THE ROB CARLTON『THE CIGAR ROOM』
メンバー3人が結成10周年を語る。「
この時代だからこそ、より舞台でしか
できないことをやりたいです」

2020年に結成10周年を迎えた、京都の「限りなく喜劇に近い会話劇」の劇団「THE ROB CARLTON(以下ROB)。それを記念して、2014年初演の『ザ・シガールーム』を、京都屈指のハイソな劇場[京都劇場]で、グレードアップして再演する。ある邸宅内のシガールームを舞台に、大富豪たちが大仰ながらも「何だそれ?」な会話を繰り広げる、ROBのキーワード「エセセレブ感」「どうでもいい内容」「こだわりの強い男たちの滑稽さと友情」をシンプルに楽しめる作品だ。
劇団キャプテンのボブ・マーサム(作・演出は、本名の村角太洋名義)、ボブの弟の村角ダイチ、ボブの同級生だった満腹満。そして制作統括の酒井和也と、演出助手の入江拓郎(通称チェケロー)の5人体制を崩さず、ここまで歩んできたROB。その歴史と次回公演について、改めて役者の3人に語ってもらった……が、今回のゲストの川下大洋と御厨亮も、後からなし崩し的に参加するという、彼ららしい実にゆるいインタビューとなった。

■当時「京都劇場でやりたい」と答えた自分を褒めたい。
──「ホテルとラグビー」がコンセプトのROB風に言わせたら「開業10周年」を迎えた、今のお気持ちは。
ボブ そうですね、ここまでメンバーが増えもせず減りもせずで(笑)。まあROBは家族や地元の友達で始めたから、誰かが演劇から足を洗わない限り、分散しようがないっちゃないんで。一時期は、新メンバーを入れるという話もあったけど……。
満腹 この完全にできあがった空気の中に、入れる奴がおるんか? ってなりました。
ボブ 厳密にいえば、チェケローだけが友達の流れではないんですけど、あたかも前からいたかのような、見事なスネークインを見せてきたので(笑)。
THE ROB CARLTON『THE CIGAR ROOM〜煙と酔と旋律と〜』イメージビジュアル。 [撮影]今西徹
──そういえば、チェケローさんの役割って未だにちょっと謎なんですが。
ボブ 初期の頃は、ROBを一歩引いて見てもらうという役割でした。彼にだけ台本を渡さずに観てもらって「ここがわかりにくい」などの意見をもらって、修正する。そういう客観視が一個あったのは、本当にありがたかったです。今は完全に演出助手として、根本から参加してもらう役割に進化してますけどね。
──他のお二人は、10周年のお気持ちは。
ダイチ 体力はなくなってきました(一同笑)。最初にボブに「本気で芝居をやる」と言われた時は「ホンマかなあ?」と思ったし、途中で全員「もう止めようか」みたいな空気になったこともあったけど、10年も続けて来れたんだなあ、と。ここからまだまだやれるんじゃないか? という気持ちです。
満腹 いいことと悪いことで言ったら、僕は多分悪いことの方が多かったと思う(笑)。でも相対的に見ると、いいことの方がすごく感動できたから、それで10年間辞めずに来れたのかなあ。このメンツだから続けられたと思うし、周りの人に出会える運もかなり強かったですね。劇場関係者の人たちとか、スタッフさんとか、本当に素晴らしい人が多かったので、その人たちに支えられてやってきた10年ちゃうかなあ、と思います。
──その記念すべき公演を、劇団四季などの名だたるカンパニーが上演する[京都劇場]で迎えることになったのは?
