LE VELVETS、原点回帰のコンサートツ
アーがいよいよファイナル~ツアー&
アルバム『PRAYLIST』にそれぞれが込
めた想いとは?

テノールの佐藤隆紀、佐賀龍彦、日野真一郎とバリトンの宮原浩暢の、音楽界にとどまらず、ミュージカル界でもそれぞれ顕著な活躍を続けている四人によるヴォーカル・グループ「LE VELVETS」の2020年コンサートツアー『PRAYLIST』が2020年11月29日(日)いよいよ東京・Bunkamuraオーチャードホールでツアーファイナルを迎える。
LE VELVETS の秋のコンサートツアーのタイトルは『PRAYLIST』。10月21日にリリースされた「You Raise Me Up」「アヴェ・マリア」「夜想曲」「四季~花見鳥~」「きずな」「Hallelujah」「宇宙のファンタジー」計7曲のラインナップからなるアルバムのタイトルでもある。2020年世界を覆った新型コロナウィルス感染拡大の収束にはじまる、人々の安寧を願う祈りの「pray」と、大切な楽曲を集めた「playlist」の二つの言葉をミックスしたものだ。
そんなコンサートツアーは、そのニューアルバムからの楽曲を中心に、クラシック、ミュージカルナンバー、映画音楽、カンツォーネなど、LE VELVETS ならではの多彩なジャンルが詰め込まれ、四人の絶妙なハーモニーはもちろん、それぞれのソロ曲、更に楽しいトークが楽しめる二部構成で繰り広げられてきた。
そのコンサートツアーへの思いをSPICEで独占インタビュー。メンバーそれぞれが自粛期間を経た貴重なステージと、アルバムコンセプトついて語ってくれた。
■LE VELVETSでしかできないステージに
LE VELVETS CONCERT TOUR 2020『PRAYLIST』
──今回のステージに込めた思いから聞かせて下さい。
日野:『PRAYLIST』ということで祈りをテーマにしているので、結構しっとりした曲が多いですから、単調になってしまうのではないかという心配が当初はあったのですが、やってみてお客様に僕たちの思いが届く構成になったかなと感じました。
宮原:ファンクラブイベントや配信コンサートはやっていたのですが、やはりこのツアーで同じ会場でお客様と一緒にコンサートができるということが本当に尊いなと感じました。
佐賀:僕たちは今年結成12周年を迎えたのですが、このコロナ禍に直面した中で、この業界に身をおく全ての人たちがしているのと同様に、どんな構成にして、どうお客様に投げかけていけば、思いをお伝えすることができるのか?を考えながら一から作っていきました。現実としてかなりの制約があるのですが、その中でクラシックをベースにしたエンターテインメントという自分たちのカラーが出せたステージになったのではないかと思います。
佐賀龍彦
やっぱりお客様も会場に足を運んで下さることに、今までとは全く違うハードルがあったと思うんです。ご家族に反対された方もいらっしゃるでしょう。ご自分のことだけではなく、他の誰かにも伝染したくないという思いが混在している中で、尚会場にいらして下さった方々に、やっぱり音楽っていいな、生のステージはいいなと思ってもらえる時間にしたいと思いました。
佐藤:今回はコーナーでつないでいく進行をしていて。LE VELVETS の歴史で言いますと、何年か前まではこういうエンターテインメントなステージをよくお伝えしていたのですが、そこから近年はクラシカルクロスオーバーの世界に的を絞っていた時期があって。ですからコンサートツアーでコーナーを作っていくというのがちょっと久しぶりだったので、これは正直どう出るかな?という不安もあったのですが、実際にやってみてやはり良いな!と。色々な音楽を楽しんでもらえる。それは本当に僕たちにしかできないことだなと感じたので、制約の中でアイディアを出し合って僕たちなりに皆様に楽しんでもらえる、僕たちが持っていたものの中のゴールデンロードに立ち返った部分があって、そこに手応えを感じています。
LE VELVETS CONCERT TOUR 2020『PRAYLIST』
──皆さんのソロコーナーなどは、もっと長く聴きたい!と思いました!
