Skyra

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【Skyra インタビュー】
自分にとってリアルなものは、
自分の心の中で起きていること

つらいことが終わったあとには
いい景色が見られるってことを描きたい

今回のアルバムの全体像に関しては、何か具体的に考えていたテーマとか方向性はあったんでしょうか?

クリーンな日本語をトラップと混ぜることを意識しました。ヴォーカルのアプローチはシューゲイザーライクな音像をイメージして、リリックは思いついた言葉をそのまま吐き出しました。アートワークや、僕のスタンスとしては、十代の頃に『INROCK』というロックとかゴシップを特集している雑誌をよく読んでいて。アヴリル・ラヴィーンやGood Charlotteとかが載っていて、大体みんな目の周りが黒いみたいな(笑)。ああいう90年代から00年代初頭みたいな感じを現代風にアレンジしました。

シューゲイザーのニュアンスはありますね。どの曲も残響が心地良いですから。

そこはすごく考えて作ったので時間がかかったんです。いろんなプラグイン を試しながら頑張りました。

ビートを提供したのはイギリスのプロデューサーのルカ・マラスピーナですが、どういう経緯だったんですか?

ウェブでいろいろ探していた時に見つけて、トラックリストの中から気に入ったものを選んで使わせていただくことになったんです。その後のレコーディングとかエンジニアとしての作業は全部自分でやりました。

サウンドから喚起されるイメージや歌詞も含めて、“孤独感”みたいなものがさまざまな曲から感じられたんですけど、ご自身ではどう思います?

あははは。

変なこと言いました?

そうじゃないんです。図星なので、思わず笑っちゃいました(笑)。実際、私生活が非常に孤独ですからね(笑)。

いい人間関係を築けているけど、本質的な部分で心がなかなか重なり合わないもどかしさ、寂しさみたいな感じというか。そういうものを、例えば「Black Fire (ft. Sebii)」「The Flyer」「Dark Love Story」から感じました。

結局、寂しいんでしょうね。ひとり暮らしで周りに友達がいないし、彼女は東京に住んでるんで。彼女が早く島根県で一緒に暮らしてくれたらいいんですけど、何考えているんでしょうね(笑)。唯一の救いは飼い犬のキャスパーです。いつも一緒にいてくれるんで彼には盛大にShoutoutさせてください(笑)。あと、もともとセンチメンタルだったり、メランコリックだったりする作品を好むので、最終的にそういうふうになるんだと思います。

ご自身の作風について他に何か感じていることはありますか?

日本語で歌われるエモラップや、その周辺の音楽って、ヤンキーカルチャーをプッシュした作品や、USの作品に憧れた感じのドラッグやビッチ、お金を表現した物が多いですよね。そういうスタンスを一切否定しませんし、アーティストとしてのリスペクトがあることを前提に話させてもらいたいのですが、僕にはそういうバックボーンは一切ないので、そういうカルチャーを表現しようとは一切思いません。そもそも、逆に触れたこともないから表現もできないです。“俺”“お前”っていうリリックもとても多いですが、僕は人のことを“お前”と呼ぶことはほぼないし、自分のことを“俺”とは言いますが、自分の性分としてその言葉は似合わないと思っているので、作品では使いません。リリックだけじゃなくて、スタンスとしても、僕はハードコアがルーツにあるので、ストレートエッジなんですね。旅行が好きなので、アメリカ、メキシコ、タイ、マレーシア、インド、中国、他にもいろいろ行きましたけど、人生において一度もドラッグをやりたいと思ったこともないし。あと、お酒もタバコもやりません。特に何も考えず、無理せず普通に生きていたらそうなったので、きっと生まれながらにしてハードコアであり、ストレートエッジなんだなって思ってます。なので、パーティーに行っても、無論シラフです。昔DJをやっていた時もシラフでバンガーをフロアーに投下しまくるスタイルでした。結構、オーディエンスをぶちあげるんですよ(笑)。友達がショットで乾杯している時には甘いジュースをショットグラスに入れて仲間に入れてもらいます。ダンスフロアーでは再前列か、スピーカー前でひたむきに踊るタイプなので、よく周りに“シラフでそれ!?”ってドン引きされますね(笑)。カッコつけている訳でも気を衒っている訳でもなく、僕はただ音楽を浴びたくてクラブに行き、受け取ったエネルギーを体で表現しているだけなんです。興味がない曲の時は座ってチルしているし。そういうライフスタイルが僕の作品にダイレクトにリンクしている訳なんですよ。なので、ある種、現在のエモラップやその周辺で歌われていることの真反対に位置するものであると感じています。僕の作品を聴いてもらったら分かると思いますが、ビッチ、マネー、ウィードとかそういうワードは一切出てきません。なぜなら、人生の中でそういったものに触れたことがないからです。リリックでもサウンドでも、自分が触れたものや感じたことだけを描きたいと思っています。現在住んでいる島根には素晴らしい自然が沢山あって、触れる機会が多いので、必然的にリリックに自然のワードが出てくる頻度が多いですし、ひとりで暮らしていて全然喋らないので、心の中の葛藤がそのままリリックや音に表現されます。身の回りのリアルなことだけを描くのが僕の作風です。

