入野自由

入野自由

【入野自由 インタビュー】
コロナ禍の中でも
自分を助けてくれたのは
音楽や演劇だった

LUCKY TAPESのKai Takahashiをはじめ、きのこ帝国の佐藤千亜妃、BBHFの尾崎雄貴、TRICERATOPSの和田 唱、向井太一など才気あふれるアーティストたちが楽曲提供し、実に彩り豊かな作品となった3rdフルアルバム『Life is...』。入野自由が今の時代に伝えたかったこととは?

悲しい出来事が多かったので、
次はやさしい作品にしたかった

本作には多くのアーティストが楽曲を提供、入野さんと歌詞を共作している曲も収録されていますが、どんなところからアルバム作りが始まったんですか?

アルバムは1年半ぐらい前から作りたいと話はしていたんです。当時はテーマは決まっていなかったんですが、自分の周りで悲しいニュースを目にすることが多い時期だったので、次に作るならやさしい作品にしたいとは思っていました。

“やさしい”というのは聴き心地ですか? メッセージですか?

コンセプトとしての“やさしさ”です。役者として、声優として、演劇にしろアニメにしろ携わるものはそういう内容でありたいとは思っていたんですが、舞台やアニメはあくまで作品のメッセージや想いがあるもの。“自分”を出すなら、音楽活動だと思っています。

そういう想いが根本にあって、いろんな方が楽曲を提供してくれることになったんですか?

はい。これまで一緒に曲を作ってきた方や、そのつながりで知り合った方、尊敬していたり、自分がファンだったりする方たちにお願いしました。

入野さんと参加アーティストのつながりを教えていただけますか?

BBHFの尾崎くんや向井太一くん、佐伯youthKくん、sooogood!はこれまでも楽曲提供をしてもらっていますが、きのこ帝国の佐藤千亜妃さんとは共通の友人を通して知り合いました。Mega Shinnosukeくんはsooogood!のシミズコウヘイくんを介して面識はあって、彼の曲が好きでお願いしました。ファン的な感覚で好きで依頼したのは赤い公園の津野米咲さんとchelmicoさんです。

入野さんの声が活かされたバラエティー豊かな楽曲たちが収録されたアルバムに仕上がっているので、曲にまつわるエピソードを教えてください。

最後に収録されている「だって愛は半端ないじゃない」が一番最初にできた曲なんです。2019年に『TEN』というツアーをやっていた時、次のアルバムをイメージしてライヴで先行披露するような曲が欲しいと思い、sooogood!のシミズくんに“ライヴを意識したアップチューンを作ってほしい”とお願いしました。1曲目に収録されている尾崎くんが書いてくれた「やってみればいい」は、実は一番最後にできた曲なんです。尾崎くんには2016年にリリースしたアルバム『DARE TO DREAM』で「フレンズ」という曲を書いていただいたんですが、その時は1stコンタクトだったこともあってお任せした部分が多かったんです。今回はアルバムのコンセプトや“ミディアムテンポの曲が多いのでアッパーで明るめの曲が欲しい”と直に伝えて、キャッチボールしながら出来上がった曲です。僕の想い尾崎くんなりに表現してくれたんですけど、すごく刺さりました。

《もうちょっとだけ ぎゅっとして ここにいてくれたなら 僕のすべてを売っぱらって 君の孤独を買うよ》って歌っていたり、包み込んだ上で背中を押してくれるようなナンバーですね。

それが尾崎くんの持つやさしさであり、彼の言葉の力なんだと思います。そこのフレーズは僕自身もすごく好きですね。とても愛情がこもっている。全体にいろんなとらえ方ができる歌詞でもあり、“やっぱり尾崎くんの楽曲は好きだな”と思うし、そういう曲を歌えることが幸せで堪らないです。

リード曲「確かにそうだ」では佐伯youthKさんと歌詞を共作されていますが、どんなふうに生まれた曲ですか?