佐藤:嬉しいです。コンサートツアーでソロを歌うというのも、久しぶりでしたし、特に、一部、二部両方にソロコーナーを入れるのは初めてなんです。と言うのも最近メンバーそれぞれが個々ミュージカルの舞台に出ることも多かったので、ソロ活動は銘々やっているから、VELVESでは皆で歌うシーンをたくさん増やそうよ!と思っていたのですが、今年はこのコロナ禍で様々な舞台が中止になったり、縮小されたりしましたし、そうした枠組も一度取り払ってソロも入れた見せ方をしていったのが良かったなと思っていました。
佐賀:最初はボリュームが薄くなるんじゃないかと心配したくらいだったのに、結果としては曲を絞らないとダメだというくらい盛りだくさんになりましたね。
──ソロ曲はどういう形で皆さんお決めになったのですか?
佐藤:例えば映画音楽のコーナーでしたら、まずそれぞれが自分の声に合いそうな曲を選んで持ち寄ったんです。一度それをテーブルに出して、ちょっとここの曲は似ちゃうかな?と思ったら「じゃあ僕が変える」というような形で話し合って。全体の流れに緩急が出る構成にしました。
佐藤隆紀
──ソロが入られることで、また四人で歌われるハーモニーの厚みも際立って、双方が素晴らしい効果でワクワクしました。
佐賀:デビュー当時は自分たちでは柔軟な考え方をしているつもりでいましたが、やっぱりどこかクラシックにこだわっていたところがあったんだなと今にして思います。それが12年経って、自分たちが考える、自分たちだけのエンターテインメントというものが確立してきた上でのひとつのステージだと思います。
──ある意味で原点に帰ったステージということも言えるのですね?
宮原:そうですね。こういう状況だけに、誰かとコラボするのではなくて、メンバーだけで何ができるのか?を考えていきましたから。
日野:ザ・LE VELVETSというものになっているかと思います。たくさんのスタッフの方々からご意見も頂いていますが。
宮原:それはもちろんね。
佐藤:『PRAYLIST』のアルバムに入っている曲は祈りがテーマなこともあって、どちらかと言えばしっとりした曲が多いんです。その7曲を入れて尚、全体にうねりを出すにはどうしたらいいか?を悩んだりもしたのですが、やはり『PRAYLIST』というコンサートツアーでは、聴きに来て下さった皆様に元気をお届けしたという気持ちが強かったので、7曲以外のところではたくさん楽しんでもらって、笑顔で帰って頂けたらいいなと。
■アルバムに込められた「祈り」への思い
LE VELVETS CONCERT TOUR 2020『PRAYLIST』
──そのアルバムについてもお訊きしたいのですが、祈りをテーマにということで、それぞれの選曲はどのように?
佐藤:まず皆さんにこの時期にどういう曲を届けたいのか?というところが最初でしたよね。
佐賀:そうだね。
佐藤:そこからやっぱり今届けたいのは「祈り」だよね?というところにつながって、選曲をしていったので、しーたん(日野)や佐賀さんのオリジナル曲の歌詞も、今の時期だからこそ届けたい思いを書いて作りましたし、他の選曲もこの時期だからこそということで。中でも「宇宙のファンタジー」はいつも色々とアドバイスして下さるスタッフの方から「この曲はどう?」と推薦して頂いたもので、そのジャケットがものすごく宇宙を感じるものなことに僕はびっくりして。
佐賀:長岡秀星さんのイラストだね。
佐藤:そうそう。その絵を見て宇宙とつながる祈りのパワーを僕は感じたので、今回のアルバムに入れたら面白いんでしゃないかと選んだものです。そういうご縁もあって「祈り」というコンセプトの中で、意外にもバリエーションもかになったかなと思っています。
LE VELVETS CONCERT TOUR 2020『PRAYLIST』
──佐賀さんは歌詞を改めて書かれたのですよね。
佐賀:やっぱり今だからこそ思うことを歌詞にしたくて。と同時に直接会えなくても誰かを想像できるような、あまり具体性のあるシチュエーションを限定してしまうストーリーにするのではなく、イマジネーションを広げられるものにしたいという思いがありました。聴いている方にある種のBGMのようにふわっと入っていける曲を目指したので、最初は全編を四声で行こうかとも思ったのですが、ソロやデュエットも入れるなどハーモニーのチョイスもして曲にしていきました。
──具体性を避けることで、聴いている千差万別の方々お一人お一人にむしろ近づくというイメージでしょうか?
