【徳永暁人 インタビュー】
“リニューアルカバーアルバム”、
僕の中ではそういうイメージ
一石を投じてみたくて
全編の歌と演奏を一発録りにした
全15曲、それぞれに新しい魅力から出る面白さがありますが、ご自身が楽曲として面白味を改めて感じたものはありますか?
今回は何の打ち合わせもなく、まったくアレンジデモも作らず、ドラムの車谷啓介くん(from Sensation)とギターのKEIくんを呼んで、コードネームのメモだけを渡して“こんな感じでやりたいんだけど”って言って一発録りしたんですね。だから、何が起こるか分からない偶然性みたいなものが、ものすごく詰め込まれていて。「Feel fine!」は倉木麻衣さんの曲ですけど、“頭からギターを弾き倒して。そこからカウントが入って、俺が歌い始めるから”って(笑)。あと、ZARDの「永遠」は原曲はすごくメロウなバラードですけど、“これ、「ホテル・カリフォルニア」みたいにしたいな”って即興でやってみたり。これは他の曲もそうなんですけど、不思議なもので歌詞が別の意味で聴こえるんですよ。女性の歌詞を僕が歌うことによって、ダブルミーニングに聴こえてくる曲が結構ありますね。
確かに、今おっしゃった「永遠」はまったく違う風景が浮かびました。
そこなんですよ。倉木麻衣さんの「渡月橋 ~君 想ふ~」は、僕、ピアノを弾いたんですけど、それも“何小節かドラムを叩いて。なんとなく僕がピアノを弾き始めたら、それがイントロだから”って言って。原曲を作った時はアレンジだけで10パターンくらい作って、すごく構築して、計算もして…それこそ一音レベルで変更していたのに、それを即興でやるとこうなるっていう(笑)。でも、“俺が作ったメロディーがあればなんとかなる”って信じてやっているので、それを聴いてもらえれば満足かなって。
BAND-MAIDの「Don’t let me down」は、今回のアイディアなしではこういうかたちで出会えなかったかもしれないですね。
これは英語の歌詞を僕が書いてますからね。しかも、叫びまくってるし。doaでは叫んだりする役じゃないので(笑)、こういう叫ぶロックを歌っているところも面白がってもらえればと。でも、普段はこうなんですよ。今回なぜ全編一発録りでやったかと言うと、今ってDTM…コンピューターを使うことで音楽を作ることがすごく安易になってきていて、音楽の知識や演奏技術がなかったとしても、高い演奏力があるような音楽を作ることができちゃう。それはそれで素晴らしいことだし、僕もそのテクノロジーを使ってるんですけど、そういうものを排除して、歌と生演奏だけでやったらどうなるのか、この時代に一石を投じてみたいっていうか。
マルチプレイヤーの徳永さんがそのスタイルで一石を投じるというのは、ある意味で新しい意義を感じますね。
僕は “何をやってらっしゃる方なんですか?”って問われたら、“作曲家です”って答えているんです。自分の信念は“歌を歌って、曲を作る”というところにずっとあるので。だから、今回はとにかく歌を聴いてほしいですね。いろんな表現を詰め込んでますけど、これからもまだまだ刺激を受けていく途中段階として聴いてもらえたら嬉しいです。
新しい未来への足がかりとなる一歩?
そう! 過去を振り返るのは興味がないので(笑)。“セルフカバーアルバム”っていうよりも、僕の中では“リニュアルカバーアルバム”みたいなイメージですね。あと、“作家を目指している若い人を応援できるようなアルバムになったらいいな。そういう人たちの人生のヒントになったらいいな”っていうのも、実は僕の中に裏テーマとしてあります。
取材:竹内美保