SUGIZOが初の配信ライブで示した音楽
の可能性と希望の光

SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE I ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~

2020.10.14(WED)
LUNA SEAX JAPANのギタリスト、ヴァイオリニストとして、そしてソロアーティストとして積極的に活動しているSUGIZOが2020年10月14日、東京都内で自身初の配信ライブ『SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE I ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』を行った。
午後7時から始まった配信は、ツイッターと連動。午後7時半の開演を待ちきれないファンから「血が騒ぐ」「麗しの王子よ!」などのコメントが殺到していた。配信が始まると、「最幸」「今夜はブチ挙がるぞ」と、一気にヒートアップした。約2時間のステージで10曲を披露したSUGIZOは「一緒にこの時代を乗り切って、新しい扉を開けて、またハッピーになりましょう」とメッセージ。視聴していたファンから、「元気が出た」「ありがとう」など感謝の言葉が送られていた。
Photo by Keiko Tanabe
水面を漂うようなシンセサイザーの音の中、祈りを捧げるSUGIZO。幕開けの「DO-FUNK DANCE」では、閉じていた両翼を広げるように、内に秘めていたエネルギーを放出していく。SNSでは「いきなり、この曲か」と驚きの声を挙げた人も。「うわぁぁぁあ」と叫びながら放つギターは、うねりとなって広がっていった。
真っ白な光を突き破るように始まった「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」では静と動を表現。瞳のような形をした光が、大きくなっていく様子はチャクラが開いていくような感覚があった。宇宙ガラスのブランド「PlusAlphaa」によるガラスアートが、背後のスクリーンに映し出される中で演奏した「NEO COSMOSCAPE」では、観ている人を銀河飛行に誘った。よしうらけんじと入れ替わりパーカッションの前に立ったSUGIZOは、黒いスティックを手に、振り落とす一音に全霊を注ぐ。ジャンベを手に中央に躍り出たよしうらは、大地を揺さぶるような音で圧倒。スティックを、モジュラーシンセサイザーに変えたSUGIZOは、宇宙と交信するように音を紡ぎ出していった。その繊細な指使いがアップで映し出されると、視聴者から「手元が映るのはたまらない!」と歓喜の声がSNSに集まっていた。
モジュラーシンセサイザーを手にしたSUGIZO Photo by Keiko Tanabe
空間美を追究した「Raummusik」では、和と洋の音を絡み合わせた唯一無二の電子音楽世界を体現。イルカの群れの映像とコラボレーションした「ARC MOON」では、心地よい音楽で聴き手を浮遊させる。神々しい満月の光の中で広がる美しい海の映像は、すべての生命の源が海であることを思い出させた。
女性ダンサーが舞う映像と競演した「FATIMA」では、豊かにヴァイオリンを響かせていく。繊細な音色は、子宮の中で守られていた頃の温かさが浮かぶものだった。
巨大なミラーホールが輝くライブ会場は宇宙空間のよう Photo by Keiko Tanabe
ギターで、ヴァイオリンで、自在に超えた時空。自由な往来が難しい中で、宇宙旅行も体験した。胎児だった頃の記憶もよみがえらせたSUGIZOの音楽。神の怒りに触れたのか。「Lux Asterna」では、厚い雲が舞台を覆う。色を失った世界では、警告のように無数の稲妻が天空を走った。破裂音が身体を硬くさせる。火山や地震などの自然現象に加え、紛争などの映像が流れていく。人間の愚かさを嘆く女神像の瞳に、言葉を失った。
曲の終盤にはSUGIZOが訪問したシリアなどの難民キャンプで暮らす子どもたちの写真と、崩れる大地の様子が交互に展開。SUGIZOが女神に祈りを捧げると、モノクロだった時間に光が戻っていく。「子どもたちの未来を奪ってはいけない」「希望の光を照らし続けなくては」。そう感じた瞬間、傷を癒やすように赤いバラの花が膨らんでいった。
