羽多野渉【インタビュー】“2020年の
夏”がテーマの10thシングル『Never
End!Summer!』に込めた想い

羽多野渉の10thシングル『Never End!Summer!』が、本日2020年12月23日にリリースされた。タイトル曲「Never End!Summer!」は、「You Only Live Once」や「ハートシグナル」を手掛けた彦田元気氏が作曲を担当。“2020年の夏”をテーマにした楽曲となっている。どんな想いを込めてできあがったシングルなのか、羽多野渉に語ってもらった。
【インタビュー】音楽の世界で、2020年の夏を謳歌してほしい
――『Never End!Summer!』は「You Only Live Once」「ハートシグナル」を手がけた彦田元気さんが作曲されています。どのように制作が決まったのでしょうか?
以前彦田さんと対談取材でご一緒したとき、僕たちは「冬の楽曲を作る人&歌う人」のイメージが浸透しているよね(笑)という話をして。その時に彦田さんが「羽多野さんと夏の楽曲を作りたい」って言ってくださったんです。「You Only Live Once」もそうですし僕の1stシングル「はじまりの日に」も冬をイメージした楽曲で、「弾ける夏」みたいな曲がなかったんですね。その後ランティス主催の「ORE!!SUMMER 2020」への出演オファーをいただいて本格的に「夏の楽曲を作ろう!」と盛り上がった際にあらためて彦田さんにオファーをしたところ、快く引き受けていただきました。
――夏をテーマにした楽曲というのが出発点だったんですね。
制作当初は「夏曲」という漠然としたイメージしかなかったんですが、「2020年がどういう年だったか」ということをリモートで話し合いながら曲を作っていきました。歌詞の打ち合わせも含めて全部リモートで行ったので、今までの音楽制作とはまったく違う形になりました。慣れない形に不自由さを感じることもあったのですが、それをどうにかプラスのエネルギーに変換したいと思ったんです。今年の夏に思ったような青春を送れなかった人、自粛生活で閉塞的な気分になってしまった人たちに向けて「音楽の世界で夏を謳歌しましょう!」というメッセージを伝えられるような楽曲にしました。
――「おうち生活でも音楽で夏を楽しめる」というメッセージに胸が熱くなりました。
ウィルスとの戦いは、未知との闘いじゃないですか。『Never End!Summer!』の制作が始まったのは3月に予定していたライブが中止になった頃で、僕自身も不安を感じていました。エンターテインメント業界が大変な状況に陥って、僕の周りの人たちも「これからどうしたらいいんだろう」という想いを抱えていたんです。でも、物事は思い詰めるとどんどんマイナスな方向に転がってしまうので、それを明るくプラスにしていきたいという想いが強くなりました。
いかに聴いてくださる方の想像力を掻き立てられるか
――『Never End!Summer!』を聴くと、まるでライブ会場にいるような気分になります。
そうなんです。僕らがやっている声優というお仕事もそうなんですけれど、すごくバーチャルな世界なんですよね。バーチャルの強みはいかに聴いてくださる方の想像力を掻き立てられるかということなので、その強みを生かそうと思いました。『Never End!Summer!』はもちろんフェスでリアルに盛り上がることもできるのですが、頭の中でライブ会場を想像できるようにお客さんに歌ってほしい部分をたくさん用意していただきました。(Wow Wow Wow Wow)や(Get ready?jumpin‘ now)の掛け合いやクラップをしながら一緒に歌っていただいて、おうちで自由に楽しんでいただきたいです。
――最初にPA-NONさんが書かれた歌詞を見たときのお気持ちはいかがでしたか?
すごくうれしかったですね。完成した歌詞を拝見したとき「ここをもっとこうしてほしい」という部分がひとつもなくて、まさに理想的でした。先ほどお話したメッセージ性をお洒落に入れていただいて、お客さんが歌うパートもたくさん入っていたので本当にありがたいなと思いました。
――楽曲を制作される際に作家さんにプロットをお渡ししていると伺ったのですが、今回もそうだったのでしょうか?