佐賀:「ノクターン」の名曲自体の力があるので、抽象的な言葉を乗せても、その人なりの世界として入っていってくれるんじゃないか?と思っています。
──日野さんはピアノの弾き語りをされています。
日野:自粛中に作った曲なのですが、自分自身も精神的に辛いところがたくさんあって。でも辛いのは僕だけじゃないし、皆が辛いものを抱えている今、僕に何かできることはないか?と思って曲を作りました。生きているということは季節がめぐっていくことですし、そうした人生の中には辛いことも楽しいこともありますが、その経験が全てその人の糧になると思います。色々な出来事は人間を作る為のエッセンスでもあるので、それは大切にしたいと思いました。更に1人ひとりが生きている、その存在はかけがえのない素晴らしいものなんだと伝えたかった。
日野真一郎
人生には春もあれば冬もありますが、でも巡らない季節はないですから、厳しい冬がきても必ず春が訪れるので、「四季」のメロディーをモチーフにして曲を作りました。聴いていて僕自身も元気になりますし、皆さんこの状況で多かれ少なかれ心が疲弊していると思うので、少しでも僕たちの歌で音楽で、元気や勇気がわいてくる曲を作りたいと思ってできたのが「四季~花見鳥」です。
──本当に今年が始まった時には想像もしなかった劇場が全て閉まってしまうという経験もした中で、必ずまた春がくるよ!という歌声にはたくさん勇気を頂きましたが、歌っていらしていかがですか?
宮原:二人のオリジナルソングにはメロディーにはクラシックの本当に有名なものが入っていますし、聴いて下さる方を力づけたいという思いは共通していても、その伝え方や表現が異なるのが素敵だな、いいなと思います。また、今回のアルバムを「祈り」というテーマで作ろうと決めた時にパッと浮かんだ宗教曲、アカペラでの「ハレルヤ」等はコンサートで短く歌っていたものを「アルバムに入れる為にもっと伸ばそう」と考えました。本来は大合唱曲なんですけれど。
佐賀:女声も入っていますしね。
宮原:そうそう。それを男性四人でどう厚さを出すかとか。「アヴェ・マリア」等は本当に僕らも教会で歌ったり。
宮原浩暢
佐賀:厳島神社でも歌ったよね。潮の満ちてくる音が聴こえてきて。
宮原:お能の舞台だったのですが、満潮になるに従って土だった部分に潮が満ちていく、本当に神聖なものが感じられて。本当に祈りが届きそうな、通じそうなもの。日本語でなくても届くものがちゃんとあるんです。一方で僕たちが毎年山口でやっている「きずな音楽祭」の主題歌である「きずな」、僕たちが山口で市民の皆さんと同じステージに立って皆で一緒に歌うことで生まれたエネルギーやメッセージがあってね。こういう時期でなかったら、自分たちのアルバムに入れられたかどうかわからない曲も入れているので、皆さんにその思いを感じ取って頂きたいです。
佐賀:やはり古くから残っている曲には、たくさんの中から時代を超えてきた力があります。それを含めて、僕はやっぱり音楽が必要ではない人はいないんじゃないかと思っていて。その中でも僕たちは音楽を職業にしているので、コンサートツアーとこのアルバムを通して、皆さんに祈りと、笑顔をお届けしたいので、是非お聴き頂けたらと願っています。
取材・文=橘涼香

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