L→R 石原 天(Dr)、古川貴之(Vo&Gu)、森下拓貴(Ba)、中屋智裕(Gu)

L→R 石原 天(Dr)、古川貴之(Vo&Gu)、森下拓貴(Ba)、中屋智裕(Gu)

【THE PINBALLS インタビュー】
今回は特に
“これが最後になってもいい”
という気持ちで作った

勝負をかけるわけだから、
リズムもバリエーションも
豊かじゃないと

バンドアンサンブルはこれまで通りタイトなのですが、印象が若干変わってきたようにも感じたのですが。

古川
今回は俺のプレイで重ねたギターの音も何本かあり、少し印象が違うかも知れません。アンサンブルの中にどうしても欲しい音がある時は、相談して入れさせてもらいました。
森下
逆に僕は直前の『Dress up』を作った時に考えが変わったところもあって、曲のためのプレイをより意識するようになりました。

あっ、そうですね。むしろ、森下さんも含め、4人それぞれの個性がこれまでよりも際立ってきた印象もあったのですが。

森下
プレイヤーとして作品ごとに成長してきたと思うんですけど、『Dress up』から今回のアルバムにかけてグッと上がったというか、変わったというか、そういうところはあるかもしれないですね。
中屋
でも、ひとりの人間にできることってそんなに多くないと思うんですよ。むしろ、大事なのは自分ができることを突き詰めることだと思うので、細かいことを言えば、いろいろなチャレンジはあるんですけど、大きな枠で見たら、そんなに変わってないと思います。

変わってはいないけど、プレイの腕は上がったと?

中屋
どうなのかな? まぁ、上がったのかな?(笑)

あと、今作はリズムアプローチが以前よりも大胆になったのではないでしょうか?

古川
意識的に16ビートをはじめ、跳ねるリズムを加えました。リズムのバリエーションを増やしたかったんです。「オブリビオン」の三拍子はまさにそうですね。もともとは8ビートだったんですよ。やっぱり“ミリオン”という言葉を使って、勝負をかけるわけですから、自分のバンドだけではなく、今まで自分が聴きながら育ってきた音楽の中でも最高のものにしたいというイメージがあって。だったら、リズムもバリエーション豊かなものじゃないとって思いました。

その意味では、石原さんは叩き甲斐があったのでは?

石原
そうなんですけど、細かいことを考えるのはやめようと思いました。考えすぎると裏目に出ちゃうことが多いんです(笑)。ドラムの師匠から言われた“ドラムは音を集めるのが仕事だ”という言葉だけを肝に銘じて叩きました。

16ビートの横ノリの演奏に気迫を込めた「マーダーピールズ」のカッコ良さは新境地と言ってもいいのでは?

古川
こういうちょっといなたさを持っている雰囲気は自分にしか出せないと思います。ダンサブルだし、しかもセクシーな声で歌えてるし、歌詞の世界観は狂ってるし。こういう曲は自分にしかできないと思いながら、プライドを持って作りました。

今回、古川さんは改めて自分自身と向き合った上で、音楽に取り組む気持ちを歌っているようですね。

古川
まさに「マーダーピールズ」はそうですね。《たたかうために生きよう》っていうのは自分に言い聞かせているところもあるんですけど、一度喉を痛めて、また歌えるようになってから、歌うこと自体が気持ち良いと再認識して…本当に歌うって楽しいことなんですよね。「マーダーピールズ」では“自分は本当に歌が好きなのか?”って自分に問いかけているんですけど、どう考えても歌が好きなんですよ。そういう自分を忘れたくないと思って、日記じゃないですけど、“この気持ちを忘れないように!”という想いを込めて、旗を立てるような気持ちで書きました。

その一方で、対になっているという「ミリオンダラーベイビー」と「オブリビオン」では、悠久の時間の流れの中ではあまりにもちっぽけな自分たちの存在はいずれ忘れ去られていくものなのだから、今、ここでくよくよしていても仕方ないという諦観が感じられますね。

古川
そうですね。「ミリオンダラーベイビー」はさっき言った通り自分の青春を歌っているんですけど、「オブリビオン」では宇宙や人類の歴史をイメージしました。地球の歴史を一日に例えると、人類の誕生は最後の1分ぐらいという話があるじゃないですか。そう考えると、人の一生ってほんとに一瞬の輝きなんだと思うんですけど、宇宙の暗黒や静寂の中にはそういう輝きがいくつもあって、青春は繰り返されてきたんだっていう。

一年間12カ月を12曲で表現した『THE PINBALLS』、一日24時間を対になる12曲で表現した『時の肋骨』(2018年11発表のアルバム)、そして悠久の時間の流れの中で人間の一生をとらえた今回の『millions of oblivion』。3枚のアルバムは時間の流れを、いろいろな概念でとらえるという意味で共通しているように感じられました。

古川
そういうの好きなんでしょうね。

そういう話はメンバーとするのですか?