心の中の葛藤とか感じる痛みも、ギャングスタラップで描かれるストリートの現実と本質的な部分では同じだと僕は思います。どちらも表現する本人にとっての向き合わざるを得ない厳しい現実じゃないですか。

そうですよね。今は結構普通なんですけど、僕はパニック障害を患っていまして。それが、まぁキツいんですよ。これがおっしゃるような向き合わざるを得ない厳しい現実ってやつです(笑)。唯一「Lovexxxx」にはドラッグというワードが出てきますが、それはこの病気を治療するために服用しているメイラックス、ジェイゾロフトという薬や、救いとなる音楽のことを指していまして。解釈は自由なのでお好きにどうぞなんですが。まあ、このパニック障害ってやつを、そのままネガティブに表現するのは違うというか。苦労自慢とか、しょうもないことをしたいわけではなく、ぶり返したりしつつも結構治ってきてて。そういう、ある種乗り越えた時って心底、気色が違って見えるんです。リアルに生きてて良かったって思えるんですよね。そういう体験をしたので、本当に辛いことがあったあとって、すごく美しい気色が見られるんだよっていうことを描きたいんです。いろんなつらいことで悩む人たちにこんな僕でも一山超えれたので、“まだまだやれるよ。ほら、生きてるじゃん”って伝えたいといつも思っています。

Skyraさんの音楽に関して、先ほどもお話した通りハードコアがバックボーンにあるっていうのは、やはり大きいんですね。

そうですね。どんな音楽を聴いていても、自分に刺さってくる作品って、ハードコアそのものか、それを感じられる作品なので。違うジャンルでやっているアーティストも、結局スタンスや音で、ハードコアを通過しているかどうか、もしくは精神がそうなのか分かりますよ。

バックボーンにあるものを大切にしつつも、アウトプットの仕方にリアリティーと必然性があるというのは、何かを表現する上で重要なんだと思います。

それは僕もすごく同感です。時代に合っているっていうのが重要なんでしょうね。僕もアウトプットは時代に合ったフォーマットを意識しながら作品を作っています。Gothboicliqueのアーティストたちも、10年前とかだったらまた違った感じのことをやっていたんだと思います。

このアルバムも今の時代の音ですよ。同じ時代に生きている人間として、すごくリアリティーを感じます。

ありがとうございます。

8月にもEPをリリースしましたし、すごくハイペースで動いていますけど、今後の活動に関してはどのようなことを考えていますか?

今、非常に多くの曲を作っています。だいぶ先までの準備は万全です。今後も良いぺースで新しい作品を出し続けます。

ギターを弾いたり、全部自分で作ることもやっているみたいですね。

はい。自分にはないエッセンスが得られるので、プロデューサーからトラックを提供してもらうのも好きなんですけどね。セレクトショップで服を買う感覚に似ています。でも、自分でギターとかを弾いて作ると、今のシーンにはまだない感じになるんですよ。そういうこともどんどんやっていったら新しいものになると思っています。

もともとご自身でいろいろ手がけていますよね?

そうですね。MVも映像の編集は自分でやっていますし、アートワークも自分で作っていますから。テイストが合うときは人に頼みますけどね。面白いので。総合的に自分でやるっていうのは、今後も続けていきたいです。

取材:田中 大

配信アルバム『I'm a Boy Skyra』2020年10月21日配信リリース
    • ※各ストリーミングサイトにて配信
Skyra プロフィール

スカイラ:島根在住のエモトラップアーティスト。2019年1月にデビューソング「In The Cloud」を配信リリースし、その3日後には生前Lil Peepも所属していたクルー、Gothboicliqueの人気アーティストLil Tracyのオープニングアクトに招かれ、NYにてデビューライヴを実施。20年8月にはGothboiclique所属の人気プロデューサーであるfish narcが全曲プロデュースを手掛けたEP『Lovexxxx』をリリース。続く10月に1stアルバム『I'm a Boy Skyra』を発表した。Skyra オフィシャルInstagram

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