ボブ もともと「大きな劇場でやる」というのは、劇団の目標だったんです。しかも[京都劇場]って、京都にしかない劇場じゃないですか?(笑)今の我々が、そんな所できるとは考えもしなかったけど、劇場の方に「空いてるけど、いかがですか?」と、お声がけいただきました。
THE ROB CARLTON『THE CIGAR ROOM〜煙と酔と旋律と〜』稽古風景。
劇場スタッフ 以前、何人かの(小劇場系の)劇団の主宰に「京都劇場でのご公演はいかがですか?」と話した時に、皆さん「いえいえ、結構です」みたいなリアクションをされる中で、ボブさんだけが「恐れ多いけど、やりたいです」と言ってたのを思い出したんです。
ボブ 言ってみるもんですよね。褒めたいですよ、あの時の自分を(笑)。それぞれの劇団のカラーや作風などがありますから、無理して言う必要はないと思いますけど、謙遜して言うのなら、もしかしたら損かもしれないですね。
──その勝負作として『THE CIGAR ROOM』を選ばれたのはなぜでしょう? これはROBの作品の中で、最も事件が起こらない話だったという印象が強いのですが。
ボブ 確かにそうですね(笑)。まず人数が一番少なくて、しかも椅子に座ってのらりくらりとするシーンが多いので、いわゆるディスタンスを取ろうと思えば取れる芝居だから。あと、登場するのが鉄道王、百貨店王、ホテル王、鉱山王で、これって京都駅じゃないの? と。
──確かに鉱山以外は、全部駅構内にありますよね。
ボブ だからこういう人たちが集まってもおかしくないし、ピッタリだなあと思いました。ただ立誠(注:京都の複合施設[元・立誠小学校]。2017年に閉館し、2020年に[立誠ガーデン ヒューリック京都]の名前で再オープン)の初演は、もっと物理的な空間が欲しいと思いながらやってたんです。昨年[神戸アートビレッジセンター]で『STING OPERATION』を再演した時も、やっぱり立誠より広い劇場でやることによってアップグレードできたので、この作品もそうなったらいいなと。
満腹 初演は「大変だった」という思い出しかないですね。出ている人数が少ない分、一人ひとりの台詞の量とか負担が大きかったので、立誠でやった作品の中では、一番大変という記憶しかない(笑)。
初演の『ザ・シガールーム』(2014年)。
ダイチ 僕は結構、好きな作品です。さっき言ったようにROBらしい、ボブが書く話らしいなあと思うし。でも初演はいろいろ力不足で、不完全燃焼というか、もっとできたという感じがあったんです。だからもう一回やれるのは、僕としてはすごく嬉しいですね。
──一番大きな変化は、キャストに川下大洋さんと御厨亮さんが加わることですが、他に初演と変わりそうな所は?
ボブ 台詞を一行ずつというか、一個ずつ見直しました。細かい語尾だとか、間に誰かの一言を入れて会話のリズムを変えたことで、よりテンポのいい、耳あたりのいい会話劇にできるんじゃないかと思います。あと当然、役者も6つ年を取ってるので、さらに落ち着いた感じになってて。そこに川下さんが陣取ると、大富豪感が急に濃くなるんです。空間も当然広くなりますし、全体的な雰囲気は根本から変わると思います。
ダイチ 台詞がコロコロ変わった感じはないけど、面白くなったと思いますよ。洗練はされてるけど、くだらないという感じも残ってる。
ボブ 中身は多分、前回よりしょうもなくなったと思います(一同笑)。
満腹 前よりも、終わった後に何も残らんという(笑)。
──まさにROBの基本中の基本、という感じですね。
ダイチ そういう意味では、ROBがどんな劇団かを知るのに、ちょうどいい作品です。
THE ROB CARLTON『THE CIGAR ROOM〜煙と酔と旋律と〜』出演者。(前列左から)川下大洋、ボブ・マーサム。(後列左から)満腹満、御厨亮、村角ダイチ。
■「満腹満」という出島を経て、皆がROBの世界になじむ。
──劇団の歴史を振り返りたいのですが、旗揚げ公演の『THE THREE』(2011年)は、あらすじだけ読むとシリアスな話に思えますが、やはり今みたいな作風だったんですか?
ボブ もっとひどかったんじゃないですか?(笑)本当に好き放題やってましたから。コミュニケーションを取る気が一切ない、客席と。
ダイチ 若さが全面に出てましたよね。
ボブ でも初期はね、客席も友達とか親戚とか、全員お顔を知ってる人ですし、発表会みたいなもんでした。やりたいことも、今と変わらない。シークレットサービスがいて、大統領暗殺未遂があって……という話をやってました。言葉だけで(笑)。
──当時から、世界観が背伸びしていたわけですね。でもその次の『ロマンタイムス』(2011年)は、普通の新聞社が舞台と、少し色合いが違うようですが。
ダイチ そうですね。ファンタジーが強かった。
ボブ あの時はまだ、自分たちがやりたいものと違うことをやってみて「あ、こっちかもしれないね」というのを、判断する時期だったかもしれない。
ダイチ この第2回だけやったけどね(笑)。確かにこれは、やってて「違うな」と思った。
旗揚げ作品の『THE THREE』。シークレットサービスと怪しい男たちの丁々発止の? やり取りを描く。
──それで次の『コーチ オブ オーバル-Burn Our Boats-』(2012年)は、ラグビーのコーチブースが舞台と、いきなり趣味を全開にしてますけど、ラグビーの日本W杯のはるか以前にこれをやったのは、早計だったのではないかと思いますが……。
