【佐咲紗花 インタビュー】
ファンとともに歩んだ10年は
ダイアモンドに輝く日々の記録
感謝の言葉をみんなに
伝えるのがヘタだった
今作には佐咲さんが作詞をした新曲「ダイアログ」が収録されています。作曲編曲の園田健太郎さんは佐咲さんから名前を挙げて作ってもらったそうですが、園田さんの曲にはどういう思い入れがあるのですか?
『ウルトラマンR/B』のオープニング主題歌で、オーイシマサヨシさんが歌った「Hands」(作詞:園田健太郎、作曲・編曲:園田健太郎/伊藤 翼)が一番大きなきっかけだったかな? 気持ちがものすごく落ちていた時期にその曲を聴いて、歌詞とメロディーの両方に救っていただいた感覚があって。他にも『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のオープニングテーマ「騎士竜戦隊リュウソウジャー」(作詞:マイクスギヤマ、作曲:園田健太郎)もそうで、この曲を聴いた時も別の理由で暗闇に落ちていたんですけど、すごく光をもらったんです。いろいろな場面で心を救ってもらった…それも歌詞だけじゃなく、メロディーでも。他にも『この素晴らしい世界に祝福を!』のオープニング主題歌の「fantastic dreamer」だったり、“私の心にズシンとくるパワーをもたらす曲を作られる方だな”“私も園田さんのメロディーを歌いたい”とずっと思っていて。最初にそれが叶ったのは「ヒトツボシ」(2019年8月発表のシングル)のカップリング曲「Go future」でした。
「Go future」の時はどんなことを感じましたか?
“こういうことをしたいんです”と自分の気持ちを100言わなくても、200伝わっている感覚がすごくありました。メロディーもそうだし、歌詞も私の中からは出てこない、ストレートだけど胸に響く言葉で溢れる楽曲をいただきました。なので、10年分の想いを込めるベストアルバムでもきっと私の気持ちを200パーセント汲み取ってくれるんじゃないかと思ってお願いしました。結果、実際に同じ景色が見えているんじゃないかと思えるほど、私の書きたかった世界と園田さんの曲がリンクした感じがありましたね。とても不思議な感覚です。一緒に制作するようになったのはここ2年くらいですけど、それこそ10年前からずっと近くにいてくださったような、通じ合える感覚がある方です。
園田さんにはどういうことを伝えていたんですか?
10年前から応援してくださっている方にも、最近ファンになってくださった方にも、全員に対して“ありがとう”と“これからもよろしくね”の気持ちを曲にしたいということだけを伝えていて…これも不思議なリンクだったんですけど、私が使いたいと思って溜めておいた言葉が全部ハマるメロディーと譜割りを園田さんがくださったんです。なので、苦労するようなこともなく、ふたりの熱量が憑依したみたいに一気に歌詞を書くことができました。
サビの最後に《好きだよ》や《ありがとう》という素直な言葉が出てきますが、これはやはり入れたいと思っていました?
はい。数年前まではそういう言葉をファンのみんなに直接伝えることがとても下手で、ファンの女の子に“私たちは佐咲さんのことが大好きだけど、佐咲さんも私たちのことを好きでいてくれていますか?”と言わせてしまったり、不安にさせてしまっていたことに気づいていなくて。それを言われてからはみんなに言ってもらうだけじゃなくて、私からもしっかりと言葉にしようと思うようになったので、この曲の中でもちゃんと言いたいと思っていました。
MVでは手で口を囲って耳打ちするように歌っていますね。
“大事なことだからしっかり聴いてね!”“聴き逃さないでね!”ってみんなに耳打ちして伝えているイメージです。
2番の《大声で叫ぼう》のあとに歓声が入りますね。
音源に入っている声は今回楽曲も演奏してくれている、いつもの私のライヴのバンドメンバーと園田さんと私です。ライヴでこの曲を歌う時は、ここでみんなにも叫んでほしいと思って、そのガイドとなる感じで入れました。“ここでみんな叫ぶんだよ!”って。
ライヴが楽しみになりますね。
楽しみです。みんなが自分たちの曲だと思ってくれて、どんどん育っていったらいいなと思っています。それはバンドメンバーに対してもそうで、今まで個々でレコーディングに参加してもらったことはありましたが、今回はメモリアルな曲なので絶対にみんなで録りたいという気持ちがありました。
それも10周年の感謝の気持ちのひとつですか?
はい。ライヴの時にメンバーには“バックバンドとしてじゃなく、私がヴォーカルでみんながメンバーというひとつのバンドだと思ってステージに立ってほしい”と毎回伝えていて。私を引き立たせることは一切考えなくていいから、自分の魅せ場だと思ったらどんどん前に出ていってほしいと。それなのに、楽曲を佐咲紗花バンドとして全員で一緒に制作したことがなかったので、ライヴの時にいつも以上に“これは俺らの曲だ”と思って演奏してほしいなと思って。
“ダイアログ”というタイトルですが、ここにはどんな意味を込めていますか?
ダブルミーニングで、そのままだとパソコン用語の“ダイアログボックス”、直訳では“対話”という意味なので、みんなとの対話の曲であるというのがひとつ。もうひとつは“みんなと過ごした“ダイア”モンドな日々の記録(“ログ”)”という意味も込めています。
ライヴでぜひ聴きたいですね。
今はこの情勢もあってまだちゃんと日時を明確にしてお伝えできないのですが、時間がかかっても絶対にこのベストアルバムのライヴをする予定なので、楽しみにしていてほしいです。
今年はライヴの中止や延期などがありましたが、佐咲さんはその中で何を感じましたか?
最初の頃は、先のことを考えすぎてすごく不安になってました。でも、何度か配信ライヴを経験して、配信ならではの伝え方や届き方があると実感したので、配信というかたちも私たちの気持ちを届けるツールのひとつとして、今後も残していきたいと思っています。もっと研究して、よりにいいものができるようにしたいですね。とはいえ、生で対面するかたちでの一期一会で、その瞬間を味わうことも忘れたくはなくて。そういう意味ではこのコロナ禍の一年は、いろんな伝え方や届け方を考えた期間でしたね。
では、最後に「ダイアログ」の歌詞に《十年前も十年先も変わらないよ》と出てきますが、佐咲さんが今後もずっと変わらずに持ち続けていたいものは何ですか?
ひとつはアニソンシンガーになりたくてなった者として常に掲げている、タイアップの作品に対する愛情。作品のことを第一に考えながら楽曲を制作することですね。それと同じく、私の歌を好きだと言ってくれるみんなの期待に、しっかり応えていける未来を作っていきたいと思う気持ちもあります。そのふたつを同時に叶えていくことが、私の目標ですし、ずっと変わらず持ち続けていたい想いです。
取材:榑林史章