T.MORIYAMMER

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【T.MORIYAMMER インタビュー】
“あぁ、やっぱりロックいいな”って
再確認して、それが自然に出せた

2020年9月に“T.MORIYAMMER”名義でマキシシングル「GET YOURSELF」を発表し、35年振りとなるソロ活動を始動させたTHE MODSの森山達也(Vo&Gu)。その到達点と言っていいアルバム『ROLLIN' OVER』がついに完成した。バンドとは感触の異なる作品であるゆえに、森山達也というアーティストのアザーサイドがよく分かる、ソロならではの傑作である。

自分たちにできることは
いわゆるクラシックなロック

コロナ禍という特殊な状況下においてさまざまなことを考える時間ができたこと、もっと言ってしまえば、ご自身を見つめ直す時間ができたことが、このアルバムを作らせたと、ソロアルバム『ROLLIN' OVER』を拝聴して、そんな印象を受けました。

そうですね。とりあえず時間はもう嫌っていうほど…というか、時間しかないみたいな。他に何もやれない状態だったから、その時に“自分ができることは何かな?”って考えると、結局は曲を作るしかなかったよね。緊急事態宣言もあったし。で、THE COLTS、THE MACKSHOWの岩川浩二に相談したら、“うちのスタジオでふたりっきりだったら大丈夫じゃないですか?”と言ってくれたところから、真剣に曲作りして、真剣にレコーディングしてみるのも手かなと思って。暇だったからね。それまでにいろんなビデオや映画を観たりして、改めて“音楽っていいな”という感覚は持っていたから、そこが一番ベースになったというか。結局、観たビデオや映画ってどうしても古いもの…The Beatlesであり、The Rolling Stonesであり、自分の血になっているものを観て、“あぁ、やっぱりロックいいな”って再確認したよね。それが自然に出せたとは思います。

密を避ける意味でもバンドではなくソロワークになったと思いますが、ソロであるがゆえにご自身を掘り下げるしかなかったというようなところもあったのかなとも思いましたが、その辺はいかがでしょうか?

マキシシングル「GET YOURSELF」(2020年9月発表)に入れた「GOOD ROCKIN' DAYS」の“#2”で、今回は“Boy Meets Rock'n'Roll”というタイトルをつけたんだけど、あれはまさに自分の若かりし頃のことを落書きっぽく書いて、それを歌にした感じですね。あのパターンはTHE MODSにはないし、ソロだから出せたんじゃないかとは思う。

ひとりでやるとなると自然と過去の自分自身を振り返る感じになりますか?

そうですね。別に狙っては作らなかったし。自然と“The Beatlesっぽいのを一曲やりたいな”っていう感じがまずあったね。

「Boy Meets Rock'n'Roll(Good Rockin' Days #2)」はそういう感じでしたか(笑)。

THE MODSではThe Beatlesっぽい感じってあんまりやったことがないからね。The Rolling Stonesっぽいのは何曲かあるけど。それで、作り出したらThe Beatlesの初期っぽい感じだったから、俺もそういう頃のことを思い出して歌詞を書いてみようと思って日記っぽく書いたら、ああいう感じになったという。

「Boy Meets Rock'n'Roll(Good Rockin' Days #2)」は「GOOD ROCKIN' DAYS」以上にThe Beatlesっぽいというか、メロディーにしても歌詞にしてもダイレクトですもんね。

「The Beatlesファンはすぐに分かると思うし。歌詞も98パーセントくらいは本当のことですね。2パーセントはカッコ良く書いてるけど(笑)。

(笑)。「Boy Meets Rock'n'Roll(Good Rockin' Days #2)」以外も、シンプル・イズ・ベストと申しますか、ほとんどがベーシックなロックンロールになりましたね。

やっぱり浩二とふたりっきりの作業だったし、彼のハウススタジオだったからね。いろんなアーティストをゲストに呼んでどうのこうのということはできないんで、とりあえずシンプルに…歌のメロディーと歌詞、それにビートがあればロックなんて成立するわけだから、そこをベーシックに作っていこうって。新しいものって、もう俺たちには手に負えないわけよ、正直言って。“ついていけてない”というのが本当で。自分たちにできることは、ギターを弾いて、ベースを弾いて、ドラムを叩いて…っていう、いわゆるクラシックなロックだよね。

アコースティックギターが多く使われている印象ですが、あえて電気を通さずにダイレクトに音が出せるものを選んだのでしょうか?

これはTHE MODSにしてもそうなんだけど、アコギの良さを再確認している真っ最中なんですよ。デビューしてから20年間くらいは、アコギはたまに弾くくらいで重要性を感じていなかったんだけど、10年前くらいからかな? アコギの良さ…アコギこそが生で一番説得力がある音を出せることが分かった。弾き手の強さ弱さによって変わるわけだから、“これって一番ロックだよね”っていう。電気で作られた音というのは、今はアタッチメントがすごい時代だから、誰が弾こうが同じような音になるわけよ。でも、アコギは違う。その人の癖であったり、弾き方によって音も変わる。そういう意味で、今、THE MODSでもアコギにハマってるし、個人的にもハマってて。ベーシックなビートも出せるし。ビートはドラムもあるけど、実はアコギでもビートを出せるからね。そういうところも大切なんじゃないかって、そういう感じはしてます。

森山さんが最初に持ったギターもアコギでしたか?

アマチュア時代はアコギから始まったよね。でも、アコギと言ったって、当時はめちゃ下手だったから、ただガシャガシャやってるだけで。しかもそこにピックアップも付けてたんですよ。ガムテープで貼り付けて(笑)。まぁ、アコギが安かったからアコギを買ったというだけで、当時エレキギターを買えなかったからね。

九州には独自のフォーク文化がありましたけど、もしかして最初にアコギを持ったというのはその辺も関係していたりするんですか?

いや、そうではなくて。とりあえずギターの入口がアコギだったっていうだけで。それで曲を覚えていって、“バイトでお金が少し貯まったら絶対にあのテレキャスター買うぞ!”という感じでしたね。

なるほど。やや強引に紐づけると、ロックを最初にやり始めた最初のツールがアコギであって、ここに来てそこに戻ってきたようなところがあるわけですね。

そうですね。再確認もあるけど、素晴らしさも知ったというか。この齢になって…という言い方もおかしいけど、アコギの良さを改めて知ったね。

エレキギターの良さを十分に分かった上で、アコギの素晴らしさも実感されているという感じでしょうか?

今回の『ROLLIN' OVER』の一番最後の曲で「Love Song」ってあるんですけど、あれってよく聴いたらギターの音って酷いじゃないですか? あれはジョン・レノンがThe Beatlesの前にThe Quarry Menというバンドで、トラックの上で初ライヴをやったんですよ。その時はまだポール・マッカートニーも入ってなくて、ポールは客席にいたんだけど、そこでジョンが弾いていたギターと同じものなんですよ。めちゃ安いギターで、音なんかほとんど鳴らないんだけど、“その音、めちゃくちゃいいじゃん!”っていう。あの掠れ具合は、いい意味でおもちゃの音だよね。そっちのほうが、今、俺たちにとって説得力がある気がして。特に今回はね。
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アルバム『ROLLIN’ OVER』

OKMusic編集部

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