『ミッキーマウス展 THE TRUE ORIGI
NAL & BEYOND』開幕レポート 歴史的
名作から現代アートまで、ミッキーの
多彩な表情に迫る

世界中の人々に愛され続けているミッキーマウス。その姿は時代に合わせて変化し続け、常に人々に新しいインスピレーションを与えてきた。森アーツセンターギャラリーにて開催中の『ミッキーマウス展 THE TRUE ORIGINAL & BEYOND』(会期:〜2021年1月11日)は、2018年から2019年にかけてニューヨークで開催された展覧会『MICKEY: THE TRUE ORIGINAL』を再構成し、日本展独自のアップデートを加えてミッキーマウスの進化を展望するものである。
Daniel Arsham《Hiding Mickey》 (c)Disney
左:Shinique Smith《Bale Variant No.0026》[Ode to Mickey Mouse, My First Love]、右:Michael John Kelly《Toon Town 1991》 (c)Disney
会場は大きく3つのゾーンに分かれ、初期のディズニー作品2点に焦点をあてた「原点=THE ORIGIN」、世界各国の現代アーティストがミッキーマウスから影響を受けて制作した作品を紹介する「現代=THE TRUE ORIGIN」、米国のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオに所属するアーティストや、若手の日本人作家たちが手がけた“未来のミッキーマウス”を披露する「未来=&BEYOND」にて構成される。口笛を吹き蒸気船を操縦するお馴染みの姿から、誰もみたことがない未来のミッキーマウスまで。さまざまな姿の彼に出合える会場より、本展の見どころを紹介しよう。
右から:大島智子《修学旅行》、《おみやげと通学路》、《クラスメイトのおみやげ》、《お部屋》 (c)Disney
名作『ファンタジア』を最新の映像技術で体感する
最初のゾーン「THE ORIGIN」では、ミッキーマウスのスクリーンデビューを飾った『蒸気船ウィリー』(1928年)と、2020年に公開80周年を迎える『ファンタジア』(1940年)をピックアップ。前者は、キャラクターの動きと音楽がシンクロする世界初の短編トーキーアニメーションとして、ディズニーの礎を築いた重要作品だ。会場冒頭では、作品の世界観に没入できるような立体展示と映像を併せて楽しめる。なお、『蒸気船ウィリー』の公開日である11月18日はミッキーマウスの誕生日とされている。
『蒸気船ウィリー』 (c)Disney
クラシックの名盤から着想を得て、音楽の視覚化を試みた革新的なアニメーション『ファンタジア』。交響詩「魔法使いの弟子」をはじめ、チャイコフスキーの「組曲 くるみ割り人形」や、ベートーヴェンの「交響曲第6番 田園」を含む全8曲のオムニバスで構成される本作は、不朽の名作としてディズニーの歴史に名を刻んでいる。本展では、現代の最先端技術を駆使した迫力ある音響と映像によって、ファンタジアの新たな表現を体感できる。重層的な画面と音楽が生み出すハーモニーを、ぜひじっくりと味わってほしい。
『ファンタジア』 (c)Disney
世界中のアーティストが手がけた、個性豊かなミッキー作品が大集合!
『MICKEY: THE TRUE ORIGINAL』は、ミッキーマウスの生誕90周年を祝い2018年にニューヨークで開催された展覧会であり、会場にはミッキーマウスにインスピレーションを受けた20名以上の現代アーティストが制作したインスタレーションが一堂に会した。本展覧会では、その中から選りすぐりの作品群を日本初公開。「THE TRUE ORIGIN」のゾーンをさらに4つのコーナーに分け、「ミッキーマウスを形作るもの」「色彩の爆発」「ポップカルチャーの象徴」「記憶」と題して、各テーマに沿った作品を展示している。
左:DRx《3000% Mickey BE@RBRICK》、右奥:James Jean《Minnie Eden》、《Mickey Eden》 (c)Disney
Ariana Papademetropoulos《My Mother's Bedroom in 1979》 (c)Disney

