結成10周年を迎えた京都の劇団「努力
クラブ」、神戸で新作『救うか殺すか
してくれ』上演

神戸市の公立劇場[神戸アートビレッジセンター(KAVC)]が主催する、若手劇団応援企画「KAVC FLAG COMPANY 2020-2021」。そのニ番手として、今年で結成10年目の京都の劇団「努力クラブ」が、代表の合田団地作・演出の新作『救うか殺すかしてくれ』を上演する。
2011年に旗揚げした努力クラブは、主に若者の自意識や虚無や焦燥などをテーマにした物語を、喜劇と悲劇が表裏一体……というよりマーブル模様にでもしたような、微妙なユーモアがただよう空気の中で見せていくという、何ともユニークな劇団だ。作家の狙いや展開が簡単には読めない作劇と、青春真っただ中、あるいはその時代をかつて体験した人間も、多かれ少なかれ共感できる普遍性が、根強い人気の理由だろう。
前回公演『どこにも行きたくないしここにもいたくない』(2019年)より。 [撮影]小嶋謙介
とはいえ今回の物語は、青春時代から少しコマを進めて、恋に落ちた中年男性が主人公。自分の人生を呪っている中年男性が、しょうこりもなく恋をしてしまったがために受ける報いを描くという。
今回の作品について、合田はこのようにコメントしている。
正しいオッサンになれる自信がない。今のところ、自分のオッサン性を上手に育めている気がしない。このままいけばよくないオッサンになってしまうだろう。嫌だ。ただ、正しいオッサンとはなにか、という疑問もある。オッサン像における正しさとは。
自分の将来を考えたときに、華やかなものは想像できなかった。まったく輝かしくない。一切の光がない。無明。唾棄すべきような未来が僕には待ち受けている。でも、それはそれでいいんじゃないか。そんな人生でしか拾えない真に迫った愉悦さや気楽さがあるのではないか、と思って、願って、そういうのを芝居にしようと思いました。
たぶん芝居はスルスル面白いものが作れるだろうけれどものすごく迷っています、人生に。
今回のタイトルは、合田が新型コロナウイルスの自粛期間中、誰とも合わず部屋に籠もる日々を送るうちに、まさにこのタイトル通りの心境になったのが元になったことを、FLAG COMPANYの会見で明かしている。おそらく努力クラブ史上、もっとも合田の本音が反映された会話劇になるのではないだろうか。そしてそれは、彼と同じように「正しい生き方ができない」と、チラリとでも考えている人たちにとっては、福音か、あるいは心の何かが抹殺され、更新を強いられるような気分となりそうな気がする。
努力クラブ代表の合田団地。「KAVC FLAG COMPANY 2020-2021」会見より。 [撮影]吉永美和子
今回は努力クラブとしては初めて、ツイキャスでの配信を実施する。アーカイブ期間も長いので、このご時世で劇場まで行くことができない方も、ぜひこれでチェックしてほしい。

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