ボブ そうですね。生き急ぎました(笑)。
ダイチ 早かったなあ、あれは。あの頃は僕も、一公演だけ「C・オシリスキー」という芸名にしたりとか、個人的にも試行錯誤の時期でした。
満腹 僕も違ったよね? 一回目は。
ボブ 一回目は「福満・S・卓也」だった。
満腹 「(フリード)スパイク」って車に乗ってたというだけで、Sを入れられました(笑)。
──その次の『トーストマスターズ』(2012年)が、私が初めて観て「面白い劇団見つけた!」ってなった公演だったんですよね。
ボブ 『コーチ……』が、3人がっつり舞台に出る形だったので、演出が客観視できなくて不便だなあと思ったんです。そこでテコ入れをするために、ゲストをちゃんと呼んで、衣装もしっかり作りましょう、と。でもそれによって、劇団の形がより定まったので、ここがROBの紀元前・紀元後のポイントになりました。だから本当に、いいタイミングで観ていただきましたね。2年前に観てたら、ポイだったかもしれない(笑)。これが[アトリエ劇研]の、最後の公演でした。
──2017年に閉館した、京都の才能を数多く育てた伝説的な小劇場ですね。
ボブ でも僕ら、そういうことを全然知らなかったんです。「この辺でお金出したら借りられる会場」ぐらいの舐めた気分で行ったら、バチンコに怒られました(一同笑)。でも「しゃあないなあ」と言いながら、ちゃんといろいろ教えてくれるお姉さん方がいたので、最低限の勉強はあそこでしましたね。そうやって支えていただけてなかったら、もしかしたら続けてなかったかもしれないです。
THE ROB CARLTON(左から)村角ダイチ、ボブ・マーサム(村角太洋)、満腹満。
──そして第5回公演『スカイ・エグゼクティヴ』(2013年)から、立誠時代に突入します。
ボブ ここから舞台美術や音響などのスタッフに、経験のある方が入るようになりまして、一気に世界観が具体的に作れるようになりました。高級感とか、男しか出ないとか、ROBのブランディングがここで整ったという感じがします。
ダイチ 単純にお客さんが増えたので、お客さんに楽しんでもらえることを、ちゃんと考えるようになってきました。初見のお客さんに、どうやったらボブの台本が通用するか? 役者としてこういう時はどうすればいいか? というのを意識するようになったのは、立誠からですね。
満腹 あと、僕やダイチがほかの舞台に呼んでもらう機会がチョコチョコ出てきて、ROBが小劇場の人たちに認知してもらえてきたかな? という時期です。
──当時の立誠は「イエティ」「男肉 du Soleil」「夕暮れ社 弱男ユニット」と、京都の若手の虎の穴みたいになってたから、切磋琢磨できたんじゃないかと。
ボブ そうですね、いい流れにくっつけた感じでした。よくROBに出てもらっているK(高阪勝之)君や、今回出てもらうみっくん(御厨)とかに出会ったのも、その時期です。
ダイチ バンドの対バンみたいな感じで、いろんな劇団の人と知り合って「一緒に大きくなりたいね」みたいな話をする時代でした。
ボブ 「俺たちがあの頃通ってたライブハウスなんだよ」みたいな(笑)。でもそうやって横のつながりもなく、お客様とのコミュニケーションを考える機会もなかったら、やっぱり続けてなかったかもしれない。立誠は演劇を続ける上で、一つの原動力になりました。
『スカイ・エグゼクティヴ』(2013年)。プライベートジェット機が舞台のビジネス劇。
──そして5年目で、大阪の小劇場[HEP HALL]に進出です。
ボブ 一番大変だったのは、この時ですね。今まで牧歌的に作っていたけど、舞台監督とかもちゃんとスペシャリストを入れて、カチッとしねえとヤバいですよ……っていうプレッシャーが、急にかかりました。でも逆に作品作りや本番自体は、広くなってやりやすくなったというか、リラックスしてできる感じにはなったかと。
──とはいえHEP一発目の『エルダー・ステイツマンズ・ガーデン』(2015年)は、面白かったけど、サイズ感がまだ立誠のままという印象でした。
ダイチ 本当にそうでしたね。立誠では届いてたものが、HEPでは届かないということが結構あって、まあまあ衝撃でした。だから立誠の感覚でやってたら、多分無理なんやと。ボブの演出も、次の公演からちょっと変わりました。
ボブ まだこぢんまりとしてたんですよね。『THE WILSON FAMILY』(2016年)辺りから、劇場の広さをメリットにした芝居づくりがやれるようになったと思います。
──『THE WILSON FAMILY』は人数も多かったので、アンサンブルを作る上で、ダイチさんと満腹さんの役割も大きかったのでは。
ダイチ ボブはたまに「それ(ゲストには)伝わらんぞ!」っていうことを言ったりするので、間に入って「こうしたらいいんじゃない?」と、イヤイヤながら言ってました(笑)。それが上手くいかないと、アンサンブルの中で(ROBスタイルの)僕が逆に浮いてしまうので。
満腹 やっぱり、兄弟だから伝わってるものって大きいんですよ。だから同じ劇団員でも、ここ(ダイチ)とここ(満腹)の間も違ってたりする。特にHEP時代は、ダイチには伝わってるけど、客演さんはわかってへんやろうなあ……ということが、多々ありました。でも多分、僕が何か言っても「あ、それ違う」ってボブに言われるやろうから「まあいいか」と。
『エルダー・ステイツマンズ・ガーデン』(2015年)元老の邸宅で起こる政治的な駆け引きを描いた。
──では、満腹さんの役割は何なんですか?