そうです。「めちゃくちゃたくさん書いてるな! 歌詞の文字数より多いじゃないか!」ということもあるかもしれないので、作家さんには申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけれども(笑)。僕が書いたプロットをプロの方がお洒落な形に変換してくださったおかげで、とても気持ちよく歌わせていただいています。
「キャラや声質を変えて何テイクも歌いました」
――『Never End!Summer!』のレコーディングで意識したことや、印象的だったエピソードがあればお聞かせください。
今まであまりこういう明るい楽曲を歌ってこなかったので、とてもチャレンジングなレコーディングでした。収録に立ち会ってくださった彦田さんともお話しして、「ライブ会場のような広いところで歌っているイメージ」で収録しました。お客さんに歌ってほしい箇所はとくに何テイクも重ねて録音したので、何回「Wow Wow Wow Wow」言ったか分からないくらいです(笑)。普段アニメに声をあてるとき、ガヤといって群衆の音を重ねるのですが、そういう部分が今回の曲にもたくさん含まれています。
――サビの臨場感にはそんな裏話が隠されていたんですね。
そうですね、キャラや声質を変えて何テイクも歌いました。「Get ready?jumpin‘ now」をメロディで歌うテイクもあれば、叫んでいるテイクも……。それらのバランス調整はすごく難しかったと思います。どのテイクを基準にするかで曲の雰囲気がだいぶ変わると思うのですが、エンジニアの方が絶妙なバランスで整えてくださいました。
輝かしい未来のための1つの分岐点
――続いてTr.02に収録されている『Vivid Junction』についてもお話をお聞かせください。
じつは『Never End!Summer!』の制作を始めた当初は、まだ10thシングルを出すお話は決まっていなかったんです。制作が進む中「羽多野さん、たくさんの応援をいただいてCDの制作が決まりました!」というありがたい言葉をプロデューサーから伺ってTr.02の楽曲を作ることが決まりました。シングルに収録するなら、出来上がった音は違うけれど共通するテーマが欲しいなということで、『Never End!Summer!』は「2020年の夏」、『Vivid Junction』は「2020年から先の未来」というテーマで作らせていただきました。
――作詞を担当された結城アイラさんとは、どのようなきっかけでご一緒されたのでしょうか?
結城アイラさんはアーティストとして活躍されているので歌声も存じ上げていたんですけれども、僕が出演している『アイドリッシュセブン』という作品でTRIGGERの楽曲のほとんどを作詞してくださっています。アイラさんご自身の音楽活動もお忙しいなかだと思うのですが、声優としての仕事でいただいたご縁が音楽活動で結ばれて本当にうれしく思いました。
――『Vivid Junction』というタイトルにはどのような想いが込められていますか?
2020年に起きた出来事は5年後10年後、教科書が新しくなったら必ず載ると思うんです。世界の状況をどう捉えるかということは自分の価値観につながっていて、僕自身は輝かしい未来のための1つの分岐点だと考えました。ゲームやアニメだと新しいエンディングに向けてフラグが立つと言いますが、まさにその分岐点が2020年なんじゃないかなと。それを踏まえたうえで、「重要なのは周りから受け取る情報ではなく、自分の価値観をもう一度見つめ直して大切なものとは何かを考えること」という想いをプロットに託してアイラさんにお渡ししました。
アイラさんも「私も2020年はそういう年だなと思いました」と共感してくださったのですが、おそらくエンターテインメントに関わっている人なら舞台や音楽とジャンルが変わっても皆さんが思っていたことなんじゃないかなと思うんです。今まで当たり前にできていたことができなくなったとき、「今の自分たちの体と心を使って何ができるだろうか」。エンターテインメントの世界にいる人なら誰しも根幹に持っているであろう想いを、自分なりのメッセージとして込めさせていただきました。
――結城アイラさんが書かれた歌詞はいかがでしたか?
