエンタメの持つチカラなのだ、と噛み締めながら。
  (c)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
文=横澤由香

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