ボブ だから緩衝材ですよね。「ROBの人でもわかってないから、客演さんも安心してね」っていう(一同笑)。
満腹 しんどくなったら、プチプチ潰してもいいよって(笑)。
ボブ もしかしたら、つなぎになってるのかもしれない。満腹がいるから(ゲストと劇団員で)パキッと色がわかれるんじゃなくて、グラデーションになるのかもしれないです……というか、出島?(一同笑)
ダイチ ROBの世界に入る前に、まずは出島で慣れてもらう。
満腹 初めてROBの稽古場に来た客演さんやスタッフは、僕が2人にイジられまくってるのを見て「大丈夫? 嫌な思いしてない?」って、心配してくれるんですよ。でも稽古中盤を過ぎていくと、だいたいみんな敵になっていく(笑)。
ダイチ 本土に入ったら、出島が異物になるんですよ。「出島って変じゃね?」って(笑)。
満腹 そう思った瞬間に、みんながイジる方にどんどん変わっていく。これ、どこでも言うてるんですけど、僕はROBの稽古場が一番アウェー感あります(一同笑)。
THE ROB CARLTON(左から)村角ダイチ、ボブ・マーサム(村角太洋)、満腹満。
■ビックリするような分野でも、ROBなら面白くできる。
(この辺りで取材場所の楽屋に、稽古に来た川下大洋や御厨亮が登場)
──HEP時代は、ROBの中ではどういう位置づけになってますか?
ボブ いいタイミングで来られましたけど、やっぱり『CREATIVE DIRECTOR』(2015年)で川下さんに出ていただいた頃から、ちょっと跳ねようとした感じはあります。でもそこで跳ね続けるんじゃなくて、先輩ゲストを呼んだ次の公演は、おなじみのメンバーでゆるく作りましょう……と。だから筋トレですね。ガッと負荷をかけて、インターバルをあけて、また負荷をかけることで、ちょっとずつ大きくなっていこうとした時期でした。
──川下さんも、やっぱり負荷になりましたか?
ボブ 最初は負荷でした。中途半端なことや、失礼なことはできないと思って……。
川下 いつから失礼していいと思った?(一同笑)
ボブ いやいや、聞いてくださいよ! でも一回やってみたら「ここまでROBとマッチングしていただけるのか」というので、選択肢が増えたというか。「こういう役をやっても、多分大丈夫」という可能性が、いっぱい広がりました。
『THE WILSON FAMILY』(2016年)爆破解体業を営む家族たちの仕事ぶりを見せていく。
満腹 今まで出てもらった三役、全部色が全然違うもんね。
ボブ 乱暴な親父からお婆さんまで。それは何をやっても、ちゃんと我々のカラーに違和感なくやっていただけるだろうなという、自信の元で。だから負荷というより、プロテインみたいな存在かもしれません。
川下 むしろ俺が、負荷を与えてもらってるんだよ。ROBはいろんな役がやれるから。だから俺にとっては、君らを利用できている(一同笑)。
──その川下さんが老婆を演じた『マダム』(2018年)で、初の東京公演が実現します。
ボブ 東京は、京都から大阪に行くよりもプレッシャーはなかったですね。ちゃんとHEPで筋トレができてたので(笑)。
ダイチ 劇場のサイズも(HEPと)同じだから、客席とのコミュニケーションとかを、そんなに合わせ直す必要もなかったし。お客さんも、思ったより前のめりで観に来てくれてはる感じがあったので、良かったなあと思いました。
『マダム』(2018年)。『ダウントン・アビー』を意識した英国風家族ドラマ。 [撮影]今西徹
──『マダム』は初めて女性メインのお話で、しかも女性のキャラクターを、あえて男優に演じてもらうというROBの実験作でしたが、普通は東京の一発目に実験作を持っていこうとはしないですよね。
ボブ 僕からしたら、HEPで作ったものの延長だったので、あんまり実験的という印象はなかったんですけど、あとあと考えたら、確かに一発目にあれはなかなかないと思いました(笑)。昨年の[ABCホール]のプロデュース(『ジェシカと素敵な大人たち』)では、初めてROBの芝居に女性キャストを入れることができたので、あれもありがたいお声がけをいただけましたね。だから劇研、立誠、HEP、ABC、そして今回の京都劇場と、確かに劇場と、そして人と会う運に恵まれた10年だったと思います。
