AKB48、ももクロも出演 「氣志團万
博」はなぜ規模拡大を続けるのか?

 今年から3日間の開催となった『氣志團万博』。第一弾アーティストとして発表されたのは、AKB48岡村靖幸the GazettE華原朋美、氣志團、きゃりーぱみゅぱみゅGRANRODEO、黒夢、ゴールデンボンバー、シド、私立恵比寿中学仙台貨物チームしゃちほこ10-FEET東京スカパラダイスオーケストラニューロティカ、味噌汁's、ももいろクローバーZ森高千里森山直太朗RIP SLYMEという21組だ。

 世代もジャンルもフィールドも超えた「ありえない」メンツが集うフェスとして注目を集めてきた『氣志團万博』だが、今回もかなり豪華なラインナップとなっている。特に今年はAKB48、ももいろクローバーZという2大アイドルグループが並び、ワールドツアーを終えたきゃりーぱみゅぱみゅも出演と、大きな注目を集めることは間違いないだろう。他にも華原朋美や森高千里など90年代から活躍する歌姫、シドやthe GazettEやゴールデンボンバーなどのV系、10-FEETや東京スカパラダイスオーケストラなどロックフェス常連のバンド勢が集い、さながら「J-POP博覧会」とも言える一大イベントとなっている。一昨年、昨年に続き大きな成功を果たすことは間違いなさそうだ。

 ただし、これはこの連載「ロックフェス文化論」で繰り返し語っていくテーマでもあるのだが、フェスは必ずしも「人気者を集めれば成功する」ものではない。もちろんラインナップの豪華さは話題を呼び動員を増すための重要なファクターだが、フェスを継続的な成功に導く鍵は、むしろ立地やブッキングや環境整備にそのフェスならではの「文脈」や「メッセージ性」が感じられるかどうかにある。主催者の掲げるコンセプトがオーディエンスにきっちりと伝わるか、それが適切な規模で共有されるかどうかにある。そのことは、そのことは、「大人の夏フェス」をテーマにKISSやジェフ・ベックを招聘するも集客が振るわず2006年一度きりの開催に終わった『UDO MUSIC FESTIVAL』や、「ヒットチャートの主役が集まるフェス」をコンセプトにPerfumeやFUNKY MONKEYBABYSが出演するも、やはり集客が振るわず2012年を最後に翌年以降開催されていない『GO!FES』の例が証明している。

 また、「フジロック」を主催するスマッシュ代表・日高正博氏や、『ROCK IN JAPAN FES.』『ROCKS TOKYO』など数々の邦楽フェスの立ち上げに関わり、現在は『VIVA LA ROCK』を主催する鹿野 淳氏など、オーガナイザーが顔の見える存在になっていることも、ここ10数年で日本に根付いてきたフェス文化の大きな特徴だ。その背景には、前述した通り「誰がどんな思いでやっているか」ということが、フェスにおいて重要視されることが理由にある。

 そう考えていくと、『氣志團万博』は、単に「豪華なラインナップが集まるJ-POPフェス」というだけではない、非常に明確、かつ他にない魅力を持ったフェスであることがわかってくる。

 まず、その名の通りホスト役をつとめるのは氣志團だ。コンセプトは「ありえないを形にする」。もともと一昨年から、浜崎あゆみ、ゴールデンボンバー、小泉今日子やサプライズ出演を果たした近藤真彦など、それまでのロックフェスの常識を覆すラインナップが実現し、大きな話題を集めた。当初はバンド結成15周年を記念した一回限りのお祭りとなるかと思われたが、昨年にはhide乃木坂46マキシマム ザ ホルモンも出演し、二年連続の成功という実績を作った。

 その背景には、綾小路翔が持つ「既存のロックフェスにないものを形にしたい」という発想があった。彼はフェスを主催するにあたってのインタヴューで「日本のロックフェスがルーチン化してきた」ということを語っている。つまり、邦楽を主体としたフェスが各地方に根付いたことはいいが、その反面ラインナップがパッケージ化し、出演者にとっても夏の営業のようになってしまっているという2010年代以降の現状を指摘している。そこに風穴を開ける発想でスタートしたのが、「氣志團万博」なのである。

 そして、実際にこのブッキングの実現に寄与しているのが綾小路翔が持っている幅広い人脈であることは間違いない。氣志團は2011年から「極東ロックンロール・ハイスクール」と題した対バンスタイルのライヴを行い、そこでベテラン、V系、アイドルなど様々なアーティストとステージを共にしてきた。また、昨年には彼直々に秋元康を口説き落として乃木坂46の出演を実現させ、それが今年のAKB48の出演に繋がっているはずだ。DJ OZMA矢島美容室としての活動も経ている彼は、いわば近いようで遠い「芸能界」と「音楽シーン」をつなぐ貴重な存在となっている。

 千葉県・袖ヶ浦海浜公園という会場のロケーションも『氣志團万博』の大きな要素だ。前述の鹿野 淳氏は「フェスは場所とスケジュールが50%以上の重要さを占めるもの」だと語っているが(参照:VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、ロックフェスの「物語」と「メディア性」)、氣志團にとっての地元・木更津も、デビュー以来常にレペゼンし、大事にしてきた場所。2003年に初めて開催し4万人を集めた『氣志團万博』(こちらはGLAYをゲストにワンマンライブのスタイルで行った)も、やはり木更津にて行われている。『氣志團万博』は、彼らにとって「故郷に錦を飾る」という意味を持つイベントでもあるはずだ。

 ニューロティカや仙台貨物などのエンタメ精神溢れるバンド、声優・谷山紀章が歌うロックユニットGRANRODEO、RADWIMPSの“盟友” 味噌汁'sなど、他にも曲者揃いのメンツが実現した今回の『氣志團万博』。今年も「ありえない奇跡」が起きそうだ。(柴那典)

リアルサウンド

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着