リュックと添い寝ごはん “非日常”
と“日常”をつなぐ心地よく自然体な
ライブ、アルバム『neo neo』リリー
スツアー・渋谷WWW公演をレポート

リュックと添い寝ごはん 1st albumリリースツアー『neo neo』

2020.12.23 渋谷WWW
メンバーが心から楽しんで演奏をする。そうやって作り出される空気感そのものが、集まったお客さんをハッピーな気分にさせてくれる。リュックと添い寝ごはんが渋谷WWWで開催した1st albumリリースツアー『neo neo』は、そんな健全な循環が心地好いライブだった。
この日は、リュクソが12月9日にリリースしたメジャーデビューアルバム『neo neo』を引っ提げた東名阪ツアーの最終公演。もともと4月に開催予定だったバンド初の東名阪対バンツアーが、新型コロナ感染拡大の影響により中止となり、8月に無観客の配信ライブというかたちで初ワンマンを行なった彼らにとって、念願の“お客さんがいる状態での”初ワンマンになる。会場は入場制限や歓声の禁止など、感染防止対策がとられ、同時に生配信も実施。これまでどおりとは言えない状況ではあったが、自分たちのやりたいことを突き詰めたフルアルバムを完成させた制作経験や、大阪、名古屋公演の手応えを経て、たとえコロナ禍にあっても、大きく躍進することができた2020年のバンドの集大成となるライブを繰り広げた。
リュックと添い寝ごはん
会場にSEが流れると、全員お揃いのつなぎの衣装を着たメンバーが、電車ごっこをするように連なってステージに登場した。フロアからは思わず、「かわいい!」と声があがる。最初の掴みはばっちりだ。宮澤あかり(Dr)のドラムスティックが打ち鳴らすカウントを合図に、ライブは「生活」からはじまった。「自由に楽しんで」と、松本ユウ(Vo/Gt)。一発で心を軽くする朗らかなバンドサウンドがフロアの隅々まで広がっていく。「青春日記」から「手と手」へ。1曲のなかでめまぐるしく曲調が変化するインディーズ時代の楽曲では、堂免英敬(Ba)が上体をのけぞるようにして、せわしく弦をはじいた。時折サポートギターのぬんも含めて、互いに向き合って演奏に没頭するメンバー。まるでスタジオのようなリラックスした雰囲気もいい。
リュックと添い寝ごはん
「どんなライブにしたいですか?」と、松本がメンバーに問いかけた最初のMCでは、全員の回答が「がんばるぞっ」の一言。メンバー同士のゆるいやりとりにフロアからはクスクスと笑いが起こる。大人っぽいライティングがステージに降り注ぎ、キレのあるダンスグルーヴの合間に堂免が骨太なスラップベースを聴かせた「Night Gimmick」、ダイナミックなアレンジが新鮮だった「サニー」から、心踊るリズムに揺れる休日ソング「ホリデイ」へ。松本が渋いギターのフレーズを弾き始めた「500円玉と少年」は、音源は弾き語りで収録されている楽曲だが、宮澤がブラシを使い、ぬんがボトルネック奏法で聴かせるアコースティックなバンドアレンジに生まれ変わり、あの日と今の狭間いる“少年”の心境を立体的に描いていく。
リュックと添い寝ごはん
終盤、松本がしっとりとピアノを弾きながら届けたのは「23」。深夜のバーでセッションをするようなイメージで作られたという楽曲に、堂免と宮澤も味わい深いコーラスをのせた。まるで映画のワンシーンのようなステージ。音楽で様々な景色を描いてゆける多彩な表現力はリュクソの大きな魅力のひとつだ。ブルーの光が4人を照らし、空気を引き裂くようなギターソロが口火を切った「渚とサンダルと」から、ライブは加速度をあげて一気にクライマックスへ向かう。RPGゲームをモチーフにしたコミカルで賑やかな「PLAY」から、軽やかなセッションをブリッジにノンストップで「グッバイトレイン」へつなぐと、本編のラストは「ノーマル」だった。リュクソの代表曲であり、高校時代の葛藤がありのままに綴られた性急なロックナンバーを、大きく体を揺り動かしながら届けた4人。<明日また明日>と何度も繰り返されるフレーズは音源で聴く以上に切実で生々しく、ただ希望的観測で“明日”を願うだけではなく、自らの手で掴んでいくんだと、そんな力強い宣言にも聞こえた。
リュックと添い寝ごはん
リュックと添い寝ごはん
アンコールも「おまけ」というより本編の延長のような濃厚な時間だった。まずは松本がひとりでステージに立つと、ひとり弾き語りで「ほたるのうた」を届けた。アルバム『neo neo』ではバンドアレンジでラストナンバーとして収録されている楽曲だが、小さな部屋で生まれた個人的な想いがやがて広い世界とつながる……そんな想いを託した曲をあえてライブではひとりで歌ったことで、楽曲に込められたメッセージがダイレクトに伝わる。松本が歌い終えると、会場の誰よりも大きな拍手を叩きながら、ステージ袖から登場した堂免と宮澤。松本が「どうだった?」と訊くと、堂免は「いい歌だった」と、即答。ふたりの松本の歌に寄せる絶対的な信頼感を垣間見られた瞬間だった。最後に、大変な時期に会場に足を運んでくれたお客さんへ感謝を伝え、「落ち着いたら、またみんなで笑い合いながらライブをしましょう」と再会の約束を交わした松本。海の向こうへの憧れが、メジャーデビューに際するバンドの心境にも重なるような「海を越えて」、宮澤の瑞々しいコーラスが懐かしいメロディに寄り添った「あたらしい朝」の2曲で、ライブは幕を閉じた。すべての演奏を終えたあと、宮澤による自撮りで会場のお客さんと一緒に写真を撮るという手作り感のあるパフォーマンスでも笑わせてくれたリュクソ。彼らが作り上げるどこまでも自然体なライブは、「ライブ」という非日常と、「生活」という日常をつなぐ狭間にある架け橋のような、心温まる時間だった。

文=秦理絵 撮影=関口佳代
リュックと添い寝ごはん

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