佐伯くんには2015年にリリースしたミニアルバム『僕の見つけたもの』に「見果てぬ世界、繋がる想い」という曲を提供していただいたのをきっかけにいろんな曲を書いていただき、これまでもいろいろ新たな試みをしてきたんです。「確かにそうだ」は原点回帰じゃないですけど、5年前のことを思い返して、それを超えるエモーショナルな曲にしたいっていう話を彼としました。歌詞は自分が思っていることを手紙のような形式でお渡しして、佐伯くんが作ってきてくれたものに対して“歌詞のここの部分はこう変えたい”とか“こんな感じの音にしたい”とかふたりでやりとりしながら作っていって。積み重ねた5年が反映されていると思います。

“変わっていく自分を受け入れて生きていくんだ”という意思が刻まれていると感じましたが、入野さん自身はどんな心境だったんでしょうか?

5年前は僕も20代でしたし、海外を旅して影響を受けた想いをかたちにしていて、「見果てぬ世界、繋がる想い」はもっといろんな人に出会って、いろんなものを見て、もっと先に行きたいっていう、前へ前へガンガン進んでいくような曲なんですね。なので、「確かにそうだ」は前向きな部分を踏襲しつつ、限界を感じたり、それに反発しながら活動している今の自分の心境が含まれていたりします。

がむしゃらな時期を経ての心境の変化だったり?

それは成長なのかもしれないけれど、5年前にはない憂いもありつつ、変わっていくことは決して悪いことではないし、芯の部分は変わらないという想いが込められています。“僕のことを好きでいてくれる人は、僕のどんなところを見ているんだろう?”とか、逆に“僕はみんなのどんなところを見ているんだろう?”っていう問いかけも含まれているし、いろんなものが詰まった曲です。

まさに入野さんの“今”ですね。アーバンでグルービーな曲、バラード、ラップをフィーチャーした曲、パーティーチューンなど、いろんな角度から楽しめるアルバムですが、初挑戦したという曲はありますか?

どの曲もチャレンジはあるんですけど、難しかったのはchelmicoのふたりが書き下ろしてくれた「M-9.10」ですね。以前もラップには挑戦しているんですが、また違ったタイプの曲で最初は苦戦しながらラップしていました(笑)。ふたりの仮歌を完コピするような気持ちで臨んだんですが、真似しても同じにはならないし、僕自身のオリジナリティーは絶対に出るだろうと思って。ふたりはレコーディングの現場にも来てくれて、“いいです!”と言ってもらえたので嬉しかったです。

個人的には浮遊感があってサウンドと歌と歌詞が溶け合う感覚になる「ユウランセン」とメロディーの強さとメッセージに勇気をもらえる「ALIVE」に特に惹かれました。

「ユウランセン」はまだ10代のMega Shinnosuke くんが提供してくれた楽曲です。彼の「桃源郷とタクシー」と「O.W.A」という曲がすごく好きなんですよ。ダンサブルでファンクなリズムだったので、そういうタイプの曲を書いてほしいとお願いしました。歌詞については任せてほしいと言われたので委ねたんですが、出来上がった曲を聴いた時は“うわっ、すごい感性だな”と思いました。ニュアンスをつけて歌うことが多いんですけど、この曲に関してはフラットに歌うことを意識しました。

バラード「ALIVE」は?

これは向井太一くんとお互いに今思っていることを話した上、正式にお願いして改めて“こんなことを歌いたい”と伝えたんです。最初にお話したように悲しい出来事が多くて落ち込んでいた時期があって…“もう世の中は終わりだ”とか考えそうになるけど、“いや、そんなことはない”って思いたいし、自分の周りで落ちている人がいたら“大丈夫だ”と伝えたかったので、根本は“楽しいな”とか“幸せだな”と思ってもらいたくて作ってもらった曲ですね。

赤い公園の津野米咲さんの作詞作曲による「Sunny Side Story」やきのこ帝国の佐藤千亜妃さんの作詞作曲の「グッド・バイ」についてもエピソードを教えてください。

津野さんの曲はアルバムの中でもちょっと違う雰囲気がありますよね。赤い公園自体もアッパーなロックだったり、いろいろな方向性の曲があるので、どういったものになるのか楽しみに、お任せしてお願いししました。「Sunny Side Story」は歌っていても楽しかったです。「グッド・バイ」に関しては…佐藤千亜妃さんが今年の1月に僕が出ていた舞台『グッドバイ』を観に来てくれたんです。共有したものがある気がしたので、“前向き”“グッドバイ”をテーマで作っていただきました。大好きな曲です。
入野自由
アルバム『Life is...』【豪華盤】(CD+Blu-ray)
アルバム『Life is...』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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