珠麟 -しゅりん-

珠麟 -しゅりん-

【珠麟 -しゅりん- インタビュー】
“これから私も、
あなたも何にでもなれるのよ”
っていう新しいスタート

2013年から音楽活動を開始していた珠麟-しゅりん-が日本コロムビアの老舗レーベル“BETTER DAYS”よりリリースしたミニアルバム『真っ白。』で、その活動を本格化! 作詞作曲、アレンジはもとより、ミックス、マスタリングまでマルチにこなす彼女が創造する楽曲、その制作背景についてを本人に直撃した。

自由に音楽をやれるんだったら、
やりたいことをやってみよう

ミニアルバム『真っ白。』は約4年振りの音源となりましたね。このくらい期間が空きますと、待望の音源と言えるとも思うんですが、こうして音源が完成した今のお気持ちはいかがですか?

思うように身動きが取れない時期があったりしたので…でも、その中でも黙々と曲を作ってはいたから、今回はそれを音源化した感じです。ファンの人たちからも“新しい音源はまだですか?”と言われ続けていたので、そこはちゃんとかたちにしたいと思ってました。

この間、創作活動を止めていたわけではなかったんですね。

そうですね。ブッキングライヴを組み込んでライヴでは新曲披露したりして。動かしてもらえないならばと、ひとりで活動しちゃってました(笑)。実家のクローゼットの中に卓を置いて、そこで制作し、そのままCDにしてたりしてたんで、むしろ業界のことが分からないレベルでしたから。

もともとシンガーソングライターとして、アーティストとしてひとりでやっていたので、組織で動く業界のほうがイレギュラーなんでしょうね。

そうなんです。だから、“人と作る”ということがよく分かってなくて。今回いろんな方と作ったんですけど、すごく戸惑いました(苦笑)。関わり方が分からないんですよ。どこまでどう言っていいのか、距離感も分からなくて…緊張とは違うんですけど、変な感じでしたね。

アレンジャーに依頼するにしても、どんなふうに伝えたらいいか分からないとか?

自分が一度着手しちゃうとこだわりが強くなるから、結構うるさく言ってしまって困らせちゃいました(苦笑)。ライヴでもやっていた曲なんで、あんまり大きく変えたくなかったし。あとは、他人に音を録られ慣れていないというのもあってスタジオで録ってもらうという作業が本当に大変でしたね。自分でRECボタンを押して録って、ミックスして、マスタリングして、CDにしてたんで、全行程に誰かスタッフがいるというのはすごく不思議な感じで。そういう意味では、自分にとって新しい挑戦ではありましたね。

ただ、具体的な楽曲に触れますと、『真っ白。』の4曲目に會田茂一さんがアレンジした「猫背。」がありますけど…これは褒め言葉として受け取ってほしいんですけど、ものすごく妙なアレンジじゃないですか?

そうですね。アイゴン(會田の愛称)さんには“変態ですね”と伝えました。

あははは。こういう仕上がりになるというのが他の人とともに楽曲を作る面白さだと思うのですが。

最後の最後にサックスを入れてたんですけど、“これ、大丈夫かな?”って一瞬思いましたね。自分では絶対にやらないアレンジになったんで、不思議な感じというか、これはこれで面白かったです。

「猫背。」はバンドサウンドだけでも十分にスリリングなんですけど、そこにさまざまな音が重なっていくことで、スリリングさに拍車がかかってますよね。

妙ですよね、あれ(笑)。そういうところは興味深かったです。

本誌では初インタビューということもあって、かなり初歩的なこともお訊きたいんですけど、『真っ白。』収録曲はレトロ感があると言いますか、もっと言ってしまえば、昭和歌謡感がありますよね? こういう音楽性を持つに至ったのはどうしてなのかを知りたいのですが。

