今だからこそ生み出された“楽しい演
劇の匂い”が満載! 「舞台『幽☆遊
☆白書』其の弐」ゲネプロレポート

2020年12月5日(土)、品川プリンスホテル ステラボールにて幕を開ける「舞台『幽☆遊☆白書』其の弐」。その開幕前日に行われたゲネプロの模様をレポートする。
2019年夏に上演された初演に続く『其の弐』は、前回からの続きである「霊界探偵編」で構成。1幕は“陰湿な人間”に寄生する魔回虫を退治するため、浦飯幽助(崎山つばさ)、桑原和真(郷本直也)、蔵馬(鈴木拡樹)、飛影(橋本祥平)が四聖獣との戦いに挑むエピソードが、2幕は人間に捕らえられた氷女の少女・雪菜(田上真里奈)を救出するエピソードが描かれる。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年

前回から続投の崎山は修行を経てさらに強くなった幽助としての堂々たる空気を纏い、和真役の郷本はあくまでも覇気満載のオラオラのイケイケ。血気湧くふたりのコンビネーションはストーリーを引っ張る欠かせない要素だ。また、ひとたび薔薇棘鞭刃(ローズ・ウィップ)を振ればもうそこから目が離せなくなる秀麗な鈴木の蔵馬と、ツンデレな不器用さがその強さを後押しする橋本の飛影、新たな仲間となる頼れるふたりがキレのあるアクションで物語を華麗に彩っていく。

(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年

(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
同じく続投組の雪村螢子(未来)は安定のヒロイン感、ぼたん(平田裕香)は狂言回し的な役割も伴い、観客にとってストーリーを見失わないガイドの役目も担う。そしてコエンマ(荒木宏文)は……主に賑やかし&こまめな除菌担当! いないとさみしい“特別枠(!?)”の活躍がニクい。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
今後の動向が気になる幻海(エリザベス・マリー)、無慈悲な青龍(榎木智一)、幽助と激しいバトルを繰り広げた朱雀(木津つばさ)ら、初登場のキャラクターたちも見せどころをキッチリ押さえ、その存在を観客の胸へと刻んでいった。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
さらに……あくまでクールに暗躍しつつ、逃れられない企みを抱く左京(荒木健太朗)、死ぬほど強い戸愚呂弟(片山浩憲)&戸愚呂兄(中河内雅貴)の出現も、続編への期待が高まる要素。発表時から身体を自在に変形させる能力が舞台でどう描かれるのか話題になっていた戸愚呂兄は、舞台に現れた瞬間からまさに兄! 演じる中河内がダンサーとしての本領をいかんなく発揮し、コンテンポラリーな身体表現を用いてぬるりとしなやかに自身を“操縦”。物言わずとも伝わる不気味さで現実の兄を降臨させた。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年

複数の黒子がそれぞれに持った身体のパーツを組み立てることで現れる玄武、あからさまにスクリーンに戦闘過程のイラストが映し出される白虎(そこそこ長尺の一人芝居とパワーマイムで白虎との死闘を見せ切る郷本のターンは、大いなる役者魂に惜しみない拍手喝采を!)などなど、アナログな手法で表現される敵との戦いは懐かしくも心地よく、そのテンポ感は少年漫画のページを繰っていくあの感覚であり、“これぞ舞台”な生感。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
伊藤栄之進、加古臨王、荒木宏文の共同演出というスタイルも『其の弐』からのトライ。2.5次元舞台を知り尽くした3人だからこそのアイデアと遊びゴコロを持ち寄り、ソーシャルディスタンス的な実用性があり、且つ、いつ観ても楽しい演劇としての強度を持った見せ方を導き出している。無機質なセット、そこへ効果的に投影される映像と芝居のコラボレーション、役者の力量に多くを託して時にベタに伝える人間味の重視、溢れる熱量──要所要所に感じられる小劇団テイスト、“楽しい演劇の匂い”は、原作の作風にもしっくりマッチ。なにより、役者たちがそんな空気を大いに楽しんでのびのびと板の上に立っている幸福感がしっかりと観客にも伝染、そこから生まれる一体感は、本作の大きな魅力だと言えるだろう。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
愛する人のため、大事なものすべてのため、最後は笑顔できっちり悪を成敗する。幽助たちの清々しくて真っ直ぐでめちゃめちゃ熱い冒険活劇に、素敵な元気をもらえる2時間である。
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
(c)舞台「幽☆遊☆白書」其の弐製作委員会  (c)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
取材・文=横澤 由香

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