TRI4TH、SANABAGUN.との競演に見た“
変わる”のを待つのではなく“変える
”ために自ら一歩踏み出す生き方

QUATTRO MIRAGE x LIVE LOVERS「Quattro Mirage 2020」

2020.10.15 渋谷クラブクアトロ
およそ11か月ぶりにTRI4THの生ライブを体感しながら、「そうそう、これだよ。これがライブだよ」と思っていた。10月15日19時、渋谷クラブクアトロ、10周年を迎えたライブイベント『QUATTRO MIRAGE 2020』。SANABAGUN.とTRI4THの対バンという特別な一夜を目撃できるのは、限定人数での観客とライブストリーミングによる視聴者だ。フロアには椅子が置かれ、マスク着用の観客が一つ置きに座る。そんなまだまだ厳しい状況を音楽の力でぶっ飛ばす、それはとても痛快な体験だった。
先陣を切ったSANABAGUN.が、最高級の興奮に洒落たユーモアをまじえた、見事にショーアップされたライブをやってのけた。ぐっとハードルが上がった中、午後20時10分、いよいよTRI4THがステージに上がる。まずは、メンバーが手を重ねて気合を入れるルーティーンをステージ上でやってみせる。気合十分なオープニングから、間髪入れずに「EXIT」へ。10月7日に出たばかりのニューアルバム『Turn On The Light』のラストを飾る、ゆったりとメロディアスな旋律がこれから始まるショーへの期待を煽る。
「お久しぶりです! 踊れるジャズバンド、TRI4THです。最後まで一緒に踊ろう!」
ドラムス・伊藤隆郎の第一声から、一気にリズムがスパークして曲は「Bring it on」へ。『Turn On The Light』の中でも屈指の熱血キラーチューンに、クラップしながら一斉に総立ちになる観客。ピアニスト・竹内大輔の熱演を、トランペット・織田祐亮とサックス・藤田淳之介が左右から煽る。久々の有観客ライブ、メンバーの気合と観客の期待が火花を散らし、体感温度がぐんぐん上がってゆく。
「トーキョー・ナンバーワン・○○!」と紹介する、お馴染みのメンバー紹介も、今夜はストリーミングの視聴者を意識した特別バージョンだ。藤田のブロウに「もっとエロいやつ!」と伊藤がけしかけたり、織田の紹介はなぜか相撲の土俵入りで、藤田と伊藤を従えてお茶目なロールダンスを披露したり。ライブができない間に様々なことを考えたのだろう、これまで以上に“魅せること”を意識したパフォーマンスが、新鮮で楽しい。
ここからさらにギアを一段上げ、過去の代表曲を連発するセクションへ。高速スカチューン「FULL DRIVE」はソロ回しが圧巻で、とりわけベース・関谷友貴がウッドベースをかつぎ上げてぐるぐる回す、得意のパフォーマンスに熱烈な拍手が飛ぶ。続く「Freeway」は竹内の独壇場で、猛烈なスピードで鍵盤を叩きまくるパフォーマンスに思わず喝采が沸く。ピアノは打楽器と弦楽器の機能を併せ持つ楽器に分類されるが、ピアノが打楽器でもあることを竹内以上に見せつけてくれるピアニストはまずいない。百聞は一見に如かず。
「新しいアルバムは、みんなが楽しい気持ちになってほしい一心で作りました。聴いてくれたらうれしいです」
「結成14年で今年が一番大変な年です」と言いながら、逆境をばねに最高のアルバムを作ったという確信が伊藤のMCからにじみ出る。音楽家がやるべきこと、やらずにいられないことは、どんな状況でもたぶん変わらない。ライブは早くも中盤、盛り上がりすぎた熱をしずめるように、「Green Field」の優しく美しいメロディが心に沁みてゆく。三連符のスローバラード、竹内の奏でるフレーズはまるで草原を吹き抜ける涼風のよう。
からの、藤田の強烈なブロウが炸裂する「Guns of Saxophone」が、ライブ終盤のラストスパートを告げる合図だ。サックスとトランペットのツートップが攻めまくり、関谷までがベースを引きずりドラムの横で激しいフレーズを弾きまくる、これは誰も守備をしない超攻撃的フォーメーション。「Sand Castle」ではついに伊藤もドラムを離れステージ前方に躍り出て、「好きに踊ろうぜ!」と叫ぶ。織田と藤田はモンキーダンス、もはや何でもありの無礼講パーティー。そしてラストを締めくくるのは、『Turn On The Light』からのボーカルナンバー「For The Loser」だ。「画面の向こうの人は大声で、会場にいる人は心の中で、一緒に歌おうぜ!」――伊藤の煽りに応え、♪OhOhOh、という観客全員のコーラスが会場に響き渡る。いや実際には聴こえないが、熱い思いは確かにここにある。
「トーキョー、まだまだ行けますか? 紹介します、岩間俊樹、フロムSANABAGUN.!」
アンコール、誰もが期待した、ミュージックビデオの再生回数も絶好調の新曲「The Light」のスペシャルコラボレーションが実現した。ビデオと同じ、電車の車掌の格好で登場した岩間がステージど真ん中に立ち、TRI4THの自伝とも言えるリリックを力強くラップする。《同じフレーズ吹いたって違うんだよ/こいつはライブ/生きる場所》――生きる場所にやっと帰ってきた、この日のライブにこれほどふさわしい曲はない。
最後の最後、60分のステージを締めくくった「Move On」は、アルバム『Turn On The Light』のオープニングを飾る曲。わずか2分弱で一気に駆け抜ける、爽快なこの曲を最後に配したのは、これが終わりではなく始まりだというメッセージだろう。12月にはいよいよ、有観客によるワンマンツアーも決まった。状況が変わるのを待つのではなく、状況を変えるために自ら一歩を踏み出す。TRI4THの生き方を見せつける、重要なライブを体感できた喜びを今しっかりと噛みしめている。
取材・文=宮本英夫 撮影=森下友加里

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