ASIAN KUNG-FU GENERATION、“当たり
前”だったコンサート活動の有り難さ
を確かめ直した公開収録ライブを振り
返る

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2020年12月18・19日に、同年10月に公開収録したライブ『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2020 酔杯2 〜The Song of Apple~』の様子をイープラスのストリーミングサービス「Streaming+」で配信する。
ライブは10月26・27・28日に、KT Zepp Yokohama(横浜市西区)で観客を入れて開催したもの。元々、全国7都市をめぐるツアー『酔杯2 ~The Song of Apple~』として5月から展開する計画だったが、新型コロナウイルスの影響で中止に。各地でオープニングゲストとして出演を予定していたNOT WONK、Jurassic Boysなど8組が、3日間に分かれて登場した。3時間以上を見込む“豪華版”配信ライブは、これを2日間にまとめASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーと振り返っていく。
ボーカル・ギターの後藤正文は「“当たり前”だったコンサート活動の有り難さを、確かめ直すような時間だった」と振り返り、「会場で楽しんでくれた観客のためだけではなく、全国津々浦々の、例えばこの文章を読んでくれているあなたに届けと、僕たちは演奏しました。四方八方に輝くミュージシャンたちのエネルギーをオンラインで感じて」と呼びかけている。
この記事では、後藤のメッセージと併せて、10月28日のKT Zepp Yokohamaでのライブの模様をお届けする。
■後藤正文メッセージ全文
残念ながら中止になってしまったアジカンの対バンツアーですが、10月の末に無事収録を終えて、有料配信をすることになりました。
共演してくれたのは、今をときめく新しい世代のアーティストたちです。若さへの羨望ではなくて、未来への期待と信頼に似たフィーリングを持って彼らを眺めていると、ギラギラとしていた青春時代を思い出して、自分のなかで絶えずに燃え続け形を変え続けている表現への志が、新たな枝葉を得るように、フレッシュなエネルギーで満ちていくのが分かります。
僕は全バンドをステージの袖から見て、とても感動しました。
同時にチケットを買って心待ちにしてくれていた人たちのことを思って、悔しい気持ちも心の隅っこに湧き上がりました。もっと多くの人たちに、生で届けたかった、と。
当日は、僕たちASIAN KUNG-FU GENERATIONも含めて、「当たり前」だったコンサート活動の有り難さを、確かめ直すような時間だったと思います。
会場で楽しんでくれた観客のためだけではなく、全国津々浦々の、例えばこの文章を読んでくれているあなたに届けと、僕たちは演奏しました。いつか僕たちと同じ時間を共有してくれる観客たちとの未来に向けた演奏でもありました。
四方八方に輝くミュージシャンたちのエネルギーをオンラインで感じてくれたら幸いです。
また集える日を願いながら。
後藤正文
ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2020 酔杯2 ~The Song of Apple~
2020年10月28日 KT Zepp Yokohama
2020年10月26・27・28日に、KT Zepp YokohamaでASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブが行われた。出演を予定していたフェスなどが中止になり、バンドが有観客の舞台で演奏したのは、昨年末に出演した『COUNTDOWN JAPAN19/20』以来、約10カ月ぶりのこと。最終日のステージでは後藤が「本当にタフな時代だけど、今を一秒一秒生きて、またどこかで生きて会いましょう」と呼びかけていた。
KT Zepp Yokohamaは、3月に完成したばかり。真新しい会場に入る高揚と、コロナ禍でのライブへの複雑な思い。開場を待つファンの顔には期待と不安が入り交じっていた。1階フロアには、密集を避けるためイスを設置。隣り合わないよう一席ずつ間隔を開けて腰掛ける、飛沫感染防止のため、声を出すことを控えるなど、新しい生活様式の中での配慮があちこちに見られた。
対バン形式のライブでは連日、最後に出演したアジカン。4人が登場しても“立ち上がって、いいのだろうか……”と戸惑いが見えたが、一音、一音紡ぐ音に吸い寄せられるように立ち上がっていく観客たち。披露した「センスレス」の中で後藤が叫んだ“世界を悲しみが覆っても、僕はずっと此所で歌う”という思いは、コロナ禍の現在と重なった。
声を出すことを控えるファンに向けて後藤は「人間の情報って、声だけじゃない。皮膚からも“楽しいです”って様子は伝わってくる」と緊張をほぐすように語りかけた。「音楽を好きなオレたちの現場(ライブ空間の意味)がどうなっていくのか分からないけれど、今この時を自分らしく楽しんで」。会場に安堵したような空気が広がっていた。
羊文学の塩塚モエカを招き入れ、新曲「触れたい 確かめたい」を披露した(山川哲也撮影)
新曲「触れたい 確かめたい」を披露した場面では、対バン出演したオルタナティブロックバンド・羊文学のボーカリスト・塩塚モエカを招き入れた。「この時代に、こんな響き方をするとは思わなかったけれど、触れたり確かめたりするのは、大事だよね」という後藤の言葉に、大きく頷きながらステージを見詰める観客の姿があった。
コロナ禍でライブができなかった状況などについて後藤は、「若いバンドで今これからという人たちは大変だと思う。もし自分たちだったら、くらうなと思って。新しい音楽を若い子たちが鳴らして、音楽は回っていく。(見通しが難しいけれど)ちょっとずつ不安な気持ちを持ち寄って、転がっていくしかない」と真剣なまなざしで話していた。
後藤が喜多に歩み寄り始まった「マーチングバンド」では、向かい合った二人がギターの音を少しずつ膨らませていった。生まれた音の火を盛らせるように。ベース、ドラム、キーボードが音を紡ぎ、複雑な模様を編み上げていく。心を解放するように、真っ白に輝いたステージには希望があふれていた。
ASIAN KUNG-FU GENERATION /喜多建介(Gt)
ライブが終われば、またそれぞれの日常が始まる。「ボーイズ&ガールズ」では、後藤の歌声、力強い伊地知潔のドラムが聴衆を鼓舞した。後藤は「100年に一度のパンデミック。ニュースを見るだけで削られる」と吐露した後、「音楽を何でやっているのかって考えたとき、クソみたいな日常の中の端っこに、こんな幸せな時間があるのかって思って欲しいから。この先にイヤなことがあっても、もう1回たぐっていけばまたこの美しい瞬間に戻ってこられるって。また素敵な空間が来ることを願って」と思いを込めていた。
ASIAN KUNG-FU GENERATION /伊地知潔(Dr)、山田貴洋(Ba)
コロナ禍で喉の筋肉が衰え、声が出にくくなっているミュージシャンも少なくないという。後藤も「1発目(初日)は全然出なかった」と話したが、「こうやってライブをすると身体が戻ってくる。3デイズをやって、オレの背筋が身を持って感じている。みんなからエネルギーをもらって、めちゃめちゃ声が出た」と3日間を振り返っていた。
取材・文=西村綾乃 撮影=山川哲也

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