読売新聞への広告掲載を告知するレッドブル公式Twitterアカウント(報道目的引用)

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「くたばれ、正論。」の意味がわから
ない:ロマン優光連載178

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第178回 「くたばれ、正論。」の意味がわからない 編集氏から「レッドブルの『くたばれ、正論。』って意味不明ですよね。何に対していってんのかわかんないし」というメールが。そういうわけで、今回はレッドブルの成人式に出された新聞広告について考えなければならないのですが、確かに「くたばれ、正論。」と言われても具体的に何を指しているか意味わかんないといえば意味がわかんないですよね。でも、広告なんて雰囲気もんなんだから、何か良いこと言ってそうな雰囲気を出してきてるだけなんじゃ? だから、具体的なことを言わないで、手垢のついた「若者よ、常識に負けずに自由にやれ!」的なウケが良さそうなことを言ってるだけだろうし、そんなの、俺に言われても知らないよ!
 まあ、それで終わらすわけにもいかないのでもう少し考えてみます。
 この広告の言ってること、さっきも言いましたけど具体的なとこが何にもないんですよね。だから、如何様にも解釈できます。みんなが本能の赴くままにバカになって衝動的に動いたら、社会はメチャクチャになってしまいます。社会に最低限のモラルがないと崩壊してしまうし、科学的エビデンスを無視して直感で疑似科学を信奉するような政府や企業があれば当然被害が出てくるわけです。「既存のビジネスの常識にとらわれるな」みたいなことであれば、それで成功する例もあるので変ではないです。しかし、それが度を越してると法やモラルの問題が出てくるかもしれません。創作の場であれば既存の常識にとらわれずに、そういうふうにやることで良い作品が生まれることもあります。そうであるなら、別に変なことを言ってるわけではないということになります。
 この広告に対して 「行きすぎた正しさ」という文から、アンチ・ポリコレやアンチ・フェミニズムみたいな匂いを感じとった人が怒っていますよね。ポリコレ批判、フェミニズム批判でよく使われるフレーズですもんね。でも、「常識を積み重ねても」と続くのでそこを意図したのかどうかはわかりません。なぜなら、そういうアンチ・ポリコレ、アンチ・フェミニズムの人にとってポリコレやフェミニズムは非常識扱いだからです。もというか、あの広告、雰囲気だけで何もないから、文章をちゃんと論理的に読み解こうとすると意味不明なとこあるんですよ。かっこいいと思った流行りのフレーズ入れただけで、深い意図はないのかもしれません。
 また、「くたばれ、正論。」みたいなスタイルでやってきたトランプ氏が引き起こした事態が頭の中に浮かんだり、日本の政財界にモラルのなさを感じている人が「正しさを否定した結果こんなことになったのだ」と怒ることもあるでしょう。コロナ禍での日本の政府の対策に、科学的エビデンス抜きなひどい対応であると感じてる人も、正しい知識を無視することを呼び掛けているように感じるかもしれませんね。否定してる正しさに具体性が何もないから、どうとでも思えるし。
 あと、正論って今流行ってませんよね。少なくともネット上では既存の常識を疑えみたいなことが、キングコングの西野さんのようなオンラインサロンで稼いでるインフルエンサーみたいな人たちによって盛んに発信されてるし、ホリエモンとかもそんな感じですよね。正論なんて流行ってないし、重要視されてない。カウンター的な雰囲気を持った広告をやりたいなら、今は逆に「正論は大事」だと思います。 そんな中で「くたばれ、正論。」とか言われても、流行りに乗っかってみたのかなって感じがしますよね。そういう正論否定の風潮に乗っかって煽る感じも怒りをかう要因ではあります。
 そもそも正論という言葉の使い方の問題もあります。おそらく、広告では古くさい硬直した常識という意味で使われています。人によっては多数に流されずに守られるべき原則として認識してる人もいます。
 まあ、物事の解釈や言葉の使い方もその人の立ち位置や状況で変わる場合があるわけで、正論という言葉も同じです。同じ発言を一方は前者、他方は後者として捉えている場合だってあるし、同じ人が時によって前者の意味で使うこともあれば、後者の意味で使うこともあります。そういうとこまで、踏み込んで考えてないから、ああいう雑な文章になったのだと思いますが。
 あと、広告自体には直接関係ないんですが、レッドブルの創業者のマテシッツ氏が極右で独自のメディアを立ち上げた人であり、DHCの会長みたいな人だという話が出てきたのはビックリしました。日本の会社の偉い人の思想もよく知らない人が多いんだから、他国の会社の偉い人の思想もよく知らないのは当たり前といえば当たり前なんですが。彼の思想と結びつけて怒っている人もいますけど、そこまで深い意味はないと思います。
 具体性ないままに雑に正論という言葉を使った結果、具体性が無いがゆえにかえって色々と想定される結果になり、炎上とまではいかないけれど、一定数の怒りを感じる人を生んでしまったレッドブルの新聞広告。個人的には時代遅れで雑でダサい広告でしかないと思うし、だからダメなんだと思います。 少なくともモラルという問題では最低限の時代に流されない普遍的な正論というものがあるし、社会を維持するためにはそういう正論は必要なんだと個人的には思いますけどね。
 とは言え、編集氏の「何のことだか意味不明」という疑問に関しては全然答えられたかどうかはわからないし、「そんなこと聞かれてもこれぐらいしかわからないよ」と言うしかないのでした……。
(隔週金曜連載)
写真:読売新聞への広告掲載を告知するレッドブル公式Twitterアカウント(報道目的引用)
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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