ブリティッシュ・スワンプの
草分け的存在として知られる
デイヴ・メイスンの
『アローン・トゥゲザー』
本作『アローン・トゥゲザー』について
収録曲は全部で8曲。アルバムは『オン・ツアー〜』でも取り上げられた「オンリー・ユー・ノウ・アンド・アイ・ノウ」から始まる。ロックしていたデラボニ・バージョンと比べると本作のアレンジはアコースティック中心の落ち着いたアレンジになっている。メイスンのギターはコロンビア時代のゆっくりしたスタイルとは違い、クリーム時代のクラプトンを彷彿させるテンションの高い演奏である。
「シュドゥント・ハヴ・トゥック・モア・ザン・ユー・ゲイヴ」と「サッド・アンド・ディープ・アズ・ユー」はトラフィック時代に披露していた曲の再演で、特に「サッド・アンド・ディープ・アズ・ユー」はメイスンのお気に入りのナンバーで繰り返し演奏している。「キャント・ストップ・ウォリイング,キャント・ストップ・ラヴィング」「ワールド・イン・チェインジズ」「ルック・アット・ユー・ルック・アット・ミー」などは陰影のあるナンバーで、ブリティッシュ的な香りが漂っている。中でも7分以上に及ぶ「ルック・アット・ユー・ルック・アット・ミー」は後半のドラマチックなギターソロが聴きものだろう。ロックンロールの「ウェイティン・オン・ユー」と、少しカントリー風味のある「ジャスト・ア・ソング」はコロンビア時代へとつながるキャッチーな音づくりになっている。
数十年振りに改めて本作を聴き直してみると、デイヴ・メイスンがスワンプに挑戦したという感じではなく、あくまでもメイスンの音作りであり、コロンビア時代に開花した彼の資質は、この時点で既に完成していたことが再認識できた。メイスンの骨太のヴォーカルと巧みなソングライティングは本作以降も成長を続け、5thアルバム『デイヴ・メイスン』で頂点を迎えることになる。
『アローン・トゥゲザー』は決してメイスンの最高傑作ではないが、本作がエリック・クラプトンやジョージ・ハリスンらをはじめとした他のブリティッシュロッカーをスワンプロックに向かわせ、70年代ロックのマイルストーンの一つになったことは確かである。
TEXT:河崎直人