L→R 阿部樹一(Pf&Key)、堂野アキノリ(Vo)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)

L→R 阿部樹一(Pf&Key)、堂野アキノリ(Vo)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)

音楽クリエイター集団バンドの
TOKYO RABBITが示す【後編】
“音楽を基軸とした
総合エンタテインメントカンパニー”

数多くの著名シンガーに楽曲提供を行ない、幾つものヒット曲を生み出してきたソングライター、堂野アキノリ(Vo)が中心となって結成されたTOKYO RABBITが、11月6日にシングルコレクションEP『うさぎのジャンプ』を配信リリースした。作品のことはもちろん、なぜ今シングルコレクションを出すのか、彼らがこれからどんなビジョンを描きながら動いていくのか。それぞれの点から彼らを紐解いていきたい。

TOKYO RABBITが今のところ
一番反響があるんです

L→R トサキユウキ(Gu)、堂野アキノリ(Vo)、阿部樹一(Pf&Key)、大塚篤史(Dr)

L→R トサキユウキ(Gu)、堂野アキノリ(Vo)、阿部樹一(Pf&Key)、大塚篤史(Dr)

TOKYO RABBITにとって2020年は大きなターニングポイントとなった。2019年から1年数ヵ月で2作のEPと4作の配信シングルをリリースした彼ら。“もっとスピーディーにいい曲を作ってリリースしたい”という想いから集まった楽曲たちは、それぞれ違うテイストに仕上がっているが、プロフェッショナル集団ならではの曲としてバンドのカラーが憂き目に出ていると感じられる。しかし、なぜアーティストやバンドが思うように活動できないコロナ禍で『うさぎのジャンプ』を発表することにしたのか。その真意を訊いてみた。
「ちょうどいいタイミングで作品数が揃ったからです」(堂野)
「僕とかもそうですけど、コロナで演奏をする機会がなくなったのですが、4月、5月で楽曲が溜まってきたんですよ。それで、シングルコレクションを出そうかという話が出てきて」(阿部)

コロナ禍がバンド活動においてプラスに働いたことがリリースのきっかけだった。だが、リリースしようと考えてすぐ行動に移せるのは、堂野が代表を務める配信中心のレーベル『TOKYO RABBIT RECORDS』の中核にTOKYO RABBITが存在するからである。この点は自主レーベルの大きな強みであり、楽曲制作から編曲、レコーディングまで全てをこなせるメンバーが揃っているからだろう。そして、今作はバンド名にもレーベル名にも入っている“うさぎ”が“ジャンプ”で飛躍するという意味がド直球に込められた。分かりやすいからこそメッセージ性が強いと感じられたのだが、その点についてはどうなのだろうか。
「まさにその気持ちです。たらたらとやっていても仕方ないなと思って。地道にシングルリリースを重ねていって、FMラジオや有線で流してもらったことで僕たちを知ってもらえたこともあったりして、結果ストリーミングの再生数がちょっとずつ増えていったんです。レーベルの中で、一番コツコツやってきたからかもしれませんが、今のところ僕らの趣味の延長線みたいなTOKYO RABBITの音楽が一番反響あるんですよね。それもあって、初めてしっかりとプロモーションを組んでやってみようと考えて付けたタイトルになります」(堂野)

プロモーションを組んで本格的に活動をしたいという想いは同記事の【前編】でうかがったが、バンドがこの作品に関し“本格始動”と銘打っている意味が堂野の言葉からも分かった。実際にどんなプロモーションを行なったのか。
「今回は初めてテレビ番組の『バズリズム02』で特集を組んでもらうんです。バンドについて紹介してもらうコーナーがあったりして」(堂野)
堂野アキノリ(Vo)

堂野アキノリ(Vo)

堂野にとっても、バンドにとっても初挑戦となるテレビ番組でのプロモーション。テレビは想像以上の宣伝効果を生むきっかけになると筆者も思うので大きなチャンスと言えるだろう。そんな彼らの意欲作『うさぎのジャンプ』について訊いていこう。今作はどの曲もテイストが異なった7曲が揃っている。どんなジャンルにも対応できるメンバーの演奏力、キャッチーなメロディーに乗った心に響く歌詞がバンドの魅力だと改めて感じることができた。なぜ、どの曲もテイストが異なっているのだろうか。その理由として作詞作曲を担当する堂野はトサキユウキ(Gu)の存在が大きいと話す。
「僕は作家を3年ほど専属でやっていたので、コンペ案件の話が山のように来ていたんです。“このアーティストにはこういう曲を”という感じでいっぱい書かなきゃいけなかったので、その経験からタイプが違う曲をたくさん書けるんですよ。でも、例え僕がタイプの違う曲を書いたとしても統一性を持った上で対応できる人はトサキなんですよね。いろんなサウンドを作れるし、今回ふたりで実験的に作った曲もあって、“この曲のイントロ、ジャンルは何?”と訊いたら“レゲエです”と答えてきたり(笑)。“レゲエのイントロ”とか言われて“レゲエをぶち込んでくるんだ!?”と驚きましたよ」(堂野)
「毎日いろんな曲を聴いてますからね」(トサキ)