古川
普段はいっぱいするんですけど、今回はそんなにしなかった気がします。というのは、俺がこれだけいい声といい曲を聴かせれば、きっと分かってくれる気がして、あえて言葉で説明する必要はないと思ったんです。逆に言うと、これまですごい説明していたのは、もしかしたら自信がなかったからかもしれない。

ところで、今回のレコーディングは『Dress up』を完成させてからだったんですよね?

森下
配信リリースした「ブロードウェイ」と「ニードルノット」以外の8曲はそうですね。
古川
5曲ずつ対にしたので、その8曲は2回に分けてレコーディングしたんですよ。それができたのは楽しかったです。

対になっているというのは、「ミリオンダラーベイビー」と「オブリビオン」と…

古川
2曲目の「ニードルノット」と9曲目の「ブロードウェイ」。これはタイトルが場所になっているんです。初回限定盤スペシャルパッケージの特典として書いた『前世の記憶の少女』というストーリーを読んでもらえると、より分かると思うんですけど。あとは、世界はクソだと歌っている3曲目の「神々の豚」と世界は美しいと歌っている8曲目の「惑星の子供たち」、放浪と家に帰ることをテーマにした4曲目の「放浪のマチルダ」と7曲目の「ストレリチアと僕の家」、5曲目の「赤い羊よ眠れ」の英語タイトルである“sleep redrum”を逆から読むと6曲目の「マーダーピールズ」になるという、その対になっている5曲ずつがレコードのA面とB面みたいなイメージだったので、A面を録ってからB面を録ったんです。そういうことをやらせてもらえるのはありがたいと思いましたね。なかなかそういう贅沢なことってできないじゃないですか。
中屋
間に『Dress up』のライヴがあったんですけど、そこで気持ちが切り替わったみたいなところはありました。間に違うことをやるのは気分転換になりますね。ずっと同じことをやっていると周りが見えなくなるんですよ。なので、スケジュール的には変な感じでしたけど、良かったんじゃないかと。

じゃあ、レコーディングは特に苦労することもなく?

中屋
いや、レコーディングの間にライヴがあるのは難しかったです(笑)。結果的には良かったと思いましたけど、レコーディングに集中したい気持ちもありました。

書き下ろしたストーリーは歌詞の内容を補うものなのですね?

古川
曲の対称性を補おうと思って、歌詞に沿った物語を考えてみたんです。

大変ではなかったですか?

古川
全然大変ではなくて、もともと歌詞を書く時のイメージの断片って捨ててしまうものが多いんですよ。もったいないと常々思っていたので嬉しかったです。革細工で、バッグの捨てちゃう生地で財布を一個作りました!みたいな感じですね(笑)。もったいないと思っていた心がめちゃめちゃ安らぎました。

取材:山口智男

アルバム『millions of oblivion』2020年12月16日発売 日本コロムビア
    • 【初回限定盤スペシャルパッケージ】(CD+Blu-ray+ポエトリーブック64P)
    • COZP-1689〜90
    • ¥4,800(税抜)
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • COZP-1691〜2
    • ¥3,800(税抜)
    • 【通常盤】(CD)
    • COCP-41311
    • ¥2,800(税抜)

『THE PINBALLS Live Tour 2021 "millions of memories"』

[2021年]
2/05(金) 千葉・LOOK
2/13(土) 福岡・CB
2/14(日) 岡山・ペパーランド
2/19(金) 宮城・仙台MACANA
2/21(日) 北海道・札幌SPiCE
3/06(土) 大阪・Banana Hall
3/13(土) 香川・高松DIME
3/14(日) 愛知・名古屋Electric Lady Land
3/27(土) 長野・LIVE HOUSE J
3/28(日) 石川・金沢vanvan V4
4/08(木) 東京・渋谷TSUTAYA O-EAST

「ブロードウェイ」MV

「ニードルノット」MV

『millions of oblivion』全曲trailer

OKMusic編集部

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