──そしてこれが、コロナ禍以降初の劇団公演となりますが。
ボブ 自粛期間中は、やっぱり「ROBの存在とは何だろう?」と考えました。たとえば自粛がずっと続いたら、我々はどうしたいか? とか。こういう時期だから、映像とかの違う方向に行くという手もあるけど、果たしてそれは我々なのか? と。個人的な答ですけど「より舞台でしかできないことをしたい」と、考えるようになりましたね。変に映像に合わせようとするのではなく、もっと純粋に舞台をやりたいと思いました。
ダイチ 僕の中でROBは、まず村角太洋が描く作品を世の中に広めるというのが、一番の目的。僕はボブの作品が一番好きやし、どんな作家より面白いと思うんです。だから「ボブが辞めたらどうしよう?」と。僕は演劇がむちゃくちゃ好きで始めたわけではなかったから、そうなっても役者を続けるのか? いさぎよく辞めた方がいいのか? と、ずっと悩んでました。でもボブはまだ続けるみたいだし、だったら僕もやり続けようと。ちょっとずつ演劇も好きになってきているので、役者としてもしっかりやって行けたらなあと思います。
『SINGER-SONGWRITERS』(2018年)和歌集を編纂する平安貴族たちが巻き起こすドタバタ劇。 [撮影]今西徹
満腹 誰にも言ってないんですけど、一時期ホンマに「もう足洗おうかなあ」と思ってました。今回の話をいただいた時も、実は僕は反対したんです。みんながやるとしても、僕個人は49:51ぐらいで、出えへん方に傾いてました。
川下 大阪都構想並みの僅差だね(一同笑)。
ボブ 不正票があったかもしれないけど。
満腹 人の真面目な考えをイジるんじゃないよ(笑)。でもその間に、再開された先輩方や友達の舞台を観て、すっごいパワーをもらうことがあって、それで「やっぱりやりたいなあ」という方向に傾きました。このメンバーでできることを観たい人に観てもらって、何かを共有できる時間を一緒に作れたらいいなあと。だから来てもらえるお客さんには、ぜひ何も残らない、楽しい時間を味わってもらえたらと思います。
御厨 今満腹さん「誰にも言うてない」って言ってたけど、昨日僕に「実は俺、辞めようと思ってた」って、普通に話してましたよ(一同笑)。
ボブ 彼の「誰にも言ってない」は「誰かには言ってる」んですよ。「誰にも言うなと言われた」「いやいや、俺にも言われたよ」「みんなに言ってるやん!」っていうことが、何個かあります、今まで。
満腹 この兄弟には言ってないですけどね(笑)。
THE ROB CARLTON(左から)村角ダイチ、ボブ・マーサム(村角太洋)、満腹満。
──ではゲストのお二人にも、外から観たROBの魅力などを語ってもらって、締めさせていただきましょうか。
川下 ROBの舞台ってどれも、何かに世界レベルで長けた人ばかりが登場する話で、「ROBらしい」というジャンルみたいなものがあると思ってたんだけど、よく考えると出てくる人はみんなバラバラだよね。外国の貴族とか爆破ファミリーとか、平安時代の歌人とか。要は、ボブが書いたら何でもROBテイストになるんじゃないかと。これからはもっとビックリするような分野の話をやって、観てみたら「あ、いつものROBだった。面白いなあ」となるものを期待したい。そのためにも今回、ROBの原点のようなこの作品で、再出発するというのは面白いなあと思います。
御厨 棚からぼたもちのように決まったという京都劇場ですが、その棚ぼたをしっかりとつかんで、おいしくいただこうという公演だと聞いてます(笑)。なかなか複雑な社会状況ではありますけども、それでもすごく楽しんでいただけるお芝居を、ちゃんと作れるのがROBだと思いますので、ぜひそれを観ていただければなと思います。
THE ROB CARLTON『THE CIGAR ROOM〜煙と酔と旋律と〜』宣伝ビジュアル。

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