“どの曲もジャンルが違う=バンドの色がない”ではなく、TOKYO RABBITの曲はどこか通ずる魅力が詰まっている。堂野が言う“統一性”とはなんなのか。
「いい曲をとにかく出そうという想いがあるんです。あっちもこっちも試したら楽しいじゃないですか。それを自由にできるのはいいんだけど、バンドの統一性というのは自然的にできてきていると僕は思うんです。例えば、ずっと歌う曲を普通に歌うんじゃなくて、曲として楽しめばいいんだと思ったのが「東京」をレコーディングした時で。トサキがレコーディングの設定を間違えて10時間くらいかかったんですよ(笑)。その時に“エアリーな感じにもっと力を抜いて”とかディレクションされて。これだったらいっそのこと裏声にしたらいいかと思ったことから「#37 JIBUN LIFE」以降は裏声を結構使うようになりました。その結果、裏声ヴォーカルのバンドの雰囲気も作れたりとか、その時思いつく“これかも”をずっとやり続けることで統一性が生まれる気がします」

堂野とトサキで制作していく楽曲にジャンルの統一感がないということで、演奏を支える大塚篤史(Dr)と阿部樹一(Pf&Key)は大変ではないだろうか。大塚はこの制作方法について楽しめていると話す。
「大変ではありますね。でも、僕がドラムを録音する時にはトサキくんが方向性を決めてくれているので以外と新鮮な気持ちで取り組めているんです。自分が今までやってきたジャンルの経験があるので、その中でどうやってアプローチをしようか考えて挑むのから、自分の中にあるもので音をはめ込んでいくように音作りをしていて。前みたいにスタジオでみんなで“せーの!”と合わせる流れじゃなくて、考える時間が自由にあるから意外と楽しいんですよ。曲を聴いて“こんな感じできたか!”と思いながら音を探していく。考える時間が増えたことも楽しめている要因ですかね」(大塚)
「トサキとふたりで作っちゃうと楽曲としての方向性や色はあるんだけど、なんか欠けるんですよね。味がちょっと足りなかったり、阿部さんのピアノが入るだけで高級品になるし。“これが音楽だな”と思うんですよ。だから、ふたりのサウンドの必要性が僕自身もだんだんと分かってきていると思います。やっぱり4人じゃないとダメだなと」(堂野)
「堂野くんが詞も曲も作っていて、トサキくんがこういう感じの曲と方向性と決めてくれるんですけど、最初の時点で“これは違うな”という気がしないんですよね。自分が苦手で時間がかかっちゃうということはあるにしても、自分がやってきたジャズの経験とクロスオーバーさせたくないというか、勝手にイメージが湧いてくるのはいいんです。でも、よく“ジャズ風に”とか言われることがあるんですが、どこをジャズ風にしたいのか分からないんですよ」(阿部)
「僕は結構曖昧なお願いをしちゃいますよね(笑)」(トサキ)
「トサキくんのように知ってる仲だったらなんとなく言ってることが分かるんですけど、リズムのことを言ってるのかヴォイシングなのかとかね。だから、あまりジャズはジャズとこだわっていないからこそ、好きなようにやらせてもらえています。前はグランドピアノの生音をスタジオで録ってましたけど、最近は家で生のピアノを録れるんです。でも、シンセサイザーとかそういう音を家で重ねたりできるし、トサキくんがこうしたほうがいいと言ってくれるので、前よりいろんな音に挑戦するようになりました」(阿部)

メンバーの話からも、それぞれがプロミュージシャンとして活動している4人が集まっているからこそ、チームとしての団結力がこの作品の制作を通じて一層強くなっていったのだということが分かった。
「僕はこのバンドは続くだろうなと思えています。みんなやる気もあるし、続けられることが有難いですね。結局、続けていかないと意味がないし絶対成功しないじゃないですか。だから、まず続くのであればやった方がいいと思います。続ければ勝ちですからね」(堂野)

OKMusic編集部

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