どれもめちゃくちゃお洒落にカッコよく書いてくださったのですが、とくに「Vivid Junction 変革のゲートはひらいた」というサビの入り口がすごく印象に残りました。もともとプロットの中に「Junction(分岐)」というワードを入れてはいたんですが、そこにアイラさんが「Vivid」という言葉を加えてくださったんです。これが本当に絶妙で、ありがたくて……。「Vivid」には色々な意味が込められていると思いますが、鮮やかで輝かしい未来に向かっていくための「Junction」なのだというメッセージ性がより強くなったように思います。
――同じく結城アイラさんの歌詞のなかで「誰もが今 独りで 毛玉のような不安を 抱えながら生きてるとしたら」という表現が出てくるのですが、これも絶妙だと思いました。
これは本当にアイラさんならではの表現ですよね。僕ひとりでは絶対出てきません。コロナ「明確な鋭さのない不安」のようなものを、すごく的確に表現してくださいました。
――『Vivid Junction』のレコーディングでは、どのようなことを意識されましたか?
すごく難易度が高い曲でしたね。今までの経験値を生かしてどう表現しようか考えて、ファルセットをちょっと多めに入れさせてもらいました。主旋律の上と下にハモ(ハーモニー)を入れて音幅を広くすることで、フューチャー感といいますか未来感を表現できたらいいなと……。そういう意味では難しくもあり、とっても濃い時間でしたね。
「続けていくことの大切さ」
――約1年ぶりのシングルリリースとなる本作。世の中的には自粛期間を経て大変な時期でもありましたが、今回の楽曲はご自身にとってどのような作品になったと感じていますか?
僕がアーティストとして活動するうえで掲げている目標は、声優としての目標と同じで「続けていくことの大切さ」なんですね。9月に開催したオンラインライブもそうですし、今回新曲を出させていただく機会も、もしかしたら失われていたかもしれなかった。それでも応援してくださる皆さんのお声によって実現して、続けることができました。自分が発信するメッセージが周りの人や応援してくださる方たちにも伝わって、みんなで作品を作り上げるというサイクルを9年間続けてられたことを本当にありがたく思っています。今回もそうですがCDが出るたびに思うのは、感謝の気持ちをCDに乗せてお届けしようということです。曲のメッセージは、きっと歌詞を読んでいただけたら伝わると思いますので、現実の世界で制限されていることは音楽の世界で疑似体験して、一緒に楽しい時間を共有できたらいいなと思います。
――YouTubeに『羽多野渉 Never End!Summer!おしゃべりフィットネス動画』を公開されましたが、どのようなきっかけや想いで動画を作られたのでしょうか?
これは本当に今年じゃなかったら発想としても生まれていなかったと思います! 僕自身、緊急事態宣言のなか家にいる時間が長くなったことがきっかけでした。本当だったら毎年春夏はアニメ関係のイベントやライブがあって、1ヵ月くらいリハーサルで踊ったり歌ったりしていると自然と身体が鍛えられて、健康を維持できていたんです(笑)。それがなくなってしまうと身体を動かす機会がないので、どんどん衰えていくなと……。
そんなときに動画サイトに上がっているダンサーさんやいろんな方のフィットネスやヨガ、ピラティスを家でやるようになったらメンタルにもいい影響があったので、これはおもしろいぞと! 皆さんに自分の楽曲でそれが届けられたら、面白いんじゃないかなと思ったんです。そこでプロデューサーに相談したところ「面白いね!」っと乗っていただけて、毎年ライブで振り付けをつけてくださるNAOKIさんに振り付けをお願いすることになりました。
羽多野渉 / 「Never End!Summer!」でおしゃべりフィットネス!
