NCIS・村松拓と弦楽四重奏の共演『R
OCKIN’ QUARTET vol.4』、横浜で幕
 詳細レポートが解禁に

ROCKIN’ QUARTET vol.4 2020.12.5 Billboard Live YOKOHAMA(1st)
客席後方から現れたNAOTO率いる弦楽カルテット・NAOTO QUARTETの面々が、今年7月にオープンしたばかりのビルボード横浜のステージへと歩みを進める。位置につき、チューニングを始めると同時にSEがフェードアウト。心地よい緊張感を伴う静寂が場内を包むと程なく、サイレンのような不協和音気味のイントロが鳴り、村松拓が登場。曲は「Rendaman」だ。
Nothing’ s Carved In Stoneのレパートリーの中でも、特にライブでの人気を誇るこの曲。スネアの連打によってグイグイと推進していくアグレッシヴさが魅力の原曲を、果たして打楽器が不在の編成でどう料理するのか。そんな問いはもはや愚問である。過去にも名だたるロックの名曲の数々を原曲の魅力を損なうことなく、けれど大胆にアレンジしてきた『ROCKIN’ QUARTET』の妙技は今回も冴えわたった。弦をミュートしながらタップする奏法と低音域を16分で刻むフレーズを組み合わせることで、見事『ROCKIN’ QUARTET』流の「Rendaman」に仕上げ、一曲目から早くも、このライブが「ロックをクラシカルに」奏でるものではなく「ロックをロックとして」楽しんでもらう場であることを明示してみせたのだ。
背後の緞帳に散りばめられた電球タイプの照明が灯る中での「きらめきの花」では、パッと開けるような明るい響きをもったサビのメロディが、場所柄ちょっぴりあらたまった会場の雰囲気をほぐしていく。ただし、この曲しかり次の「One Thing」しかり、テンポこそ速くないが変拍子のセクションがあったり、各楽器のキメフレーズが随所に登場したりと、決して一筋縄ではいかない構成だから、その都度カルテットの演奏力とアレンジ力の高さに舌を巻くことになる。
「最高でしょ? 楽しんでいただけてますか?」「本当、楽しいなぁ」などなど、MCのたびに充実感を覗かせる村松は、3箇所6公演のみとはいえこの編成でのツアーを経た今、東京公演のとき以上に悠然とカルテットのプレイを背に受け、精悍な佇まいで豊かな声量を響かせていく。
各公演ごとに違ったゲストとの共演も今ツアーの見どころで、横浜にはこの『ROCKIN’ QUARTET』の初代ボーカリストであり、彼なくしては今日のこのステージは存在しないACIDMAN大木伸夫が登場。まずはACIDMANのライブでも欠かすことのできない一大バラードソング「世界が終わる夜」を披露した。大木と村松が交互に歌い継ぎ、2サビでは二人のハーモニーで魅了、Cメロからラスサビへと向かうクライマックスも実にエモーショナルだ。そしてアウトロで入ってくるストリングス、完璧。これは泣く。
一転、MCではこの日の昼食事情や、感染対策のなされた座席配置を“審査員席”に喩えたりと、リラックスムードになり、昭和の大名曲「愛燦燦」をしっとりと届けてからステージを去る際にも、大木が客席からの拍手に応え続けてなかなかハケなかったりと、2曲のみのゲストコーナーでも演奏からトークまで存分に楽しませてくれた。
ライブの折り返しとなる中盤は、1stと2ndとでセットリストが異なるブロックとなっており、東京公演(2nd)を配信で観た際には「シナプスの砂浜」が披露されていたが、1stではオアシスの「Whatever」をカバー。ストリングスが前面に出た原曲のサウンドを比較的ストレートに再現するアプローチが心地よく、ハスキー成分と太く豊かな声質を併せ持つ村松のボーカルは、どこかリアムとノエルの成分が混在しているようにも聴こえてくるから不思議だ。アウトロをアレンジしてパッヘルベルのカノンの調べを奏で出すと、村松が一旦退場。ここでNAOTOが今年リリースした「Stay With Me」を披露する。インストゥルメンタルだが、NAOTOの弾くメインフレーズはメロディアスで歌心があり、ボーカル曲に劣らず雄弁だ。曲が進むにつれて次第に音が厚く、熱くなっていく展開も胸を熱くさせる。
ステージに村松が戻ると、ライブはより深度を増していった。今年、コロナ禍の最中にリリースされた現時点での最新曲「Dream in the Dark」や、ジャジーな展開でも楽しませる「Alive」などを没入感とともに堪能するうち、気づけばあっという間に終わりの時間が近づいている。
ラストナンバーとして演奏されたのは、村松曰く「みんなの背中を押せるような曲」としてチョイスしたという「BLUE SHADOW」だった。決してアッパーな曲ではないが、平歌部分では掛け合いのような関係のボーカルとヴァイオリンが、サビで力強く並走しながら壮大なサウンドスケープを描いていく様は圧巻。なんてドラマティックな展開だろうか。
アンコールに応えて再登場した村松は現在の音楽シーンを取り巻く状況について、いろいろな準備をして覚悟を持ち、さらには演者も観客も気持ちを合わせないと、容易にはライブが開催できなくなった、と言及。ただ、そのことであらためて音楽の持つ力を感じるようになり、そして、それを必要としてくれる人がいることも強く認識した、とも語り、そんな大切な存在へ捧げるかのように「Adventures」を、熱のこもった演奏と歌唱で届けたのだった。
「『ROCKIN’ QUARTET』、まだまだ成長していくんだなと」
村松との共演及び、非常にテクニカル&トリッキーなNothing’ s Carved In Stoneサウンドのアレンジと演奏を経験したNAOTOは、そう言葉に力を込めていた。ほぼ全てのアーティスト、イベントやフェスがそうであったように、2020年の『ROCKIN’ QUARTET』は、予定されていた初のホール公演が中止となるなど、思うようには進まなかったが、それでもこうして年の瀬にはツアーを無事完走できた。しかも、これだけの完成度をもって。気が早いと言われようが次回以降の展開が気になって仕方がないし、「いつかまた一緒にやれる機会があったら」と語った村松との再共演がいつ、どのように果たされるのかも、いまから楽しみだ。

取材・文=風間大洋 撮影=Taka”nekoze_photo”

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