父がドラムをやっていて、母がヴォーカルとピアノをやっていたんで、ふたりがやっていたバンドの曲を家でずっと聴いていました。それが歌謡曲やジャズだったんですよ。まず、それが身体に染みついているというか、好きだというところはあるんですけど、そもそも私が珠麟-しゅりん-を始めた時、そういう歌謡曲を十代とか若い人で歌っている人がいなかったんです。自分自身も若い頃にそういう曲を歌ったりしたことがあったんですけど、“まだ早すぎる”って怒られて(苦笑)。だから、せっかく自由に音楽をやれるんだったら、やりたいことをやってみようと。でも、ただの歌謡曲だと面白くないんで、そこに何かの要素を加えたいと思ったんです。小学校3年生の時に地域のことを調べて発表するという授業があって、図書館へ行ってみんなでそれぞれいろんな歴史を調べるんですけど、その時にたまたま遊郭についての本を手に取ってしまって…みんなが“どこどこの井戸はどの時代に作られて~”とか“この神社は~”と調べている時に、私は遊女についてずっと調べてたんですね。で、それを発表したら、先生に“これは点数をあげられません”って言われてしまって(苦笑)。

そりゃぁ、そうなるでしょう(笑)。

ですよね(笑)。私、そのことがずっと忘れられなくて、小4の時に「金魚売りの恋人」って詩を作ったんですよ。遊女の恋の話だったんですけど、“珠麟-しゅりん-”という名前はそこから取ったんです。まずグラフを作ったんですね。“私は和が好きだな”ってところから“和”で連想するものを挙げて、風鈴とか金魚とかってグラフを延ばしていって、最終的に名前にするのは何がいいかと考えた時に“金魚”が出てきたんです。何か遊女ともリンクしたんですよ。そこから“それじゃあ、和という和を入れた曲を作ろう”となり、まだ曲作りもよく分からない中で作っていって、今のスタイルになったという。なので、フリーでやっていた時は自分の音楽性を“平成歌謡”と呼んでました。

なるほど。…とはいえ、遊郭の話は強烈ですね(笑)。

あははは。何か惹かれてしまって。最初に手に取った本の表紙が素敵だったんですよ。そこに惹かれて…ただ読んでいただけだったんですけど、読めない漢字も多かったんで、帰ってからもいろいろと調べてるうちにどんどん惹かれていって、“すごい世界だな”と(笑)。

『真っ白。』収録曲の歌詞にも悲恋が描かれたものもありますし、その辺は直接的に影響を受けているんでしょうね。

「たぶらかし」という曲はこっちは好きだけど、向こうにまったく相手にされず、たぶらかされて…みたいな歌詞ですけど、昔からそういう方面の歌詞は書いてたんですよ。でも、“あなたが歌うと説得力がない”って言われることが多くて。“じゃあ、もう少し人が共感できる方向にして…”ってことで、「たぶらかし」を作ったんです。これなら共感も少しは得られるかなと。

ご本人の中では現実寄りの歌詞だと。

そうです。最近は作ってないですけど、本当に“遊郭シリーズ”を作っていたことがあったんです。“金魚郭”という珠麟 -しゅりん-による遊郭のお話で、ワンマンライヴのタイトルも“一夜限りの金魚郭”でずっとやってたり。そういう城を立てちゃって、その中で起きていることをモチーフにして、女性ならではの掟や苦労などを歌詞にしたシリーズを作っていた時期があるんです。でも、今回はそっちじゃなくて、もうちょっと日常に近い書き方をしました。

冒頭で私は珠麟-しゅりん-さんの音楽は昭和歌謡テイストがあると申し上げましたが、珠麟-しゅりん-さん曰く“平成歌謡”なんですね。『真っ白。』でも確かにそれは感じます。ただ、それは主にビートやメロディーから感じるものであって、サウンドはまったくそんなことはないという。

うんうん(笑)。

サウンドは完全に今のものであって、そうしたブラッシュアップした感じが面白いところだと思うんですよ。例えば、「さよならミッドナイト.」。モンキーダンスが似合いそうなビートで始まって、まずはそこに惹かれるんですけど、ギターサウンドのエッジの効いた感じに昔の歌謡っぽさはないんですよね。

ほぉー。ありがとうございます(笑)。

「ガラクタゴシップ」もそうですかね。これも誉め言葉として受け取ってほしいんですけど、ギターは曲とミスマッチなくらいヘヴィですよね。でも、そこがとても面白いんですよ。

うんうん。そう言っていただけると嬉しいですね(笑)。
珠麟 -しゅりん-
ミニアルバム『真っ白。』

OKMusic編集部

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