重量級ファンクから
ポップファンクまでが味わえる
アース・ウインド&ファイアの
『灼熱の饗宴』

『Gratitude』(’75)/Earth, Wind & Fire
モーリス・ホワイトについて
ジャズファンクグループから
ポップファンクグループへ
そういう意味で、ここまでのEW&Fと以降のEW&Fは名前は同じでも、中身はまったく違うグループとして考えるべきだろう。新生EW&Fにはフィリップ・ベイリー、ロニー・ロウズ、ラリー・ダンといった後に世界的に知られるアーティストが加入する。また、モーリスはヴォーカルに専念するためにドラムにラルフ・ジョンソンが参加、再デビュー時は8人編成となった。この布陣で活動していたところ、コロンビア・レコード社長のクライヴ・デイビスに認められ、2枚のアルバムをプロデュースしたジョー・ウィサートとともにコロンビアレコードへの移籍が決まる。
再編したEW&Fは、サンタナやシカゴのようなロックグループや当時のニューソウル(マーヴィン・ゲイ、ダニー・ハサウェイなど)にファンクを加味したスタイルで、3rdアルバム『地球最期の日(原題:Last Days And Time)』(’72)をリリースする。このアルバムには、ブレッドやピート・シーガーの曲を収録するなど、これまでのEW&Fと比べると垢抜けしたポップなサウンドに転化している。しかし、黒っぽいファンクナンバーも忘れず演奏しているところがEW&Fらしい部分である。
続く『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』(’73)では、ギターがローランド・バティスタからアル・マッケイに、サックスのロニー・ロウズからアンドリュー・ウールフォークへと入れ替わり、EW&Fの黄金期を支えるメンバーが揃うことになる。このアルバムでは、ファンクやポップソウルに加え、ラテンやロックなどの要素が濃くなり、前作と同様に黒人リスナーだけでなく白人リスナーも視野に入れたサウンド作りとなっている。全米ソウルチャートで2位まで上昇、EW&Fの名は一気に知られるようになる。彼らは白人中心のロックフェスにも積極的に参加しており、他の黒人ファンクグループとは違った売り方で勝負している。そのあたりはスライ・ストーンのやり方を参考にしていると思われるが、EW&Fのフロントマンとして動き出したモーリスのマーケティング力に拠るところが大きいのではないか。