音が聞こえなくても、ミッキーの息遣いを感じられるブライアン・ロエッティンガーの作品は、ディズニー漫画のオノマトペの世界に影響を受けたもの。
Brian Roettinger《(L)imitation of Sound》 (c)Disney
独自のかぎ針編み手法を用いて毛糸を使ったアート作品を作るロンドン・ケイは、色彩豊かで温かみのあるミッキーの姿を表現した。
London Kaye《Petit Supersonic Skein》 (c)Disney
『FINAL FANTASY』や『KINGDOM HEARTS』シリーズで知られる日本のゲームアーティスト・野村哲也は、本展でオリジナルスケッチを披露。
Tetsuya Nomura《Sketches from KINGDOM HEARTS Re:coded》 (c)Disney
ヴィンテージ写真をキャンバスにして、スクリーンプリントと手彩色の技法を組み合わせたオリバー・ペインによるアナログコラージュは、どこかノスタルジックな雰囲気が漂っている。
Oliver Payne《Untitled》 (c)Disney
さらに本展の見どころとして、『蒸気船ウィリー』を現代風にアレンジした映像作品《Steamboat Willie Redux》も見逃せない。本作では、原作の短編映画を35のシーンに分け、それぞれのシーンを世界中のさまざまなアーティストやアーティストチームに割り当て、現代的な解釈で『蒸気船ウィリー』を再編集した。アーティストの豊かな想像力や遊び心に刺激されることはもちろん、1928年に制作されたオリジナル作品と見比べるのも楽しい作品になっている。
『蒸気船ウィリー』 (c)Disney
『蒸気船ウィリー』 (c)Disney

日本展初公開となる“未来のミッキーマウス”
「&BEYOND」の展示ゾーンでは日本展の開催に向けて、米国のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオを代表するアーティスト5名が、“未来の扉をひらくミッキーマウス”というテーマのもと、特別に描き下ろしたミッキーの姿が公開される。
左から:Eric Goldberg《Future Mickey》、Jin Kim《Ray of Tomorrow》、 Griselda Sastrawinata-Lemay《Dancing Into the Future》、Bill Schwab《Standing on the Shoulders of Giants》(c)Disney
映画『アラジン』で「ジーニー」のリード・アニメーターを務めたエリック・ゴールドバーグや、『ベイマックス』のキャラクターデザインのスーパーバイザーを務めたジン・キムなど、長年ディズニー作品に携わってきたアーティストたちによる貴重な新作は必見だ。
また、日本展オリジナル企画として、“誰もみたことがない、まったく新しいミッキーマウス”をテーマに、日本人アーティスト5名が制作した新たなミッキーの姿も本展で初披露される。

WAKU《Untitled》 (c)Disney

コラージュアーティストの河村康輔は、こどもの頃に繰り返し見ていた『ファンタジア』をモチーフにした作品を発表。
河村康輔《Untitled》 (c)Disney
「ミッキーマウスにはいろんな表情や動きがあるが、本作ではあえて顔の中に象徴的な目や口を描いていない。作品を見る方々の頭の中に、それぞれのミッキーマウスのイメージがあると思うので、その表情を皆さんに自由に思い浮かべていただきたい」
カリグラファーの書道家 万実は、ミッキーマウスを共通言語として捉え、文字として書くことに挑む。200枚以上の試行錯誤を重ねた軌跡を、ミッキーマウスの歴史と重ね合わせ、茶室を模した空間にインスタレーションとして展示している。
書道家 万実《ZEN Mickey》 (c)Disney
「最終的に選んだ1枚は、ワクワクする気持ちや、元気になるような気持ちが紙から出ていた。本作は円相(自分の心を映す窓)を3つ重ねてミッキーにしている。円相の延長線上にいるミッキーマウスとして、日本の心を詰め込んだミッキーに仕上がった。茶室はおもてなしの空間の代表格であると同時に、ディズニーランドの相似形にあたる存在だと思う。茶室の中央にミッキーマウスの軸を掲げることで、ディズニーランドのような茶室というテーマになっている」
未来のミッキーマウスが過去の姿を抱きしめる様子を、平面と立体作品で表現したペインターの添田奈那は、自身のミッキーマウスに対する思いを語った。
添田奈那《LOVE》 (c)Disney
「こどもの頃は友達のようで、一緒に育っていくような印象があった。大人になってから過去のミッキーや今のミッキーを見ていくと、時代に沿ってアップデートしていく姿が見られて、今も身近なことに変わりはないけれど、こうなりたいという存在になっていった」
会場内には、「ミッキーマウス展公式ショップ」がオープン。『蒸気船ウィリー』と『ファンタジア』の新しいグッズや、本展のキービジュアル、各アーティストの作品をモチーフにしたオリジナル商品を含む400点以上のグッズが並ぶ。普段使いできるアイテムもそろっているので、ぜひ展覧会の記念に立ち寄ってほしい。
ミッキーマウス展公式ショップ
『ミッキーマウス展THE TRUE ORIGINAL & BEYOND』は、2021年1月11日まで。

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