――動画の投稿欄には「奇跡の38歳!」と称賛するコメントも多く寄せられていました。
思った以上に反響をいただけて、うれしかったです(笑)。でも、じつはあの動画はリハーサルも含めると5テイクくらい撮っているので、終わった後は身体がめちゃくちゃになりました。『Never End!Summer!』のMVも、あのフィットネスをもとにして撮らせていただいたんです。MVではフィットネスだけでなく、ヨガやバランスボールなどあらゆる運動を何回もやったので撮影翌日から3日くらいは身体がバキバキになっちゃいました。
――たしかに『Never End!Summer!』のMVはフィットネスも含め、おうち時間の要素が盛りだくさんでしたね。
おうちで出来るいろんな楽しいことを入れようということで、全部やりました(笑)。
――お風呂掃除のシーンで、湯船の縁に足をかけてお掃除する姿がリアルだなと思いました。ファンの方に向けた見どころが満載です。
そうですよね(笑)、床はビショビショですから。MVでは1カットしか出てこないのですが、あの後足をかけていたところもきれいに洗いました。あともうひとつ、見どころという点でいうと今回なんと『月刊ムー』さんとのコラボも実現しているんですよ! 僕は都市伝説が大好きで、以前『月刊ムー』さんとコラボしてオカルトかるたの読み手のお仕事(「ムー公認 「オカルトかるた」読み上げCD 羽多野 渉編」)をしたことがあるんです。そのご縁もありMVの中に『月刊ムー』さんが編集した本が登場するのですが、ぜひ実際にご覧になってチェックしていただけたらと思います。
羽多野渉 / 「Never End!Summer!」Music Video(Short ver.)
羽多野渉の新しいライブになった
――9月4日にはご自身初となるオンラインライブ「Wataru Hatano "Online Live 2020 -ReIntro-"」が開催されました。ファンの方の反応や、ライブを振り返っていかがでしたか?
思った以上にたくさんの方が観てくださったみたいで、本当にうれしかったです。3月に自粛の発表をさせていただいたときは断腸の想いだったのですが、その悔しさの分、オンラインライブを楽しいものにしようという想いが強くなりました。スタッフみんなで意見を出し合い、客席に入って歌ったり、カメラに向かったファンサービスやコール&レスポンスなどオンラインならではの演出をしてみたり。今回初めて生バンドと組ませていただいたので、バンドの皆さんとのやり取りも新鮮だったんじゃないかなと思います。そういった意味では、羽多野渉の新しいライブを皆さんに観ていただけてうれしかったです。
――直接会場に行けないのは残念ですが、最前列アングルなどうれしい要素もありました。
どなた様にも最前列を楽しんでいただけるプランがありましたね! 歌っている側からすると、本来お客さんがいる場所よりも近くにカメラがいるので、「近いな」とすごくドキドキしました(笑)。その驚きも含めて、斬新な映像になっていたと思います。客席の中に入って、わざと至近距離まで近づくなど、カメラ越しだからこその新たな演出が生まれましたね 。
応援の声の大切さ、笑顔の大切さ
――2020年のアーティストとしての活動を振り返るといかがでしたか?
やりたかったこと、やるはずだったことが失われたぶん全く違う形や思いもよらないところから新たなものが出来上がり、皆さまにお届けできた1年だったかなと思います。新型コロナウィルスが世界的にパンデミックな状態になっていなければ、『Never End!Summer!』も『Vivid Junction』も生まれてなかったかもしれませんから。エンタメ業界全体としてはものすごくダメージが大きい年でしたが「ただ痛かった」で終わらず、それをもとにいろんな作品が世の中に出ました。そのなかの1つが僕のCDになったらいいなと思います。イベントが中止されて分断されてしまったけれど、だからこそ応援してくださる方の声の大切さ、笑顔の大切さを改めて感じることができた。そんな1年だったのではないかなと思います。
――来年はアーティストとしてデビューされてから10周年。2021年に向けた意気込みと、応援しているファンの皆さまに向けてメッセージをお願いします。
プロデューサーの頭の中にはいろんな仕掛けたいアイデアがあると思うんです。ただ今年が怒涛すぎて、気が付けば「あ、そうか。来年は10周年なんだ」っていう気持ちが正直なところではありますね。2015年の5周年でもさまざまな企画をやらせていただき、つい最近のことのように感じていたので時が経つのは本当に早いなと実感します。こうして音楽を続けていられるのは応援してくださる皆さまのおかげです。皆さんからいただいた以上の感謝のお返しができる、そんな10周年を迎えられたらいいなと思います。自分自身も自覚をしっかりもって、皆さまに楽しみをお届けできるようにがんばります!
取材・文=本多恵 撮影=加藤成美
2020年9月4日に開催された羽多野渉、初のオンラインライブ『Wataru Hatano "Online" Live 2020 -ReIntro-』のBD&DVDが2021年2月26日(金)発売決定。

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