T.MORIYAMMER

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【T.MORIYAMMER インタビュー】
“あぁ、やっぱりロックいいな”って
再確認して、それが自然に出せた

このアルバムが発売されたあとは
THE MODSに戻ります

もう一度伺いますが、このコロナ禍の自粛期間中、やはりさまざまなことを考えたり、ご自身を見つめ直したりされたんですね。

そこだけを意識してはなかったと思うけどね。でも、考える時間は今までの中で一番多かったよ。いろんな作品をもう一回観直したり、読み直したりしたことが良かったのかもしれない。時間があった分、インプットはできたとは思う。仕事だからって無理にインプットするんじゃなくてね。“次のアルバムは○○くらいに発売しなくちゃいけないから曲を作ろう。そのために映像を観てみよう。本を読んでみよう”というのがコロナがなかった頃までのスタイルで、それって仕事だよね。でも、今回はまったくそれがない。アルバムなんていつ出せるか分からないし、ライヴだっていつあるか分からない中でやれることと言ったら、普通に映画を観たり、DVDを観たり、本を読んだりという、ただ自然な好きなことだよね。そうしているうちに“あぁ、音楽っていいな”って再確認させられたわけで…でも、そこがでかかった。だって、何年間もThe Beatlesのビデオなんて観たことがなかったもん。もう知ってたから。でも、久しぶりに『The Beatles Anthology』のDVDを観たり、『Let It Be』の映画を観たら、やっぱり面白かったわけ。そういうことが、The Beatlesだけじゃなくて、いろんなアーティストで再確認できたのが良かったね。

そういうのが自然とインプットされて、さらに自然と曲となったということですね。

だと思う。それが10代の頃とも違うし、20代とも30代とも違う、この60歳をすぎた今で、おまけにこういう状況だから余計に感じたというのは事実だろうね。The Rolling Stonesが何年か前にロンドンのハイドパークでやったライヴの映像も観たんだけど、The Rolling Stonesよりもあの時のオーディエンスがいいと思ったの。三密ド真ん中で、“俺はこれをやりたいんだ!”と(笑)。“何て楽しそうなんだ!”と思ったし、“ロックの醍醐味は三密じゃん!”って。やっぱりロックって素晴らしいし、人間はああいうハイな気持ちになりたいんだと思う。たぶん原始時代からずっとそうなんだよね。そこを希望に持ってこれからもやろうと思う。再確認したのはそういうものもあるよね。

The Beatles風のサウンドやThe Rolling Stones風のサウンド、「Slap Stick Show」や「Boy Meets Rock'n'Roll(Good Rockin' Days #2)」で綴られた歌詞、今回そうしたものが出てきたのは、森山さん自身の今現在のロックへの憧れからなんですね。

そうだね。

ソロアルバムならではというか、やっぱり個人的な方向へ集約されましたよね。私小説のような過去を総ざらいするようなものではないですけど、明らかに森山達也というアーティストが貫かれています。

素直には出したよね。THE MODSでは出しづらいところはあったから、それはもう取っ払って。

コロナ禍は決していい状況とは言えませんが、それによってソロアルバムが完成したということは、決して悪くはなかったというか…

そうだね(笑)。コロナ禍じゃなく、普通通りの日常だったらソロ活動してないし、ソロアルバムも作ってない。そういう意味では、コロナが作らせたソロワークだとは思うよ。

しかも、いい作品になりましたから。

いい作品になって良かったと、俺もホッとはしてる。やっぱりね、“素直に作りました”“これが今の自分です”と言ってもさ、作り終わったあとで自分が聴いて“イマイチだな”と思うのは一番つらいから。でも、それはなかった。“いいアルバムになったな”って嬉しかったし、浩二にも感謝したいところはありますね。

今回のソロワークが本体であるTHE MODSにどんな影響を及ぼすのかも楽しみなところではありますね。

そうだね。このアルバムが発売されたあとはTHE MODSに戻りますから。まぁ、個人的な取材とかは多少やらなくちゃいけないんだけど、“次はTHE MODSだ”という意識はもうありますね。

そうですか。『ROLLIN' OVER』のリリースが12月23日ですから、年明けからは…ということになりますね。

どうなっているかは俺も分からないけど、すぐにTHE MODSのモードに変わるんじゃないかな? THE MODSも数年前から原点回帰じゃないけど、そういうところを見直していたのも事実なんだよね。分かりやすく言えば、新しいサウンドが生まれたり、新しいステップ、ダンスが生まれたりしてて、俺たちの20年前くらいまではそこも追っかけなくちゃいけないとか、そこも勉強しなくちゃいけないとか思ってたけど、この齢になってこれだけバンドをやってきたら、もうそこは若い奴らに任せたらいいというか、若い音楽は若い連中がやるべきで、俺たちがやる必要はまったくない。自分たちが一番好きで一番楽しいことをやって、それを好きになってくれる若い子がいたら、ロックンロールは次の世代につながっていく…そっちの役目のほうが今の俺たちには大事だよね。だから、余計に原点回帰じゃないけれども、本質的な部分…ロックの一番カッコ良くて、一番楽しいところを伝えていくのがTHE MODSの仕事だし、森山個人の仕事でもあると、ここ何年もずっと思ってきているから、そういう意味ではまったく怖いものはないね。いつか終わる、そこに向かっているだけというか。

『ROLLIN' OVER』は柔らかく温かみにもあふれた作品となりましたが、THE MODSはバンドサウンドですから当然攻撃性も帯びてくるでしょうし、今作以上に社会性にもフォーカスが当たると想像できますよね。

実は非常事態宣言の前に曲を作り出してて。その時はソロワークの考えはなくて、まだ頭の中はTHE MODSだったから“DEAD TOWN”とか(笑)、結構過激なタイトルや歌詞が出てきたね。バンドになって、あのエレキギターがガーン!と鳴ってドラムがバーン!と来たら、そういう歌詞を吐きたくなるのは間違いないことは自分でも分かってる。全曲それになるとは思わないけど、自ずと出てくるよね。

ロックにはそうした攻撃的な部分、社会に対する物言いも当然あってしかるべきで、それはそれで大きく期待したいところでもありますね。

もう思う存分に行かさせてもらいますよ。THE MODSになったら(笑)。

取材:帆苅智之

アルバム『ROLLIN’ OVER』2020年12月23日発売 ROCKAHOLIC Inc.
    • RHCA-201
    • ¥3,000(税抜)
T.MORIYAMMER プロフィール

ティー・モリヤマー:1981年にTHE MODSのリーダー、ヴォーカリスト&ギターとしてデビュー。以来、時代に流されることなく音楽(ロック)に対する真摯な姿勢を貫き、今日まで日本のロックのパイオニアとしてバンド活動を続けている。その間、300曲以上に及ぶTHE MODSのオリジナルナンバーのほとんどのソングライティングを手がけている。また、THE MODSのフロントマンとしてデビュー以来、ファンのみならず多くのアーティストたちにも多大な影響を与え続けてきた。技術や理屈だけでは創れないバンド然とした強靭なサウンドと森山の類い稀な歌唱力とカリスマ性が最大の魅力である。1985年に行なった最初のソロワークでは、より洗練されたソングライティングとヴォーカルアプローチでシンガーソングライターとしての幅の広さを世に知らしめた。そして、2020年には35年振りにソロ活動を再開! 9月にマキシシングル「GET YOURSELF」を、12月にはアルバム『ROLLIN’ OVERをリリース。THE MODS オフィシャルHP

「GET YOURSEL」MV

「ライトを照らせ」MV

OKMusic編集部

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