Photo by Keiko Tanabe
再び輝きが戻った空間では、燃え上がるようなギターで「FOLLY」を披露。中盤では、自由のため、平和のため、命を燃やしたチェ・ゲバラ、マザー・テレサなどの写真がスクリーンに映される中、SUGIZOが天に向かい両手を広げた。偉業をたたえ、そして先に逝った人たちに鎮魂の祈りを捧げていた。
Photo by Keiko Tanabe
和太鼓や尺八など和楽器を融合した「禊」では、日本刀のように振り上げたモジュラーシンセサイザーで、エキセントリックな空間を出現させた。ギターに持ち替えると、ジャンベを持ったよしうらと対峙。右手に持ったピックを唇で挟むと、右手でジャンベを激しく打ち鳴らしていった。
アンコールの前には、配信を観ているファンからの声を公開。システムの不具合で、ライブを視聴できなかった人の救済処置として、急遽予定していなかったアーカイブ配信を行うことも発表した。
Photo by Keiko Tanabe
ノンストップで約1時間10分ほど続けたライブを振り返ったSUGIZOは、「僕の音楽のあり方は、元々音と映像と光と、そして肉体が絡み合って生まれる化学反応。今の時代だからこその、新しい表現のアプローチを考察した結果、とてもしっくりきた。これから続けられたらなと思っています」と手応えを感じたよう。
レーザーや映像などの視覚効果とSUGIZOが溶ける様子は、会場とフロアという通常のライブの形では経験できない美しいアート作品へと昇華された。真下からSUGIZOを見上げるアングル、よしうらからの目線でとらえたSUGIZOのなど、さまざまな角度からSUGIZOをシューティングした映像は、自分もその中に入り込んでいるような感覚を覚えた。
Photo by Keiko Tanabe
SUGIZOは「この状況になって(コロナ禍でライブが延期になるなどして)初めて、みんなとのつながりが、そしてライブというものが、いかに自分の人生にとってかけがえないものか痛感しました。このコロナの苦境を乗り越えた暁には、新しい光に満ちた時代が待っていると信じたい。僕らで新しい時代を作っていきましょう」と笑顔に。続けて「世界のみんなが、分断や争いや憎しみから、いつか開放され本当に自分たちのホームに帰ることができますように」と語ると、「最後にみんなに祈りを込めて」と届けた「The Voyage Home」では、夕日に染まった海の映像の中で、ヴァイオリンの音を紡いでいく。寄せて返す波は、変わらない日常こそが幸福であることを気づかせた。
Photo by Keiko Tanabe
オレンジ色の光りは、平和を願う人々の魂。コロナ禍の混乱を癒やすように。祈りに満ちた音に浄化され、再生していく力を授けられた。優しさで満ちた空間。SUGIZOが機材の上にお守りとして設置しているクリスタルも、血が流れているかのように、その中に温かい光りを宿していた。
Photo by Keiko Tanabe
「みんなどうもありがとう。一刻も早く生でお会いしましょう」と感謝した最後は、マニピュレーターのMaZDA、モジュラーシンセサイザー奏者のHATAKEN、よしうらと肩を組んで一礼。再会を誓った。
ライブは、“コロナ禍で孤独を抱えているファンも多いはず”と危惧したSUGIZOが、“インターネットを介して、一人でも多くのみんなと繋がりたい”と初めての配信ライブを行うことを計画。ソロ初のライブアルバム『LIVE IN TOKYO』のリリースを記念して開催された。
よしうらと音でぶつかり合うSUGIZO Photo by Keiko Tanabe
『LIVE IN TOKYO』は50歳の誕生日を迎えた2019年7月に中野サンプラザ(東京都中野区)で豪華ゲストを招いて行った『SUGIZO 聖誕半世紀祭~HALF CENTURY ANNIVERSARY FES.~』のうち、SUGIZOのライブパート全20曲を収めたもの。
SUGIZOは「今年のリベンジとして、来年はがんがん動いていく」と気炎。年内の発売を目標にしている次回作は、「疲弊した世の中を救う、聖なる水のようなヒーリング音楽。その水を全世界に〝聴く薬〟として、浸透させたい」と目を輝かせていた。
取材・文=西村綾乃
Photo by Keiko Tanabe

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